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Written in 1998.10.11 しかし最近になりコンビニ業界の快進撃にも陰りが見え始めている。日本経済新聞社が今年7月にまとめた「コンビニ・ミニスーパー調査」によれば1997年度の店舗数伸び率は1974年の調査開始以来の最低を記録したとのこと。確かに周辺を見渡しても閉店する店舗をよく見かけるようになった。また昨年の国会ではコンビニ本部とフランチャイジー(加盟店)側とのトラブルが多発している問題が問いただされている。 高度なマーケティング力と商品管理能力を持ちながも、その仕組みに歪みが出始めているコンビニ業界の内側は今、どんな状況にあるのか、その光と影の部分を業界関係者からの証言をもとにレポートしてみたい。 出店基準と立地調査ノウハウ CVS本部が出店候補地を探す際には当然、既存競合店が少ない地域に的を絞り込んで調査していく。基本的には消費者に覚えてもらいやすい交差点角を狙うが、それが難しい場合にはその周辺地に出店を決める。また立地的には若干問題があっても、そこが酒販店であればGOサインを出すこともある。出店基準としている調査項目としては以下のようなものがある。 ●角地であること
これらの各項目にポイント(例:敷地間口○○m〜○○m=±○○ポイントと何段階かに分かれている)をつけ県単位の補正をして予測売上を算出していく。これらのポイントは、一応過去の実績に基づいて決められるが、現状では店舗機能に配分が高くなっている。 ただし、いくら精度の高いポイント配分をしたりコンピュータ化しても、調査方法や調査担当者の違いによりポイントに誤差が生じるため、現実とはかけ離れた数字になる可能性もある。そのため開店前の売上予測が裁判沙汰になって以来、業界の基本的なルールとして、各チェーンともオーナーには売上予測数字は公開しないようにしている。(一部ではオーナー獲得のため公開することもある)。 出店後トラブルについて 店舗数が多くなるにつれて店舗オーナーからのクレームも増加しているが、その中でも同チェーンの店舗が近隣に出店する「自店競合」が代表的なトラブル事例だ。 FC契約書の上では加盟店オーナー側に「その地域の独占権を与えない」と明記してあり、近隣に出店するか否かは出店後の影響を考えた上で本部側が判断することになっている。本部側の説明では「地域のドミナント化をすすめることで看板の知名度を上げ、既存店舗の売上の底上げをはかる」としているが、オーナー側としては「他チェーンが近隣に出店してくるのなら納得するが、同チェーンが出店してくるのだけは許せない」という気持ちが強い。 そのため本部としても既存店に決定的な影響を与えてしまうと判断できる場合には近隣への出店はしないが、既存店の売上状況が悪ければ「店の置き換え」として出店を決行する。その際、本部は既存店に対して営業補助金を使ったり、2号店を勧めたりと様々な方法でオーナを納得させ、「既存店からの反対により本部が出店を断念した事例は聞いたことがない」と業界関係者は語る。 オーバーストアと採算性の関係 CVS本部とすれば有望な商圏や土地を他チェーンより早く押さえたいという思惑がある。また本部の売上は各店舗からのロイヤリティによって構成されているために店舗数を増やさなければ企業の成長が止まってしまうという焦りもある。 そのため本部では「加盟オーナー探し」よりも「出店計画」を優先させる。そのため本部が地主と契約をし店舗を建設してから、その店をFC加盟者に提供するというパターンの出店が多い。ここで出店時の契約体系を整理しておこう。 <加盟者が店舗を取得する場合(オーナー負担型)> ・本部に支払うロイヤリティ率の例------>売上に対する粗利益の42% <CVS本部が店舗を取得して加盟者に提供する場合(本部負担型)> ・本部に支払うロイヤリティ率の例------>売上に対する粗利益の55% (※ロイヤリティ率は各チェーンによって異なる。) 本部負担型なら加盟金300〜500万円を支払うだけで経営者になれるため資金力の弱い脱サラした人が気軽に加盟契約する事が多い。開店当初は大きな売上が期待できないためにローン返済、毎月の賃料を考えると本部負担型の方が楽だが、ある程度売上が伸び始めた段階になるとではロイヤリティ率が低いオーナー負担型の方が収入はかなり良くなる。 本部負担型オーナーは高いロイヤリティを払い続けなければいけないため、がんばって売上を伸ばしてもオーナーの収入はなかなか増えない状況に陥ってしまう。そのためCVSチェーンの多くは本部負担型店舗の売上が一定水準を超えた段階で、店舗建築費用の残存価格をオーナー側に買い取ってもらい、契約体系を(本部負担型)→(オーナー負担型)に切り替える制度を設けている。 しかし契約変更する際には店舗買い取りのためにオーナー側は数千万円規模の資金を工面する必要がある。ところが元々資金力が弱いため(本部負担型)で加盟した人達だけに、開業後の大規模な資金調達には無理があるようだ。 資金不足のため契約変更ができずにオーナー側が儲からないままで運営されている店舗は従業員確保のための人件費やスポイルロス(売れ残り商品の廃棄)も出しにくくなるため、顧客サービスや品揃えが悪化していき、それが売上不振へとつながり、オーナーは更に儲からなくなるという悪循環が始まるのだ。 最近では「コンビニ業界=労働時間が長い」といった負のイメージが出来てしまったために、資金力に比較的余裕のある「質の高いオーナー」が集まりにくくなっているのが事実。資金力のない人が(本部負担型)により加盟金300〜500万円をも借入に頼って開業するとなると、高いロイヤリティを払い続けなければならないその後の経営状況に苦労するであろう事は、業界人からすればある程度予測できるのだという。 やはり開業時に最低3000万円程度の資金調達ができなければコンビニ経営は難しいようだ。 <コンビニ業界の現状と問題点の図解> [CVS本部が成長するためには] │ │ ↓ [ロイヤリティ収入増加が不可欠] │ │ ↓ [陣取り合戦激化]←──[出店の拡大戦略]──────→[自店競合] ↑ │ │ │ │ │ │ ↓ │ │ [本部負担型店舗増加]←─────┐ │不 │ │ │ │満 │ │ │ │ │ ↓ │ │ │ [儲からないオーナー増加]┐不 │ │ │ │ │満 │ │ │ │ ↓ │ ↓ │ │ [質の高いオーナが集まりにくい] │ │ │ ↓ │ [サービス・品揃えの悪化] │ │ │ │ │ ↓ │ [売上不振店の増加] │ │ │ │ │ ↓ └──[スクラップ&ビルドによる店舗置き換え]現実にオーナー希望者は少なくなっているため、本部としては賃貸契約を済ませた物件を早く開店させなければならない。そのため加盟希望者には5〜6回の説明をした段階で決断を迫るケースも珍しくない。しかし本当に採算性に納得できない段階では契約すべきではないのだ。 もちろんCVS本部側が開業後に提供してくれるノウハウやサポートはきめ細かいものだが「すべてを本部側に頼る」のではFC加盟本来の意味を取り違えることになる。不振店が出始めている反面、物販以外のコンビニ機能が発展していく中で高収益を上げる店が増加しているのもまた事実。加盟オーナーは出店段階から開業後まで経営者の視点で店舗運営に取り組めるかどうかが重要になるのだろう。 |