written in 2008/7/18
年金や福祉サービスの質を落とさないためには消費税率のアップが欠かせないという風潮になっていることは周知の通り。たしかに高齢者の数が増えていく中で、若い勤労者が支払う所得税だけで、高齢者の利用が主体の公共サービスの財源を賄うには無理がある。そうかといって消費税が今よりも何倍も高くなれば、買い物に対する意欲が減退して、景気が冷え込むことは間違いない。1997年に消費税が3%から5%に引き上げられた際には、1970年代のオイルショックに次いで戦後二番目の経済不況を我々は経験している。
それでは、今後の財源を安定確保するためにもっと良い方法はないだろうか?と考えた時に、一つだけ名案がある。それは相続税の改革に着手することだ。高齢者が長生きしてもらうための生活を保障することの対価として、亡くなった後の遺産から相続税を徴収するという発想は筋が通っているものであるし、それによってタバコ屋や酒屋の零細小売店が売上減少の影響を被ることもない。そこで調べてみると、意外にも国税収入の中で相続税が占めている割合は約3%しかない。
《国税収入の内訳》
●日本の国税収入(年間で約52兆円) ───────────────────────
・所得税……………………162,790億円(31.3%)
・法人税……………………167,110億円(32.1%)
○相続税…………………… 15,500億円( 3.0%)─→他の税より
・消費税……………………106,710億円(20.5%) 景気への影響が
・酒税……………………… 15,320億円( 2.9%) 少ない
・たばこ税………………… 8,940億円( 1.7%)
・揮発油税(ガソリン)… 20,860億円( 4.0%)
・自動車重量税…………… 7,150億円( 1.4%)
・その他の税収入……………………… ( 3.1%)
───────────────────────
※出所:財務省(平成20年度)
年間に100万人以上が亡くなっているにも関わらず、税収入に対して相続税の割合が低いのは、相続財産に対する基礎控除というものがあって、死亡者が所有していたすべての資産に丸ごと課税されるわけではないためだ。具体的に控除(免除)される額は、遺産を引き継ぐ法定相続人の数によっても違うのだが、一般家庭の平均的な相続額(3千万円台)ならば、1円すらも相続税を払わなくて済む。国税庁の統計でも、老親が亡くなって遺産が発生した世帯の中で、相続税の申告をしているのは約4%に過ぎない。逆にみれば、この4%が本当の資産家といえる人達だ。
○国内の死亡者数(年間)………………………………108万人
○その中で相続税対象者の割合(資産家層)…………4.5万人(4.2%)
│
↓
(遺産の課税額による内訳)
─────────────────
・1億円以下…………… 9,454人
・1億円超………………21,351人
・2億円超……………… 6,775人
・3億円超……………… 4,408人
・5億円超……………… 1,476人
・7億円超……………… 885人
・10億円超……………… 623人
・20億円超……………… 152人
・30億円超……………… 35人
・50億円超……………… 18人
─────────────────
┌───────────┐
│ 相続資産の内訳 │
│───────────┤
│土地…………… 47.8%│
│家屋…………… 5.0%│
│有価証券……… 15.8%│
│現金・貯金…… 20.6%│
│その他………… 10.8%│
└───────────┘
課税対象の遺産総額…10兆3710万円
※出所:相続税の申告事績(平成18年分)国税庁
この内容をみて、日本では“大金持ち”に該当する人が意外と少ないと思うかもしれない。たしかに個人が保有する金融資産だけでも1400兆円と言われる中で、遺産の総額が10兆円程度というのは少ない。しかしここに表れている数字は、故人が最終的に“使い残した資産”であって、生前には様々な税金対策がされている。それに基礎控除の範囲内で申告する必要がない95%の故人が保有していた分も含めると、水面下では年間で100兆円前後の遺産が何らかの形で動いているのではないかと推測されて、これからの十数年では1千兆円規模の遺産マネーが発生することになる。
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JNEWS LETTER 2008.7.18
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