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社員をリストラせずに レンタル移籍させる人材移動事業 |
written in 2009/2/16
決算書の資産項目には記載されていないが、もう一つ忘れてはいけない会社の資産に「人材」がある。人材=資産(人財)と言うべきかは賛否両方の意見があるが、昨今の状況を見ていると、不景気で過剰になった人材資産を清算したいと考えている企業は多いことがわかる。企業にとって人材は重要な戦力であるため、できることなら手放したくはないが“人件費”という毎月の維持コストを払い続けることにも限界がある。そのため、退職金を割増して希望退職者を募ったり、再就職支援会社と契約して次の転職活動をサポートするなど、多少の費用を負担してでも人員を減らしたいという方向だ。
しかし、売上が下落したからといって簡単に人材を解雇してしまうと、再び景気が浮揚してきた時に人材不足となって商機を掴み損ねてしまう。そこで苦肉の策として、一人あたりの労働時間を少なくして、社員全体の雇用を維持する“ワークシェアリング”が注目されているが、これにも問題点はある。
《ワークシェアリングの仕組み》
社員一人あたりの労働時間を短縮しても、社員の頭数による福利厚生や保険料の負担は変わらないし、ワークシェアリングを続けていれば、給与額が押し並べて低くなり、全社員の生活(家計)が苦しくなってくるため、次第に社内の雰囲気やモチベーションが低下してくるのが欠点だ。早くも某自動車メーカーの工場では、「休止中のラインから幽霊が出る」といった噂話も飛び交いはじめている。
そこで社員との関係を無闇に切り捨てるのではなく、有効活用策を考えることがビジネステーマになるが、ヒントにしたいのが、プロサッカーチームで行なわれている「選手のレンタル移籍制度」である。これは現チームが選手との契約を保持したまま、他のチームへ期限付きで人材レンタルするもので、これを余剰人材の交換サービスとみることもできる。
プロサッカーの世界では、優秀な選手であるにも拘わらず、ちょうどポジションが空いていないために活躍できないというケースが少なくない。それではチームとしても高額な年俸を無駄に払っていることになるため、ちょうど戦力が不足している他チームへ期限付きで移籍させる。その目的は、若手選手に武者修行をさせて育てることの他に、他チームへ正式移籍させる前の“お試し期間”というケースもある。正式移籍には多額の移籍料が伴うため、レンタル期間中の活躍をみて契約の可否を判断するのだ。
レンタル移籍の条件については、現所属チーム、選手、移籍先チームの三者によって交渉されることになるが、ここでは金銭的なことよりも「選手に活躍の場を与える」という意図のほうが大きいようである。またチーム間では人材の移動を相互に行なうことによって、人材の有効活用や人件費の無駄を省けることも大きい。
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JNEWS LETTER 2009.2.16
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