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資金繰りを楽にするための営業案件分析
written in 1998.12.5

 銀行からの資金繰りがタイトな時代には「最も儲かる仕事」を的確に見つけ出し、そこに積極的な営業攻勢をかけなければならない。これは経営者だけでなく営業マンにとっても重要なノウハウ。前回のJNEWS LETTERで解説したソフトハウス経営においても受注する仕事を同じ傾向に偏らせることなくバランス良くしなければ、仕事の受注残はたくさん抱えているが資金繰りが回らなくなったり、いくら仕事をしても儲けが薄いという両極の状況に陥ってしまう。これを回避するために自社の資金繰り念頭に入れて営業戦略が組めるようになれば有能な営業マンの仲間入りだ。

 新たな仕事を受注するにあたり、自社にとって喜ばしい仕事がどうかの判断材料は「利益率」と「売上回収期間」の2点である。利益率が高く、売上回収期間が短い仕事が最も喜ばしいことに間違いないが、現実の営業ではそんなにわかりやすい案件に対面することは少ない。そこで「利益率をとるか」「売上回収期間をとるか」の判断が新米営業マンには難しい。


誰でもできる資本利益率の活用法

 利益率と売上回収期間のバランスから案件の良し悪しを判断したい場合には「資本利益率」という指標を使えば誰でも簡単に的確な決断をすることが可能。ソフトウエア開発会社の営業マンが3つの案件を抱えていた場合で考えてみよう。

<資本利益率算出公式>
    ┌────────────────┐
    │          利益率    │
    │資本利益率 = ──────── │
    │        資本回転期間  │
    └────────────────┘

●案件1
 ・粗利益率=50%  ・代金回収期間=6ヶ月
    ↓
  資本利益率=50%÷6ヶ月=8.3%

●案件2
 ・粗利益率=40%  ・代金回収期間=4ヶ月
    ↓
  資本利益率=40%÷4ヶ月=10%

●案件3
 ・粗利益率=30%  ・代金回収期間=2ヶ月
    ↓
  資本利益率=30%÷2ヶ月=15%

※資本利益率が高いほど会社にとって良い案件である。

 案件1は利益率が一番高いが代金回収期間が6ヶ月と長いために、資本利益率は3件の中でも最も低い。逆に案件3は利益率が低いものの、代金回収期間が短いために資本利益率は15%と最も高い。そのため資金繰りに不安のあるソフトハウスならば営業対象を案件3に絞り込むことが賢い。また案件1に関しては代金回収期間の交渉を6ヶ月から3ヶ月に変更させることで資本利益率が16.6%(50%÷3ヶ月)に改善する。

 そして各案件毎に受注(見積)金額が違う場合には各案件の資本利益率に受注(見積)金額をかけ算して考えることで代金回収サイトを考慮した金額ベースでの案件の優劣を判断することができる。銀行融資が見込めず資金繰りが厳しい場合や、無借金経営を貫きたい場合には、単なる利益率だけで案件に飛びつくのではなく、代金回収期間を検討した上での受注交渉が、金融機関が貸し渋る時代でも会社を倒産させないための自衛策だ。


これは正式会員向けJNEWS LETTER 1998年12月5日号に掲載された記事のサンプルです。 JNEWSでは、電子メールを媒体としたニューズレター(JNEWS LETTER)での有料(個人:月額500円、法人:月額1名300円)による情報提供をメインの活動としています。JNEWSが発信する情報を深く知りたい人のために2週間の無料お試し登録を用意していますので下のフォームからお申し込みください。
 
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