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退職者とのシガラミが食い潰す
オールドエコノミーの台所事情
written in 2009/3/17

 十年ぶりに募集された日本人宇宙飛行士の候補者選定には全国から 963名の応募があり、約半年かけておこなわれた選抜審査を通して最終的に2名が決定した。その様子はNHKスペシャルでも放映されたが、合格者に限らず宇宙飛行士に応募してくる者はいずれも各分野の第一線で活躍しているエリート達である。しかし採用が決まった2名も、これで“宇宙飛行士になれた”のではなく、約2年の訓練期間を経て、ようやく日本人宇宙飛行士としての認定を受けることができる。

宇宙飛行士は他のどんな職業に就くよりも難しいといって過言ではないが、彼らの報酬条件は、月給が約36万円、それに年2回のボーナスという一般のサラリーマンとほとんど変わらない。身分としては、(独)宇宙航空研究開発機構(JAXA)の職員として採用されて、その給与規定に従うことになるのだ。ただし、宇宙飛行士として正式に認定されると、基本給の0.75倍に相当する「宇宙飛行士手当」が加算される。それでも任務の重さからみれば、年収は驚くほど安く、スペースシャトルや宇宙ステーションへの搭乗は、さしずめ“出張手当”が出る程度の扱いだ。

それなら「オレのほうが宇宙飛行士よりも高給取りだ」と自信を持つ人がいるかもしれないが、その考えは危険である。日本には宇宙飛行士よりも高給を稼ぐサラリーマンがゴロゴロいるが、はたして、その金額に見合う働きをしている人はどれ位いるのだろう。

大企業のオフィスでは、生え抜きの正社員と、中途採用の契約社員が肩を並べて働いている光景が普通だが、両者の間には年収で5百万円以上の差があることも珍しくない。役職や肩書きの違いはあっても、同じプロジェクトに従事する戦力としてみた場合に、それほどの実力差は感じられないケースはたくさんある。たまたま採用されるタイミングや経路が違っているだけで、処遇に大きな差が付けられたまま、それが逆転できる機会はほとんど用意されていない。

しかもその格差は定年退職をした後まで続いている。大企業に勤める大卒サラリーマンの生涯賃金は約3億円と言われているが、これにはウラがあって、本当の生涯賃金は4億円とも言われている。これは60歳の定年を迎えてから、完全に引退するまでの間に1億円近いお金を会社から受け取れる仕組みが整っているためだ。それは本人の実力とは直接関係なく、何十年か前に決められた労働規約として約束されている。

これは“オールドエコノミー”と呼ばれる20世紀型の企業で顕著にみられる傾向で、年功序列、勤続年数によって給料は次第に高くなり、与えられる福利厚生も魅力的な内容になっている。それは古参の従業員にとって「とてもいい会社」なのだが、世間や株主からは「人件費が高くてダメな会社」という矛盾がある。国民の立場で公務員の高給を非難しておきながら、結婚相手を探す女性達の間では「公務員の男性」が大人気であることと同じことだ。

日本には「寄らば大樹の陰」という諺があり、仕事の勤務先は正にその象徴といえるが、その悪しき体質が企業の業績や世界の経済を低迷させる要因として浮上してきている。その典型例といえるのが、米自動車業界、ビッグスリー(GM・フォード・クライスラー)の破綻である。それは対岸の火事ではなくて、ジリジリと日本のオールドエコノミーにも同じ兆候が忍び寄っている。
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この記事の核となる項目
 ●ビッグスリーはなぜ破綻に追い込まれたのか?
 ●少ない現役世代が支える三階建の年金社会
 ●退職者OBが企業経営に与える負の遺産とは
 ●国内大手企業における年金支払いの不足額
 ●現役世代に求められる先輩OBとの縁切りと老兵の去り方とは
 ●成功報酬型へ移行する新たな給与システムの構築
 ●従業員持ち株制度による退職者への報酬制度
 ●退職者OBとの縁切りが課題の労働市場
 ●年収格差の逆境から生まれる女性の知恵と新ライフスタイル
 ●苦しくても廃業できない経営者の事情と会社の資産価値
 ●SOHO自営業者としての寿命と老後の収入プラン構築の必要性


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