開業資金500万円以内で実現可能な在宅起業テーマ集
サラリーマンを辞めて起業する人が準備できる開業資金には大きな個人差があるが、全体の平均値でみれば約1600万円という水準にある。これだけの金額をすべて自己資金ということは難しく、身内や金融機関からの借入れによる調達も必要になってくる。「独立開業には多額の資金がかかる」という常識は古い時代から根付いているものである。
しかし“平均値”をさらに詳しく見てみると、近年では「開業に大きな資金をかけている人」と「少ない資金で開業している人」とに二極分化している傾向が顕著に表れている。
国民生活金融公庫が取りまとめた2004年度の新規開業実態調査によれば、開業資金の合計額を開業者数で単純に平均化した値は 1,618万円となっているものの、小額資金~高額資金までの開業者を順番に並べた中での真ん中(中央値)でみると、約 780万円が一般的な開業資金の水準として導かれている。しかも 500万円未満での開業者が全体の約3割を占めるまでに拡大してきている。
500万円未満の小額開業者が増えている要因としては、やはりITの普及によって店舗や設備を持たなくても事業を起こすことが可能になっている点が挙げられる。情報通信業に絞ってみれば、500万円未満の開業者は約半数を超える。その一方、小売業や飲食店など店舗を必要とする業態の開業資金は1千万~2千万円になる。店舗が大きくなれば、その中の什器や設備、在庫のコストも重くなる上に、従業員もたくさん雇わなくてはならないため、開業に毎月必要な経費も嵩む。
小額の開業資金による独立起業を成功させる上では、「店舗」「設備」「在庫」にかかる負担を極力抑えるための工夫と努力が必要。それを実現させるための優等生としてITビジネスが注目されていることは周知の通りだが、情報通信のみに特化したビジネスは、技術の動向によって業況が大きな影響を受けたり、ビジネスのライフサイクルが短いという欠点がある。自分の起業人生をわずか数年で終わらせないためには、ネットの力を活用しながらも、リアルな強みを持ったビジネスを起業テーマとして考えていくことが大切だ。
【老人ホームに入居したくない高齢者向けの生活支援サービス】
日本に限らず米国でも高齢者に対するケアサービスは今後の成長が確実視されている分野である。その中では医療介護サービスが大きな市場を占めているが、資格や設備に対する条件が厳しいことから起業テーマとしては敷居が高い。そこで医療の範疇には入らない高齢者向けの生活支援サービスが身近なスモールビジネスとしては人気だ。
「Visiting Angels」の創業者であるJeffrey Johnson氏は、ソーシャルワーカーとして老人ホームで働いていた時に耳にした家族の不満(本当は老人ホームに入れたくなかったが適切なサービスがなかった)をきっかけに、高齢者の自宅生活を支援するサービスを始めた。特別な介護を必要としないで自立して生活するシニアを対象にしている。サービスの利用料金は年間2万ドル(約 210万円)だが、これは老人ホームでの入居生活をした場合にかかる費用を1/2~1/3程度に抑えた設定である。
具体的なサービス内容は、自宅で生活している高齢者を訪問して、衛生支援、食事の準備、簡単な家事、使い走り、買い物、話し相手などを含んだ生活支援サービスを提供する。契約先の高齢者からの予約スケジュールに応じて訪問する仕組みだ。人口20~30万人のエリアを一つの商圏として契約者を獲得すれば、そのエリア内で安定した訪問型サービスを展開することができる。
この種のサービスは日本で言う“便利屋”的なものだが、従来の便利屋は単発で仕事を請けることが基本であるために効率が悪く、毎月の売上にも大きな波がある。しかし「老人ホームに入居したくない高齢者」を対象に年間契約を結ぶことにより(年間契約料×契約者数)によって安定した売上を維持することができるようになる。サービスの形態は訪問出張型となるため、店舗や設備に多額の経費をかける必要もない。
【クリスマス電飾を専門に行なう電気工事業者】
店舗を持つ必要のない出張訪問型のサービスとしては、住宅の簡単な補修に関しても人気が高いが、単純な補修サービスでは既に業者が乱立状態にある。日本でも「水回りのトラブルを24時間対応で出張修理します」というサービス業者が増えているが、修理単価が安ければ忙しいわりに儲からないという。そこで他社にはない付加価値の高いサービスを生み出すことがスモールビジネスにおいても重要になる。
そのヒントとして、米国では商業施設や住宅の電飾を専門に施工する業者が人気を集めている。近頃では、クリスマスシーズンになると鮮やかなイルミネーションによってライトアップされた住宅をよく見かけるが、この電飾施工を専門に行うビジネスを米国で展開するのが Christmas Decor社である。
