|
ライフサイクル理論による サイバービジネスの延命対策
|
written in 1999.2.12
マーケティング論を少しでも勉強したことのある人なら「製品ライフサイクル理論」を学んだことがあるはずだ。世の中に出回っているすべての製品・サービスには必ず寿命があり、一般的には5段階のステージを歩みながら商品寿命を全うしていくという法則。
このライフサイクル理論は一製品のみに適用されるのではなく、様々なビジネスに必ず付きまとう「寿命」を指示してくれる指標として有効だ。上手に活用すれば「自分(自社)が次に何をしなければならないか」が明確に見えてくる。
ライフサイクルの特徴
+ +
+ ++ ++
++ ++ +++
++ ++ +++
+ ++ ++ ++++
++ ++ ++ +++++
++ ++ ++ ++ ++++++
├─┼─┼─┼─┼─────
導 成 競 成 衰
入 長 争 熟 退
期 期 期 期 期
※ +は売上額の大きさを表す。
<導入期> ----->初期投資による赤字
製品が徐々に売れはじめるが、知名度の低さもあり売上は低水準。一方、広告宣伝費等のマーケティングコスト負担が大きいために採算的には赤字の状態。
<成長期> ----->利益率が高い(独占的利益)
良い製品であれば導入期の顧客から口コミで評判が伝わったり、マスコミで紹介されるなどして人気と売上が上昇しはじめる。また初期の宣伝広告の効果が現れるのもこの時期。この段階ではまだ類似商品が少ないために、比較的強気な価格設定でも売れる。そのため利益率はライフサイクルを通して最も高い。
<競争期> ----->利益率が下降軌道に入る
市場全体の需要は拡大し、売上額は伸びるが他社から類似商品が出るなどして価格競争が激化して利益率は低下し始める。この時点で中小企業は大企業との競争に勝つことができずに衰退していくことも珍しくない。
<成熟期> ----->ダンピングが始める
製品供給が消費者需要を追い抜き市場が飽和状態になる。この時期になるとディスカウントショップなどでの安売り商品として使われたり流通業者が同等のPB商品を販売しはじめるといった注意シグナルが表示される。その結果として乱売により売上額は伸びても利益率は低いためにあまり儲からない。
<衰退期> ----->儲からない
製品の飽和傾向や消費者側の生活習慣の変化により製品ライフサイクルは衰退期を迎える。この時期には売上低下傾向が顕著に現れ、誰もが衰退期であることを認めるが、この時点で次の新しい事業の柱となる製品やサービスの柱が育っていないと企業経営は傾く。
ライフサイクルのサイバービジネスへの応用
古くから理論化されているライフサイクルの法則は、変化の激しいサイバービジネスだからこそ応用が効く。ホームページの成長過程についても「導入→成長→競争→衰退」のプロセスは存在するが、自社のページが現在どの段階を歩んでいるのかを把握することで「次の戦略」を見失わない。
ライフサイクル分析の難しいところは各段階のスパンが分野、ビジネスモデル、企業毎にすべて異なっている点。短い導入期間の後の成長期間が長く、なかなか競争へと陥らずにトータルでの寿命が長いのが理想的であるが、現実には導入期が長く、成長期が訪れるとすぐに他社が参入して競争期に陥り市場が飽和状態になってしまうというパーターンがインターネット上では多い。
経験の薄い人が新しくインターネット上でビジネスを立ち上げる場合には、有望と既に叫ばれている市場を意識する余り、無意識のうちに成熟〜競争期の分野に新規参入していることが珍しくない。しかしこれでは、次に訪れるのは儲かる見込みのない衰退期である。
この様な失敗をしないためには「事業のオリジナリティ」を追求することが大切。成長期を長期間持続させるためには他社が競合として参入しにくい、または参入できない仕組みを導入期の段階から考えておく必要がある。そのためには「独自技術の開発」「独自コンテンツの育成」「ブランドイメージの確立」などが具体策となるが、その中の「独自技術」を攻略する術は日本の大企業が最も得意とするノウハウである。となればSOHO企業がネット上で成功するためには、独自コンテンツを育成して、その結果としてブランドイメージの確立することが重要戦略となる。
この場合の「独自コンテンツ」とはオンリーワン商品・サービス全般のことを指す。メールマガジンなら他誌を真似することのない独自の論調、視点、文章表現力。オンラインショップなら他社が調達することの出来ない商品設定をしたり、他社には真似のできない専門知識で勝負することで独自性が生まれる。インフラ系ビジネスにしても「機能」だけでは推し量ることのできない独創性や感動をユーザーに与えることができるサイトにすることが不可欠だ。インターネットビジネスはデジタル的な側面を多分に持つが、それだけでは成功条件の要素が満たされないのがベンチャーにとってはおもしろいところ。
オリジナリティが高くユニークな企画や新サービスを日々研究して、継続的に投入することでサイバービジネスのライフサイクルは意識的に長期化させることは可能だ。独自性の追求は日本人の最も苦手する分野だが、そこには資本力とは別世界の成功法則が隠されているのだろう。
|
これは正式会員向けJNEWS LETTER 1999年2月12日号に掲載された記事のサンプルです。 JNEWSでは、電子メールを媒体としたニューズレター(JNEWS LETTER)での有料(個人:月額500円、法人:月額1名300円)による情報提供をメインの活動としています。JNEWSが発信する情報を深く知りたい人のために2週間の無料お試し登録を用意していますので下のフォームからお申し込みください。
|
|
|