投下資本利益率(ROI)を活用した資金回収期間の求め方
JNEWS会員配信日 1999/11/13
記事加筆 2019/7/31
商売を始めるには当然ながら資金が必要となる。実店舗型のビジネスなら小規模でも数千万円規模の資金が必要となるために、全額を自己資金で賄える人は少なく、金融機関からの援助を仰ぐことになる。その際には必ず事業計画書を提出することになるが、その中で融資担当者側が注意して見ているのが「開業資金を何年で回収する計画なのか」という部分である。
大方の新規開業者は漠然とした見通しで「5年で回収できれば」「10年で回収する予定」といった回収予測期間を計画書内で設定している。確かに、事業を進める中で得た利益分から開業時に投下した資金は回収していくことになるため「実際にどれだけ儲かるのか」によって回収期間は異なる。
しかし実際には各業界毎に投下資金を回収するための平均値が存在している。金融機関ではこの平均値と各事業計画書の数値とを比較して矛盾点の有無を確認する。双方の数値に大きな差があるようなら「事業計画が甘い」ということになってしまうのだ。
この「投下資金を回収するための期間」を算出するために利用されている指標が「投下資本利益率(ROI)」と言われるものである。本来のROI(Return On Investment)は投資家が各企業に資金を投資する際に活用される指標だが、中小企業の経営診断や、新規独立開業時の資金計画を立てる際にも利用されている。
厳密なROIの算出には複雑な公式が用意されているが、短時間で簡単にROIを計算したい場合には下記の公式が利用されることが多い。
例えば、開業資金2000万円で飲食店を始める場合、1年間の売上高から仕入原価、人件費、家賃等の諸経費をすべて差し引いた純益(経常利益)が 300万円であったなら、ROIは15%ということになる。
これは「投下資金額の15%を1年間で回収できる」ことを示しているために、投下資金を全額回収するには6.6年かかることがわかる(1÷0.15=6.6年)。この回収期間を各業界の平均値より大きく上回るためには、それなりの理由や戦略の説明が事業計画書内で必要になるわけだ。
ROIの数値は大企業なのか零細企業なのかによっても大きく異なるため、同じ業界でも、上場企業のROIを基準にして新規独立者が資金計画を立てても正確な数値は得られない。そのため、ROIから資金回収期間の目標値を設定するには、同じ規模の同業店の指標を参考にするしかない。これらの情報を入手するのはなかなか難しいが、税理士なら多くの財務諸表を扱っているために身近な関連業界のデータを提供してもらえることがある。
なお、実際の繁盛店になると業界平均値に対して約 1.5倍のペースで資金回収をして、次の新規出店を進めている。もちろん、その背景には低コストで店舗を取得したり、人件費を抑えるための経営努力が隠されている。
(この内容はJNEWS会員レポートの一部です。正式会員の登録をすることで詳細レポートにアクセスすることができます → 記事一覧 / JNEWSについて)
■この記事の完全レポート
・JNEWS LETTER 1999.11.13
※アクセスには正式登録後のID、PASSWORDが必要です。
※JNEWS会員のPASSWORD確認はこちらへ
■この記事に関連したJNEWS会員向けバックナンバー
・実店舗型ビジネスにおける開業資金の考え方
※バックナンバー用ID、PASSWORDを入力してご覧ください。
これは正式会員向けJNEWS LETTER(【発行年月】)に掲載された記事の一部です。 JNEWSでは、電子メールを媒体としたニューズレター(JNEWS LETTER)での有料による情報提供をメインの活動としています。 JNEWSが発信する情報を深く知りたい人のために2週間の無料お試し登録を用意していますので下のフォームからお申し込みください。