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ギークな専門性をウリにした ビジネスマンの生き残り対策 |
written in 2009/1/19
日本には約6600万人の労働人口がいるが、その中で派遣労働者の数は 140万人で全体の約2%にあたる人達だ。ニュース番組では契約を打ち切られる派遣労働者を不況の被害者として象徴的に扱っているわりに、労働市場全体からみると、その実数はそれほど多くはない。それ以外でも、今後の仕事に不安を抱えている人は多いはずで、いわゆる“派遣切り”の問題だけを規制したところで問題は何も解決しないだろう。
国内労働者の内訳は、自営業と経営者(役員)を除いた“雇用者”の数が約5100万人。その中で正規社員は65%にあたる 3300万人で、残りの 35%(1700万人)が非正規社員として働いている。非正規社員の内訳では、パート・アルバイトが6割以上と最も高く、日本の産業は彼らの存在無しでは回らなくなっているといっても過言ではない。
《国内労働市場における非正社員化の推移》
また自分が正社員の立場だからといって安穏としているわけにもいかない。今回の不況で赤字に陥った会社に勤めるサラリーマン(正社員)が影響を受ける年収の減少額は平均で 約100万円と言われている。これは残業手当とボーナスがカットされることによるもので、製造業の現場では残業が一切“禁止”ということになっているし、他の業界でも次期のボーナスが減額されることは必至だろう。平均よりも高年収を得ている人であれば、200〜300万円の減額も覚悟しておくべきだ。
それでも雇用が維持されていれば良いほうで、40歳を超えた中高年のホワイトカラー職を中心として希望退職を“勧奨”する企業も増えている。正社員、非正社員という区別は関係なく、景気が下向きになれば人件費削減のために雇用の調整を行なうのは企業として当然のことで、労務コンサルタント会社の元には、合法で世間からの批判を受けない人員削減策を相談する人事担当者が日参しているような状況だ。
日本ではサラリーマン(正社員)の平均勤続年数は約13年というのが統計値だが、これは20代〜60代まで、社員すべての勤続年数から算定したもので、50歳以降でみると20年以上にわたり同じ会社に勤務しているのが一般的だ。ところがこれは欧米からみれば特異なことで、米国での勤続年数はわずか「4年」というのが平均値である。そのため米国では、不況時の企業が従業員のレイオフ(解雇)を行なうことで社会的に非難されることも少ない。
こうしてみると、まだ日本の労働市場は恵まれているほうだが、今後は国内の企業でも労使の関係が大きく変わっていくことが予測できる。労働組合への加入率をみても1974年(昭和49年)の55%をピークにして31年連続で減少を続けて、現在では18%にまで落ち込んでいる。そこからわかるのは、会社に雇用されていると言っても、自分のことを「労働者」と意識している人は次第に少なくなり、それよりも「個としてのビジネスマン」と捉える傾向が強くなっている。その一方で、できるだけ同じ会社に長く勤めたいと考える矛盾した面もあるのだが、これからは、自営業、正社員、非正社員という既存の枠を取り払った働き方が主流になっていくことになるだろう。そこで重要になるのは、自分が職業人として何をアピールして特徴付けていくのかという点だ。
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JNEWS LETTER 2009.1.19
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