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企業が資金難に陥った後の 会社再建の方法とそれぞれの特徴
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written in 2001.1.19
企業にとっての血液は「資金」であることは間違いない。潤沢な資金が調達できれば企業は新しい事業を展開することもできるし、優秀な社員をたくさん雇用することもできる。しかし、一度、資金難に陥れば企業の血の巡りが悪くなって経営が立ちゆかなくなってしまう。米国では株式市場の悪化により資金調達が困難になったネット関連企業が後を絶たない。
これは日本のネット関連企業にとっても対岸の火事ではない。米国以上に収益を上げられないで苦しんでいるネット企業は多いだけに、年内には資金調達ができずに倒れる、または廃業する企業も多数現れそうな気配がある。
企業経営者であれば、誰もが資金難に陥ったあとの対策を事前に考えておかなければならない。「資金ショート=即倒産」ということではなく、最適な方法を選べば傷が浅い段階で会社を再建できることも少なくない。
会社再建の具体的な方法
ひとことで「会社再建」といっても下記のような方法がある。資金繰りの悪化状況や所有する資産状況によって、どの方法を採用するのかは経営者の判断と債権者側の協力状況によって異なる。
<●会社の譲渡>
自主的な資金調達だけではどうしても経営が困難になった場合、まず考えられるのが会社を譲渡するという方法。具体的には「営業権の譲渡」「株式の譲渡」という2種類の方法がある。引き受ける側が、会社の所有権までは必要としないが、同社が持つ商品・サービスの看板が欲しい場合には前者、会社の所有権までを必要とする場合には後者という位置づけになる。
特にインターネット業界では、将来の株式公開に向けた事業展開を目指していることが多いために、後者の株式を譲渡・取得する形で再建支援策をするというのが一般的だ。再建を目指す企業と、それを支援する企業との間の株式譲渡では同じ市場内の競合同士でシェア争いをしていたり、同分野への新規参入を目指している企業が株式譲渡による再建支援に名乗りを上げるケースが多い。
<●会社の清算>
会社が保有するすべての資産を換金して負債の支払いにあてるのが「会社の清算」である。しかし余程の資産(主に土地)を保有する企業でない限りは、換金して返済にあてられる資金を作り出すことは難しい。また、融資によって資金調達した際に担保設定された資産については、優先的に担保債務に充当されるために他の債権者に分配される額は極めて少なくなるのが一般的だ。
<●法的な会社再建>
自主的に会社を再建することが難しい場合には、法的な手続きにより裁判所の監督のもとに会社再建を図ることになる。その方法には、「商法による会社整理」「会社更生法による会社更正手続き」「和議法による和議手続き」の3パターンがある。
《会社整理》
資金繰りが悪化して債権者に対する支払いが不可能になった場合、裁判所に対して整理開始の申し立てをおこなう。申し立てと同時に保全処分の申請をお こなうことで、債権者からの強制的な取り立てを回避することができる。
会社整理では、現在の経営者がそのまま経営に携われるが、抱えている負債の切り捨てや棚上げ、弁済方法の取り決めについては、債権者全員の同意が必 要になる。債権者の数と負債額が大きな場合には、全員の同意を取ることが難 しいために不向きだが、取引件数も少なく債権者が再建に対して協力的な場合 にはこの方法が適している。
《和議手続き》
和議申請後は裁判所の監督下で再建がおこなわれるが、現経営者がそのまま経営を継続することができる。経営者側では債務処理の方法に関しての“和議 条件”を作成して裁判所に提示する。その内容が債権額の4分の3以上の同意 によって可決されれば、再建案が決定することになる。
《会社更正手続き》
上記2つの法的再建が現経営者の手に任せられるのに対して、更正手続きでは裁判所が管財人を選任、この管財人が資産の管理と処分の責任を持ち、更正 計画も作成する。これによって現経営者がその後も経営に関わることはほとん どなく、発行された株式の 90〜100%の減資もおこなわれて株主としての権利もほとんどなくなる。
更正計画によって提示される債権の切り捨てや棚上げは、債権者の3分の2以上の多数決によって可決されるために一部の反対者が出たとしても再建を進 めることができる。また、更正手続きの開始後は債権者側の債権回収を法的に 停止させることもでき、法的再建の方法としては最も強力なものである。大企業や上場企業が倒産した場合には、大半がこの「更正手続き」によって管理さ れる。
<会社の整理方法>
[経営の行き詰まり]
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↓ ↓ ↓ ↓
[会社の清算] [会社の譲渡] [私的再建] [法的再建]
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↓ ↓
・営業権の譲渡 ・会社整理による再建
・株式の譲渡 ・和議による再建
・会社更正による再建
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これは正式会員向けJNEWS LETTER 2001年1月19日号に掲載された記事のサンプルです。 JNEWSでは、電子メールを媒体としたニューズレター(JNEWS LETTER)での有料(個人:月額500円、法人:月額1名300円)による情報提供をメインの活動としています。JNEWSが発信する情報を深く知りたい人のために2週間の無料お試し登録を用意していますので下のフォームからお申し込みください。
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