クリスマスシーズンに住宅や商業施設の屋根や外壁、窓、庭などに凝ったデザインの電飾を施す。デザインから飾りつけ、後片付けまですべて行う。個人住宅向けは、自分で飾りつけができない高齢者やシングルマザー、時間のない多忙なビジネスマンなどを対象としている。サービスの利用料は200~6000ドルとしている。なお、米国の一般家庭がクリスマス電飾にかける費用は平均1300ドル(約14万円)といわれている。クリスマスシーズン以外では、主に商業施設の電飾工事をしているが、「クリスマス電飾の専門業者」という特徴を磨くことで、料金よりもデザインセンスが重視される歩留まりのよい仕事が数多く受注できる効果がある。
【子供の才能を発掘する新たな教育ビジネス】
子供を対象とした教育事業は比較的小額の資金で開業できるビジネスとして以前から人気がある分野だ。その中で最も大きな市場として、学習塾・予備校があるが、現在では少子化の影響もあって「成績を伸ばすこと」だけを目的にした塾経営は曲がり角に差し掛かっている。その一方で、主に12歳以下の子供を対象に隠れた才能や興味を引き出すことを目的とした教育サービスが市場を拡大している。
米国では「The Mad Science Group」という科学のユニークな課外授業プログラムを行なう企業がフランチャイズ化して、アジア圏にも広がりを見せている。子供の頃からちょっと変わった科学実験をするのが楽しみだったArielとRonの兄弟が、とある誕生会で科学実験を余興として行ったのがビジネスの始まりだった。
現在は保育園や小学校からの委託を受け、課外授業としてエンターテイメント性に富んだ科学実験のイベントを開催している。現在、北米では約1万3千の公立私立小学校において年15万回のイベントを実施している。また、学校の課外授業の他にも、キャンプやお誕生日会などへも依頼があれば出張して実験イベントを行なう。
日本でも理科の実験にマジック的な要素を取り入れた授業(イベント)が人気となりつつあるが、それを既に米国で事業として確立し、フランチャイズ展開しているのが The Mad Science Group社の存在である。マジック(手品)は単なる見せ物に過ぎないが、科学の実験をマジックのようにして見せるイベントは、子供の科学に対する関心を強く引き出せることから、主に教育団体からの引き合いが多い。
同社ではユニークで見応えのある科学実験方法や、それに必要な実験機材を開発し、FC加盟している個人事業者に対して提供する形でビジネスを展開している。FC加盟者は約4万ドル(420万円)の開業資金で、実験をおこなうための技術トレーニングと実験機材の提供を受けて、依頼先のイベント会場や学校の教室で実演をする。実験に必要な人員は最低3名程度~で、車で1~2時間程度で行けるエリアの幼稚園や小学校が、一つの商圏テリトリーとなる。
一方、絵を描くことで子供の才能を伸ばそうとするプログラムを提供するのが「Young Rembrandts」というFCチェーンである。創設者のBette Fetter氏は、幼児向けの絵画教室が身近に存在していないと友人が話していた不満を、自らのビジネスとして結実させた。同社では、就学前児童を対象に“お絵かき(描画)”を重点としたレッスンを行なう。これは芸術家養成に主眼を置いたものではなく、レッスンを通じて子供の能力(脳力)を高めることが目的である。
米国では小学校から音楽や芸術などの科目がなくなっている(予算削減が主な理由)ことで、こうした芸術分野の教育サービスを展開できる余地が生まれているようだ。
■Young Rembrandts Franchise Inc.
今回紹介した事例は、それぞれ異なる業界分野の事業だが、「店舗を持たない出張訪問型のビジネス」という点で共通している。顧客を呼び寄せる商売では、それなりに見栄えの良い店やオフィスを構える必要があるが、自分から出掛けていくタイプの商売ならば、自宅やアパートの一室を“仕事場”とすることで十分に足りてしまう。それだけで5百万~1千万円の開業資金は浮かすことができる。
出張ビジネスの欠点は、自分一人で行動できる範囲と時間の制約によって売上高にも限界値があることだが、米国でユニークなHomebased Businessを成功させた個人事業者達は、その事業をフランチャイズ化してノウハウを提供する加盟店網を増やすことでビジネスを拡大させている。
(この内容はJNEWS会員レポートの一部です。正式会員の登録をすることで詳細レポートにアクセスすることができます → 記事一覧 / JNEWSについて)
■この記事の完全レポート
・JNEWS LETTER 2005.2.15
※アクセスには正式登録後のID、PASSWORDが必要です。
※JNEWS会員のPASSWORD確認はこちらへ
これは正式会員向けJNEWS LETTER(2005年2月)に掲載された記事の一部です。 JNEWSでは、電子メールを媒体としたニューズレター(JNEWS LETTER)での有料による情報提供をメインの活動としています。 JNEWSが発信する情報を深く知りたい人のために2週間の無料お試し登録を用意していますので下のフォームからお申し込みください。