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社会保険料から考える
正社員人件費の重さと経営に与える影響
written in 2000.3.18

 企業を経営していく中で最も重い負担となる経費は「人件費」である。ネット系ベンチャー企業では成長スピードを重視するために、かなり早いペースで従業員を増員していくことも珍しくない。しかし増員のペースに売上伸び率が追いつかなければ、人件費負担は次第に重くなる。特に、正社員として雇い入れる場合には、社員に支払う給与の他に様々な経費がかかるために、人件費として年間支払い賃金予算の他にかなりの余裕をみておく必要がある。

 正社員を雇用するにあたって必要なコストには月々の給与や夏冬のボーナスの他に、各種社会保険料が加わるが、実はこの負担がかなり大きい。新しく企業を興す起業家は社会保険料の仕組みを十分に理解した上で、社員採用計画と人件費予算を組んでいかなければ、すぐに資金繰りがショートしてしまうこともある。


社会保険の種類と料率

 会社が正社員を雇う際には各種社会保険に加入しなければならない。社会保険には「労災保険」「雇用保険」「健康保険」「厚生年金保険」の4種類があり、各保険料を事業者側と社員(労働者)側とで決められた割合によって負担することになっている。その保険料率は下記の通りだ。

●労災保険料 ・賃金総額に対して 6/1000
 (事業者全額負担)
●雇用保険 ・賃金総額に対して 11.5/1000
 (事業者側 7.5/1000、社員側 4/1000)
●健康保険料 ・月額給与に対して 85/1000
・賞与額に対して 8/1000
 (事業者側 5/1000、社員側 3/1000)
●厚生年金保険料 ・月額給与に対して 173.5/1000
 (事業者側と社員側で折半)
・賞与額に対して 10/1000
 (事業者側と社員側で折半)

 例えば、月給25万円、ボーナス(夏冬)各50万円、合計年収 400万円の条件で正社員を一人雇う場合に企業側が負担する保険料の年間総額を試算してみると
451,750円ということになる。つまり一人の正社員に対して合計4,451,750円のコストがかかることになる。

※各保険料率は従事する仕事の内容によっても異なる。


正社員対アルバイトのコスト比較

 特別な能力やスキルを必要としない仕事なら、正社員をアルバイトスタッフに置き換えることで数値上は大幅なコスト削減効果を生み出すこともできる。

 パートタイマーやアルバイトスタッフであっても、1日または1週間の所定労働時間及び1ヶ月の所定労働時間・日数がおおむね4分の3以上である場合には社会保険に加入することになっている。しかし裏を返せば、この条件未満の勤務体系であれば、労災保険を除いて社会保険加入の義務はない。

 そこで、時給1,000円で1日6時間、月 10回勤務してくれるアルバイトを5名採用した場合の年間コストを試算すると下記のようになる。

●アルバイト5名の年間雇用コスト

 ・時給1,000円×60時間(月合計)×12ヶ月×5名 ------> 3,600,000円
 ・労災保険=3,600,000円×(6/1000) ---------------->  21,600円
  ────────────────────────────────
          年間雇用コスト -------------------> 3,621,600円

 正社員1名雇用する上記年間コストよりもアルバイト5名分の年間コストの方が安いことになる。正社員1名の能力やスキルがアルバイト5名分よりも上回るか下回るかは、具体的な仕事の内容や個人差によって異なるために判断は難しいが、正社員の雇用コストが如何に高いものであるかは理解することができるはずだ。

 企業が成長していくために社内スタッフ拡充は避けては通れない大切な課題だが、複数の選択肢の中から職種や能力に応じた雇用スタイルを見つけて、会社側のリスクや負担を軽減していくことも重要な経営ノウハウとなるはずだ。


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これは正式会員向けJNEWS LETTER 2000年3月18日号に掲載された記事のサンプルです。 JNEWSでは、電子メールを媒体としたニューズレター(JNEWS LETTER)での有料(個人:月額500円、法人:月額1名300円)による情報提供をメインの活動としています。JNEWSが発信する情報を深く知りたい人のために2週間の無料お試し登録を用意していますので下のフォームからお申し込みください。
 
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