家賃から算出する目標売上額とSOHO経営への応用
事業を始める場合に一番最初に確保しなければならないのは「スペース」だ。従業員を雇うにしても店舗やオフィスが確定しなければ求人をかけることもできない。とはいうものの事業のためのスペースに関しては考え方が大変難しい。「商売=立地」とも言われるほどだが、立地条件の良い場所に店舗やオフィスを構えれば当然ながら毎月の家賃は高くなるが、立地条件を武器に売上を伸ばすことができるかもしれない。かとってあまりに高い家賃では利益を圧迫してしまい資金繰りを悪化させてしまう。
特に初めて事業を起こす場合には売上がゼロの段階から家賃を払わなければならないが、経験がないだけに家賃の適正額を判断することは難しい。しかし基本的な公式を頭に入れておけば事業規模に関わらず、スペースに費やす適正なコストを判断することが可能だ。
【適正家賃算出のための公式】
もちろん業種業態により適正や家賃コストの考え方は変わってくるが、最も基本的な法則として成立する法則は下記の通り。
例えば、月間売上(月商)が500万円あり粗利益率が40%の商売では限界利益(粗利益)は200万円(500万円×40%)であるから、オフィスの家賃をその10%に設定すれば20万円、20%に設定すれば40万円ということになる。立地条件を重視する商売なら粗利益の20%、重視しない商売なら10%以内に抑えておくのが妥当。
なお、ここでの家賃とは店舗・オフィスに費やす月間総コストのことであり内装工事部分でも月々の支払いがあるようなら、それも合算して考える。
【適正比率を明確にすることの重要性】
売上規模の拡大や従業員の増加に伴い、店舗・オフィスも拡大していかなければならない。その際に「限界利益:家賃」の適正比率を明確にしておけば、その時点での最も適切な家賃がすぐに算出できリスクの少ない業務拡張をすることが可能だ。
また新規独立の場合には売上ゼロの段階からオフィスを借りるわけだが、適正比率を決めておけば家賃コストから逆算して妥当な目標売上額を求めることもできるわけだ。
<限界利益に対して家賃が10%の場合>
自分が手掛けるビジネスの平均粗利益が35%でオフィス家賃が15万円ならば
上記の計算式より約428万円の売上目標を達成した時点で適正なビジネスだと判断することができる。
【家賃からみる SOHO 対 企業】
数多くの取材の中で「家賃がなければ儲かる商売なんだけど・・」という企業経営者の声をよく耳にする。狭い日本の中ではそれほど家賃が経営に占めるウエイトは高いが、ここで自宅をベースにビジネスをするSOHOのメリットに気付くはずだ。
家賃を支払う必要がないSOHOは他社と同じ商売をしていても10%~20%安い価格設定で同じ粗利益を確保することができる。つまり価格競争力の面では企業よりもSOHOの方が有利な立場にあるわけだ。(自宅が店舗になっている小規模自営業者でも同じメリットがある)
しかし現実には家賃支払いのないSOHOが、そのメリットを生かして企業を負かせている事例は少ない。その理由はズバリ「営業努力の欠落」にある。従業員を数名程度抱えた企業となれば家賃負担が経営を圧迫することになるが、「経費分を上回るだけの利益を上げなければならない」という危機感が生まれて営業努力をする。これが良い成果や顧客サービスへとつながる。一方、SOHOはリスクが少ないだけに営業努力を怠りがちだ。
ただし「倒産しやすいのはどちらか?」といえば圧倒的に企業である。SOHOはあまり儲からなくても潰れにくいが、ジリ貧していく傾向が強い。
だからといって「SOHOでも無理をして高い家賃のオフィスを借りるべき」と言っているわけではない。成功SOHOになるためには「家賃はタダ」という考えを捨て、自宅であっても仕事スペースに関しては家賃設定をして収支計算をしてみることが重要。最低でも月額5万円はスペース賃料として利益から除外して収益性を判断する考え方に慣れておけばSOHOから企業へと移行することにも違和感がなくなるはず。SOHOとして成立するための最低利益は月額50万円であることを覚えておきたい。
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■この記事の完全レポート
・JNEWS LETTER 98.11.21
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