会社に所属せずに、職人として一人で自営する人達のことを「一人親方」と呼ぶ。トラック運転手にも一人親方は多いが、彼らの中では月収100万円を越す人も珍しくない。彼らの収益構造がどうなっているのかを紐解くことで、一人親方の実態がみえてくる。 (JNEWSについて
一人親方として自立するトラック運転手の起業スタイル

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 幹線道路を走っていると派手な飾り付けをしたトラックをよく目にするが、彼らの多くは自営業者であり、一人親方運転手とも言われる。運送会社に雇われているトラックドライバーの中では、いつかは自分のトラックを持って独立することが憧れとなっている。

トラック業界では古くから“車両持ち込み”で働ける仕組みが成り立っていて、裸一貫から大きな運送会社を築いた経営者の中には、自分が一人親方としてトラックを一台購入して開業し、徐々にトラックの台数を増やしていったという経歴の人が少なくない。「一人親方」というのは従業員を雇わずに自分一人で仕事を請け負う自営業者のことを指していている。彼らは勤務先の会社で仕事を覚えた後に、自分のトラックを持つ一人親方として独立するケースが多い。これも立派な起業のスタイルといえる。

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【月収100万円を稼ぐトラック運転手の実態】

 建設現場などで土砂を運ぶ大型ダンプカーの運転は専門的な技量を要するプロの仕事だ。全国を走っているダンプカーの9割以上は“一人親方”による自営業者によるもので、彼らは元請け会社からの業務委託によって1日あたり3万円~5万円の日当条件により、車両持ち込みによる仕事をしている。そのため一ヶ月の収入は100万円を超えることも珍しくない。

ただしダンプ運転手の仕事を始めるためには、運転免許や技術の習得の他にも、ダンプカーを購入するという設備投資が必要になる。最大積載量が10トンあるダンプカーの新車価格は1千万円以上するため、ほとんどが既に数十万キロを走行した中古車を購入しての開業だが、それでも購入資金として5百万円程度はかかる。そして購入後の経費がいくらかかるかといえば、ダンプの燃費は軽油1リットルあたり1~2キロというのが平均値であるため、一ヶ月の走行距離が約3千キロであれば毎月15~20万円の燃料代がかかる。また車検は1年毎に行わなければならず、車検費用は30万~50万円と、諸々の経費も何かにつけて高い。

そのため、安定した仕事があって月収100万円の水準を維持していれば赤字になることはないが、次のダンプに乗り換える際の資金を貯めるところまでは、なかなか難しいと言われている。しかもダンプの需要には季節変動があるために、毎月安定した収入が得られるというわけではない。その辺りにダンプ運転手が一人親方から飛躍していけない理由が存在している。

【手堅く稼ぐ2tトラックの世界 】

 「大きなトラックほど儲かる」と考えがちだが、ダンプ運転手のように大きな車を所有するほど月々の経費も高額になるため、最終的に手元に残る利益は少なくなってしまう。その点を踏まえると、報酬はできるだけ高くて、経費がかからないサイズの車でできる仕事や業界分野を選ぶことが、自営のトラック運転手には求められる。

その中で意外と手堅く稼いでいるのが2トントラックの分野だ。なぜ2トンかというと車両の購入費用や経費を安く抑えることができて、このサイズのトラックを求めている荷主を探しやすいためだ。また、最大積載量が5トン以下のトラックならば普通免許で運転することができるために、じつはマイカーしか運転したことがない人でも、運転手としての仕事を始めることができる。2トンのトラックであれば普通乗用車とほぼ同じ価格帯で購入することができる。ここは意外と気付かれていない起業の盲点だ。

求人誌では「トラック運転手募集」という広告をよく見かけるが、2トン車の運転ならばそれほどの経験は必要ないために、他のアルバイトと同じ日給8千円程度が相場だ。しかし「トラック持ち込みによる運転手」ということになると、報酬条件はそれよりも高く、月50万円の収入になることもある。トラックで荷物の配送を行う会社側としては、運転手が自前のトラックを持ち込んでくれれば、車両購入にかかる費用や経費を会社が負担する必要がないために利点が大きいのだ。

《トラック配送にかかる経費の内訳》

【トラック運送の白ナンバーと緑ナンバー】

 トラック運転手が独立して自営業をスタートさせるにあたり、本来であれば事業用の「緑ナンバー」を取得しなくてはならないが、そのためには運送車両を5台以上所有していなくてはいけないという条件がある。しかし、一人親方の場合にはトラックが一台しかないために緑ナンバーの取得が難しく、ほとんどが自家用の「白ナンバー」で仕事をしている。タクシー業界ならば、白ナンバーによる営業は“白タク”として違法行為になるが、トラック運送の場合には「白ナンバーによる運送=すべてが違法」という解釈はされていない。そこにはトラック業界独特のグレーゾンが存在している。

宅配業者や引越業者のように顧客から運送料金をもらって荷物を配送するためには貨物自動車運送業車としての許可を得て緑ナンバーを付ける必要がある。ところが、有料による配送業務を行わないケース、例えば、電器屋が購入者宅まで無料で荷物を配送するようなケースでは“自家用”とみなされて白ナンバーのトラックでも問題がない。ただし配送作業が専業ではない電器屋が自社でトラックを購入して運転手を雇うことは無駄が大きいために、一人親方のトラック運転手として契約して配送業務を請け負ってもらっているケースがよくある。

しかし一人親方にしてみれば、電器屋から有料で荷物配送を引き受けることになるため、厳格にいえば緑ナンバーの取得が必要になる。そこで電器屋と一人親方との関係は「トラック持ち込みの契約社員」のような形にして、運送料に相当する労働賃金を支払うといった取り決めにしている。そのため、白ナンバーのトラック運転手は、契約した取引先の荷物しか運ぶことができない。

取引先からの仕事量(配送量)が増えてくると、一人親方はもう一台トラックを購入して仲間の運転手を雇うようにする。そのようにしてトラックを5台まで増やすことができれば、晴れて緑ナンバーを取得した運送業者としての道を歩むことができるようになる。

《白ナンバーによるトラック運送の仕組み》

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JNEWS会員レポートの主な項目
・月収100万円を稼ぐトラック運転手の実態
・意外と手堅く稼ぐ2トントラックの世界
・トラック配送にかかる経費の内訳について
・トラック運送における白ナンバーと緑ナンバーの違い
・白ナンバーによるトラック運送の仕組み
・資格取得ブームの裏で下落する資格の価値と崩れる資格商法
・サラリーマン時代とは異なる商売人の利益感覚を身につける視点

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JNEWS LETTER 2006.6.5
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