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プロが活用する小売店診断ノウハウとビジネスチャンス

Written in 1998.9.5



 小売業の商売は仕入れた商品に粗利を付加して販売することで成立する。消費者が求めている商品を如何に安く仕入れて充実した粗利益を獲得するのかが重要なノウハウであるが、初めて商売をする人にとってはこれが大変難しい。

 頭の中の数式では「販売価格−仕入価格=粗利益」により明確な売上予測を立ててみるものの、現実の商売では「人気商品が仕入れられない」「値引きしないと商品が思うように売れない」など様々なトラブルを経験するようになる。これはフランチャイズに加盟して小売業を始める場合でも同じで、FC側スーパーバイザーによる売上予測が大幅に狂うことがあるが、これは「ロス率」に対する考え方が甘いことに起因しているケースが多い。

 小売業のロス率を明確に把握して改善させるためのノウハウを会得するためには「値入率」の考え方を理解しておく必要がある。簡単な商売理論では利益予測に粗利益率だけを利用するが、商売上の不明確な要素(ロス)を予測段階から盛り込むためには利益率を「値入率」と「粗利益率」の2段階に分けて考えるのが望ましい。




値入高の考え方


 仕入原価7000円の商品を100個仕入れて1個10000円で販売する。その売上から期待できる粗利益は「3000円×100個=30万円」となるが、実際は100個の商品を完売するのは難しく売れ残りが生じる。また季節商品なら時間の経過と共に値引きしていかなければならないために、最終的な粗利益は予想額の30万円より大幅に下がることも珍しくない。そのため予想額の30万円を「値入高」と考え、そこから値引き額やロス額を差し引いた金額をより正確な「粗利益高」として扱うことが、売上予測を確かなものへと導く。

<仕入原価7000円で100個仕入れた場合の考え方>

├──────────────┼────────────┤
│  仕入原価(70万円)  │ 値入高(30万円)  │
├──────────────┼────────┼─┼─┤
                   ↑     ↑ ↑
                   │     │ │
                 [粗利益額]  │ │
                         │ └┐
                       [ロス率]│
                            │
                          [値引金額]

 どんな小売店でも値引きする金額については、ある程度の見込み設定を立てて粗利益を予測しているが、商品が売れ残ったり、万引きされたり、返品されたりするロス率に関してまで的確に把握して収益予測を立てている店は少ない。しかしここに大きな問題点があるのだ。




ロス率と店舗運営


 通常の小売店舗では数多くの商品を扱うために仕入作業は繁雑だ。そのため倉庫や店舗内には複数の種類の在庫が溢れて、どの商品がどれだけ売れ残っているのかを常に正確に把握しておくことが難しい。ひどい店になると商品がどれだけ万引きされているのかも確認できないことさえある。

 この様にロス率が把握できていない店は、知らない間に必ずロス率の数値が上昇していくことが会計事務所から報告されている。しかしロス率が上昇していくことは粗利益が減少することに直結するため、これでは毎日の売上高が増えていても全く儲からない体質の店になってしまう。つまり小売店経営者にとって重要なこと、良い小売店舗にするためには、なるべく短いサイクルで正確なロス率を把握できるノウハウを構築することなのだ。

 優秀な経営者は「仕入額」「値引額」「ロス率」の数値を十分に考慮して組み合わせた上で利益予測を立てる。ロス率を下げるために具体的な施策を考えるようになれば、必ず数値は低下傾向へ向かう。同じジャンルの商品を扱っていてもロス率10%の店もあれば1%の店もある。他店との値引き競争も限界に達して生き残り策が見つからなかった店でもロス率を低下させることで息を吹き返すこともあるのだ。




ロス率を把握するための方法


 帳簿上の在庫数量のチェックだけで正確なロス率を把握することは不可能。ロス率を低下させるために最も効果的な方法は「棚卸し」の頻度を増やすことにある。棚卸しとは実際の在庫商品を数量面と金額面ですべてチェックして、帳簿上の数値と照合することで、その時点での損益状況を確定する作業だ。

 店舗内や倉庫にある在庫をすべて手作業でチェックしなければならないために棚卸しはかなり面倒な作業だ。そのため大型ストアーが棚卸しをするためには店を休業しなければならず、その頻度は年に1回、半年に1回と少ないケースがほとんど。しかし棚卸し回数が多い店ほどロス率が低い傾向は顕著で、商品を卸す側の問屋では取引先小売店の信用状況を確認する上で、棚卸し回数を調べることもある。

 新規取引先に対して「今までの商品ロス率」を露骨に聞くことはできないが、棚卸し回数なら遠慮なく質問することができるのだ。ここがヒアリングのテクニックである。




棚卸し関連ビジネスに注目


 取扱商品が多品種化していく中でアイテム単品毎の管理が重要視される傾向は今後、更に強くなる。そのためPOSシステムを導入する小売店も増加することが予測されるが、POSを効果的に運用するためには「短期サイクルの棚卸」により実際の在庫状況から正確なロス率を把握することが不可欠になる。しかし関連したコンピューターシステムの進歩に対して、手作業でおこなわれている棚卸し作業に関するノウハウは昔から非効率なままだ。ここにニッチなマーケットが存在する。

 米国では約20年以上前から「棚卸代行サービス」がビジネスとして成立している。棚卸は閉店時間(休業日や深夜帯)にスムースにおこなう必要があるが、店の従業員に時間外労働として作業させるには時間外手当を支給しなければならないのでコスト高となる。また年に数回程度の棚卸作業は従業員も不慣れなために効率が良くないという問題点があった。そのため棚卸し作業ばかりを請け負う「代行専門業者」の存在意義が確立したわけだ。

 米国の小売業はチェーン化(多店舗化)、大規模化しているケースが多いが、これには正確に店内の在庫状況が把握できないという欠点がある。もちろん本社ではPOS管理により帳簿上の在庫状況やロス率は常に確認できているものの、店で働く従業員がずさんな商品管理をおこなっていれば、帳簿と実態が大きくかけ離れていることも珍しくない。

 そこで本社側が正確に店内のロス率を把握するためと、店内検査の意味も含めて店内従業員ではなく外部の専門業者に年に5、6回の棚卸しを委託するのだ。コンビニチェーンやドラッグストアーチェーンなどを中心として棚卸代行サービスが利用されていて、米国では棚卸しを専門業者に任せることはそれほど珍しいことではない。

 一方、日本国内での棚卸外部委託率は大幅に低下する。しかし潜在的な需要は確実に存在していて、既に棚卸代行専門業者も活躍している。その中の業界最大手としては「エイジス」という会社が有名。1978年に設立され、その後順調に売上を伸ばし1996年には店頭公開、現在は1000名の従業員を抱えるまでに成長している。主力クライアントとして米国同様に全国にチェーン展開する小売業者を獲得してきたことが成功要因として上げられる。

 現在の棚卸代行サービスの市場規模は約100億円で、エイジスはその中の約6割以上のシェアを獲得していると推測できる。しかしこれから更に棚卸代行市場が拡大していけば、新たな切り口の棚卸代行業者が成功できるだけのチャンスは十分に存在するはずだ。

■株式会社 エイジス URL
http://www.bekkoame.ne.jp/~ajis/

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