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Written in 1998.10.1 しかし自分が出店者の立場になった場合に「商売に向く土地」を見つけるのは非常に難しい。どんな根拠を持って立地条件を診断するのかはエリアマーケティングの範疇となるが、商圏となる周辺人口や住民の所得層からだけでは語れない立地条件の不思議は存在しているようだ。 商圏の考え方 店を新規開店するために最初に調査するのが「商圏」だ。しかし同じ土地でも「どんな商売をするのか(どんな商品を販売するのか)」によって商圏規模は大きく異なる。商圏の考え方としては以下の分類に合致するのが良いと言われる。 <(1)徒歩で5分〜10分程度> コンビニのような小規模小売店の場合には店舗周辺の住民がターゲットなるが、気軽に買い物に出かけられる範囲は徒歩で5分〜10分程度である。それ以上の時間がかかるようであれば徒歩での買い物客を集めるのは難しい。店舗を中心として約500mエリアに大規模マンションや人が集まりやすいビル、駅などがあれば固定客を掴みやすい。 <(2)自動車で5分〜10分程度> 駐車場を完備したローサイド書店やビデオレンタルショップでは自動車で5分〜10分程度のエリアが商圏となる。それ以上の時間がかるようなら価格面やサービス面の差別化がない限り、消費者はもっと近くにある同業の店を利用することになる。 <(3)自動車で30分以内> どんな大型店でも顧客を呼び込むことができる最大の商圏は自動車で30分以内のエリアだ。もちろんそれ以上の時間をかけて来店する顧客も存在するがこれらの人は商圏人口としては考えないのが一般的。ホームセンターや大型ディスカウントショップで新聞折り込みチラシで顧客を呼び込むのが定番戦略だが、その配布エリアは自動車で30分エリア内を最大規模としている。 つまり取り扱う商品やサービス、店の種類によってターゲットなる商圏は(1)〜(3)のように異なる。(2)の商圏で失敗した土地であっても(1)の商圏なら成功したり、(3)の商圏で成功した土地でも(1)や(2)の商圏では商売にならないケースも珍しくない。 道路幅の関係 いくら良い商圏に立地していても隣接している道路が顧客の来店を阻むケースもよくある。素人考えでは道路幅が広いほど商売に適していると判断しがちだが、交通量が多すぎる道路は大規模な駐車場を用意しないと来店しにくい。またクルマの平均速度が速すぎる道も商売には向かない。また中央分離帯のある道路は道路向かい側の商圏を阻害することになるので注意が必要だ。 普段消費者が利用している生活道路沿いにあり、駐車場にはクルマが常時並んでいて人気があるように気付かせる店が繁盛しやすい。 ・常に渋滞している道路 ------------------->× ・クルマの平均速度が速い道路 ------------->× ・中央分離帯のある道路 ------------------->× ・道路から駐車場が見えにくい ------------->× 客が入りやすい立地とは ファミリーレストランやコンビニの立地を観察してみると学ぶべき点が多い。一般的に共通しているのは信号のある交差点付近の角地に人気があることだが、更に深く見てみるといくつかの法則に気付く。 <進行方向と立地> 道路には「上り」と「下り」があるが、一般道なら市街地(オフィス街)へ向かう車線が「上り」、市街地から反対方向の車線が「下り」と考えて、まず店が建ち並び始めるのは下り車線からだ。これは、ほとんどの消費者は朝の出勤途中でなく夕方の帰宅途中に店に立ち寄ることに起因している。 <交差点での位置関係> 店舗として信号機のある交差点付近の角地の人気が高いのは、通行人やクルマが減速するために店の存在が目立ちやすいためだが、交差点に隣接した角地の中でも、客が入りやすいのは進行方向から見て、交差点を渡った後の角地である。 これは赤信号で停止中に目前にある店が目立ちやすいのと、青信号でスタートし始める際はスピードが緩やかなため、最も店に入りやすいのだ。 [市街地(オフィス街)] │ │ │ │ │ │↑│ │ │上│下│ │り│り│ │車│車│ │線│線│ │ │↓│ │ │ │ │ │ │ ────────────┘ └──────────── 信号機 ────────────┐ ┌──┬───────── │ │ │ │ │ │ │ │←─最も商売に適した土地 │ │ │ │ │ │ ├──┘ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ [住 宅 地] |