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価格弾力性の低下現象が招く 値引き合戦の形骸化
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written in 2000.6.6
固定客に対する販促活動として特売セールを実施することは定番戦略だが、実際にどれだけの幅で値下げ販売するのかの決断は難しい。大幅な値引きをすれば確実に顧客数や販売数量が伸びて売上に貢献するのならわかりやすいが、実際にはそう簡単ではない。
値引き政策が成功するか否かは、その商品が持つ「価格弾力性」によって決まると言われている。価格弾力性とは販売価格を上げたり下げたりすることによって、売上がどれだけ増減するのかを示す指標であり、商品によってそれぞれの性質は下記のように異なる。
◎価格変動率以上に売上上昇率が高い商品 ---------->(弾力性が高い)
◎価格変動率よりも売上上昇率が低い商品 ---------->(弾力性が低い)
◎価格変動率と同じ水準で売上が上昇する商品 ------>(弾力性が均衡)
人気商品であるか否かによっても弾力性は大きく異なるし、同じ商品でも、そのライフサイクルが成長期にあるのか、衰退期にあるのかでも弾力性は変化していく。そのため商売人達は、自分の販売アイテムの中で価格弾力性が高い商品と、その傾向を常時把握しておく必要がある。
例えば、仕入原価 5,000円の商品を10,000円で通常販売しているケースで考えてみよう。通常、この商品が1週間で 100個売れるのなら、その間の粗利益額は(5,000円×100個=50万円)ということになる。これと同水準の粗利益額を値引き実施後に達成する場合には、下記の販売数をクリアーしなければならない。
●通常価格1万円の商品を10%割引 -----> 特売価格9,000円
・均衡値=粗利益額50万円÷(9,000円−原価 5,000円) --------> 125個
●通常価格1万円の商品を20%割引 -----> 特売価格8,000円
・均衡値=粗利益額50万円÷(8,000円−原価 5,000円) --------> 167個
●通常価格1万円の商品を30%割引 -----> 特売価格7,000円
・均衡値=粗利益額50万円÷(7,000円−原価 5,000円) --------> 250個
●通常価格1万円の商品を40%割引 -----> 特売価格6,000円
・均衡値=粗利益額50万円÷(6,000円−原価 5,000円) --------> 500個
実際には、値引きによって販売個数を伸ばすために、かなりインパクトのある値引き率を設定する必要がある。30%割引によって通常の3倍を売ることができなければ特売による効果はないと考えておきたい。
ところが多くの店舗で販売されているナショナルブランド品に関しては特売セールの効果が年々低下している。ディスカウントショップや激安店の台頭により消費者側が「安いこと」だけでは反応しにくくなっている状況。価格だけで店を選ぶなら、一時的な特売セール時にのみ価格が安い店ではなく、常に安い「エブリデーロープライス型店舗」を消費者が支持する傾向は顕著だ。
小売店舗では競合店の進出に対抗するため、ネガティブな値引き戦略をとることも少なくないが、その場合には値引き後にも売上高がジリジリと低下していき、更に経営を悪化させてしまうことになる。「値引きをすれば客が集まる」とい従来の考え方は捨て、他店にはない魅力を独自に生み出すことが小売店の生き残り戦略としては急務といえるだろう。
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これは正式会員向けJNEWS LETTER 2000年6月6日号に掲載された記事のサンプルです。 JNEWSでは、電子メールを媒体としたニューズレター(JNEWS LETTER)での有料(個人:月額500円、法人:月額1名300円)による情報提供をメインの活動としています。JNEWSが発信する情報を深く知りたい人のために2週間の無料お試し登録を用意していますので下のフォームからお申し込みください。
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