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ABC分析を活用した 値上げ・値下げの賢い方法
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written in 1999.7.19
「顧客を集めたい」「話題性を高めたい」など小売店がプロモーション戦略を組みたい場合には価格設定を動かすのが最もわかりやすい。安い価格設定をして広告宣伝をかければ多くの消費者が反応を示してくるはずだ。
しかし店側としては下手な価格設定の変更は命取りにつながる。キャンペーンのために値下げすれば顧客は集まっても店全体の利益は落ち込んでしまう。一旦下げた価格設定を元に戻す時には顧客離れを引き起こすかもしれない。
そのため価格設定を変える場合には、各商品毎の売上傾向を分析して「値下げしてもよい商品」「値上げしてもよい商品」を明確に決定する必要がある。「全商品20%OFF」という画一的なやり方は季節毎の在庫一掃セール以外では賢い戦略とは言えない。
割引キャンペーンで重要なABC分析
大型チェーン店が展開する特売キャンペーンの内容をじっくり見てみると、しっかりと商品のABC分析がされていることがわかる。ABC分析とは各商品の売上状況をチェックしながらA、B、Cのグループに分類する分析手法。
<Aグループ=売れ筋商品>
◎全アイテム数に対して約20%の商品だが、全売上高の約60%はAグループの商品によって構成されている。(例)
<Bグループ=見せ筋商品>
◎売れ筋とまではいかない一般的な商品。AグループとBグループを合わせた商品群が全売上高の約95%を占めている。(例)
<Cグループ=死に筋商品>
◎全売上高に対して5%程度のシェアしかとれない不人気商品。(例)
例えば、パソコンショップの特売キャンペーンで「全ソフトウエア30%割引(ただし一部商品を除く)」という広告をよく見かけるが、この「一部商品」とはAグループの売れ筋商品を指していることが多い。
顧客としては、全商品の約8割が大幅値引きされていることから「この店は安い」と引き付けられるが、店側としては売上の6割以上を占める売れ筋商品は平常価格であるために、集客効果が得られるわりには値引きによるダメージが少ないのだ。
効果的な値上げの方法
ABC分析は値上げの際にも役立つ。商品の値上げは顧客側に大きな心理的ダメージを与えるために、値上げする商品は最小限に抑えることが商売の鉄則である。その場合にはAグループの中でも特に売れ筋商品に限定した値上げをおこなえば、値上げした商品数は少なくても利益的には大きな改善効果が得られることになる。値上げ商品のアイテム数が少なければ、顧客側は「仕方ないか」と納得してくれる傾向が強い。
逆に、売れ筋商品のみの価格を据え置き、B、Cグループの商品を値上げすることは顧客に良いイメージを与えない。全商品の約8割のアイテムが値上げされたとなれば顧客側の反発感はかなりのものだが、その割に利益改善効果は低い。
これは小売業に限らず飲食店のメニューやサービス業などで活用されている価格設定ノウハウである。現場の商売人達は「ABC分析」という言葉は知らなくても「商売の勘どころ」として実践している知識だ。特売チラシひとつ読んでみても、そこには奥深い商売のノウハウがたくさん盛り込まれていることに気付けば、しめたものだ。
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JNEWS LETTER 98.9.2
<商売道における初歩的数値分析の考え方>
JNEWS LETTER 98.10.14
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JNEWS LETTER 99.4.23
<効率的な商売をするための利益貢献度分析の進め方>
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これは正式会員向けJNEWS LETTER 1999年7月19日号に掲載された記事のサンプルです。 JNEWSでは、電子メールを媒体としたニューズレター(JNEWS LETTER)での有料(個人:月額500円、法人:月額1名300円)による情報提供をメインの活動としています。JNEWSが発信する情報を深く知りたい人のために2週間の無料お試し登録を用意していますので下のフォームからお申し込みください。
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