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貸し渋り対策としての中期経営計画作成
written in 1998.12.8

 銀行の中小企業に対する融資審査は厳しくなるばかりだが、「今まで問題なく受理された融資申込が通らなくなった」「きっちりと毎月返済しているのに突然、一括返済を求められてしまった」といった場合には行内の融資先格付けにおいて自分の会社がランク落ちしたことが原因として考えられる。

 「融資先格付け」は各融資取引先に毎年提出してもらう決算書を中心とした業績資料を基に銀行側が融資先の安全度をランク分けしてあるもの。内部の人事異動が激しい銀行では、担当者毎の安全意識のばらつきを防ぎ、銀行本部が全融資先の業績内容を簡単に把握できるようにすることが格付けの主な目的だ。

 しかし銀行には「大蔵省検査」「日銀検査」といった外部監督機関の立入検査が数年に1回のペースで必ず入り、各融資先に対する安全度の総チェックを何日もかけておこなう。その際に、銀行側が優良融資先としてAランクに格付けしていた企業でも財務資料から判断して監督機関が優良だと確認できない場合には格付けを落とさざるを得ない。

 バブル経済期にはこの検査基準が比較的緩やかなため不良債権が激増した。しかし近年の金融不祥事発覚と銀行への公的資金援助などから銀行に対する審査基準は以前と比べてかなり厳しくなっている。

 外部検査で安全性を指摘された取引先に対しては「格下げ」となるが、この時点で融資審査基準はそれまでと一変することになる。これが貸し渋りといわれる原因である。

 そのため取引企業側としては、銀行側が指針とする「安全性についての基準ライン」を維持することが今後の資金繰りを悪化させないための重要課題となる。そこで具体策として早急に作成しておく必要があるのが「中期経営計画」という5年先までの経営戦略を明確に示した資料である。

 外部検査の際には融資先の安全度を判断する基準として「今後5年間の経営状況に問題がない企業」であるかどうかが重要視される傾向が強い。その判断材料として中期経営計画の内容が検討されるわけだ。

 しかし現実問題として5年先までの経営予測を明確な書類として作成し、銀行に提出してある中小企業は少ない。その場合には銀行提出済みの過去の決算書を銀行担当者が読み返して5年後の経営状況を勝手に予測することになる。これは企業側にとって大変不利であることが理解できるはずだ。そのため資金調達を借入に依存している中小企業は早急に「中期経営計画」を取引銀行に提出しておくことをお奨めする。これで根拠の乏しい格下げを防げる確率が高まるはずだ。


中期経営計画の内容とは

 経営にとって「中期」とは5年間を意味するが、これはインターネットビジネスを手掛けるベンチャー企業にとってあまりに先の将来だ。しかしそんなことは銀行には通用しない。彼等を納得させるには説得力のある予測数字を作るのみである。

 裏話をすれば銀行担当者や大蔵担当者が各業界の予測数字の妥当性を判断することはできない。もちろん業界専門家に委託し診断してもらえば話は別だが、特別なケースを除いてそこまですることはまずない。重要なのは「5年先を数値予測してあるという企業体質だ」と言う融資担当者も少なくない。

 単発の事業計画書とは異なり中期経営計画では「企業の経営方針・存在意義」自体を問われることになる。その具体的な項目として以下の点を明確にしなければならない。

<外部環境、業界内の市場分析>
 ◎競合者の進出動向
 ◎商品価格の変動予測
 ◎外部環境(為替相場等)が仕入に与える影響
 ◎その他

<現状の分析>
 ◎自社の業績推移(過去)
 ◎業績成長、衰退要因の分析
 ◎構造的な問題点とその解決策
 ◎現状の財務分析
 ◎営業、生産、人事面での現状分析
 ◎その他

<今後5年間の経営方針と事業計画>
 ◎売上高の推移予測
 ◎経常利益の推移予測
 ◎資金調達の予測
 ◎従業員の雇用計画について(採用人数、リストラ計画、雇用体系等)
 ◎従業員への利益分配方針について(給与体系等)
 ◎新規事業計画について(具体的内容)
 ◎技術力、商品開発力の育成方法について
 ◎その他

<今後の具体策と改善内容(例)>
 ◎経営者の能力向上策について
 ◎従業員の能力開発策と育成方法
 ◎幹部育成と責任、権限の範囲について
 ◎財務体質の具体的改善方法
 ◎営業力向上の具体策について
 ◎商品開発力向上の具体策について

 中期経営計画での各項の予測は、より具体的に、かつ信頼性の高い数字で説明することが銀行側の評価を高くする。例えば5年間で売上を2倍にする計画ならば1年に15%ずつ5年連続で売上を上昇させることがわかりやすいプランだが、そのためには具体的に毎年どんな戦略を組むのかが具体的に説明されていることが望ましい。


これは正式会員向けJNEWS LETTER 1998年12月8日号に掲載された記事のサンプルです。 JNEWSでは、電子メールを媒体としたニューズレター(JNEWS LETTER)での有料(個人:月額500円、法人:月額1名300円)による情報提供をメインの活動としています。JNEWSが発信する情報を深く知りたい人のために2週間の無料お試し登録を用意していますので下のフォームからお申し込みください。
 
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