JNEWS LETTER 98.11.21にて解説した損益分岐点の算出法さえ理解していれば損益分岐点比率は下記の公式で簡単に求めることができる。
┌─────────────────────────┐
│ 損益分岐点 │
│ 損益分岐点比率(%)=───────×100 │
│ 売上高 │
└─────────────────────────┘
<試算1(A社95年度)>
◎月間売上高=1000万円、損益分岐点=750万円の場合
7,500,000.
損益分岐点比率(%)=───────×100=75%
10,000,000.
<試算2(A社97年度)>
◎月間売上高=3000万円、損益分岐点=2500万円の場合
25,000,000.
損益分岐点比率(%)=───────×100=83%
30,000,000.
A社の売上は95年度に月商1000万円であったが、その後、業績を伸ばして月商3000万円にまで成長した。一見してこの推移は成功軌跡のように思えるが損益分岐点比率から分析すると75%→83%へと悪化している。つまりA社は95年度よりも97年度の方が売上変動(不況)に対する抵抗力が弱く「潰れやすい企業体質」になっているわけだ。
<損益分岐点比率が示す企業の安全度>
○損益分岐点比率が60%未満 ----------->とても安全
○損益分岐点比率が60〜70%未満 ----->安全
○損益分岐点比率が70〜80%未満 ----->やや安全
○損益分岐点比率が80〜90%未満 ----->要注意
○損益分岐点比率が90%以上 ----------->危険
損益分岐点比率が低いほど企業体質が健全であることを示すが、急成長しているベンチャー企業の中には売上の急拡大によって短期間で大量の人材を新規採用したり無理な設備投資を迫られるために、創業当時に小規模な商売をしていた頃と比較すると損益分岐点比率が高まり不健全経営に陥る傾向がある。そのため短期間で急成長した企業に対しては銀行側も新規融資には慎重にならざるを得ない。
市場シェア競争から売上拡大戦略も経営者としては大切な要素だが利益率を落としてまで売上高に執着するのはリスクが大きい。売上規模の拡大に比例して損益分岐点比率が低下していく(安全度が高まっていく)商売の仕組みを作り上げることが最高の経営ノウハウなのだ。