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商売道における初歩的数値分析の考え方

Written in 1998.9.2



 多品種少量販売の時代に入り物販業界では従来と比べて専門的な販売管理ノウハウが求められている。Webショップの場合にもそれは共通していて、ページ立ち上げ当初は単品勝負していたサイトでも時間の経過と共に商品アイテム数は増加していく傾向にある。これは常連客達を飽きさせずに、客単価を上昇させていくための施策としては有効な手法だ。

 商売の世界では古くから「2−8理論」というのが存在している。「すべての取り扱い商品において2割が売れ筋商品であり、それが全体売上の8割を占める」という考え方だが、この原則は今でも通用していて、商売の様々な側面でも応用されている。また商売に長けたユダヤ人の商売哲学でも「2−8理論」に似たもので「78:22の法則」というのがある。「自然界の原理原則は78:22が最も自然なバランスであり、商売で悩んだ時には78:22のバランスに頼るのが良い」というものだ。

 ここまではいわゆる「商売の勘」というヤツだが、コンビニなどに導入されている最先端のPOSシステムの中にも実は2−8理論がプログラムされている。これは各商品の売上状況をチェックしながらA、B、Cのグループに分類してその重要度に応じて、商品管理方法や努力目標を集中、分散させて業務の効率化を図ろうとする「ABC分析」といわれている手法で、そのグループ分けの過程で2−8理論が採用されていることが多いのだ。




ABC分析の事例研究


 例えばカップラーメンは数多くの種類が販売されているが、コンビニではABC分析により売れている商品から順番にグループ分けをしている。

 約2割←[Aグループ]
     (売上累積シェアが60%までの商品)

    ┌[Bグループ]
    │(売上累積シェアが95%までの商品)
 約8割┤
    └[Cグループ]
     ( A、Bグループより下位の商品・つまり5%の売上シェア)

1週間でカップラーメン全体の売上が100万円ある小売店なら、すべての商品アイテムの販売状況をランキングして上位60万円までの売上を構成す商品群をAグループ、95万円までの売上を構成する商品群をBグループ、それ以下(5万円)の商品群をCグループとして管理する。

 するとAグループに入る商品群は全商品に対して約2割となり、残りの約8割の商品群がB、Cグループを構成するという結果がパターン化されているのだ。つまり「Aグループ=売れ筋商品」「Bグループ=見せ筋商品」「Cグループ=死に筋商品」と考えることもでき、仕入担当者はAグループの在庫状況に対して重点的に気を遣うことで消費者側から見て「欲しい商品がいつも品切れになっている」と思わせる「販売機会ロス」を削減することが可能になる。逆にCグループの商品群は新製品発売と同時に商品棚から消える運命にあるものだ。




商品アイテム数と売れ筋の関係


 狭い店舗面積で多ジャンルの商品を扱わなければならないコンビニではABC分析による商品の売れ筋、死に筋管理が徹底している。最近は他業界でもPOSによる商品管理システムの導入によりコンビニ業界のノウハウを見習う向きがあるが、一方で「ABC分析の弊害」を訴える流通業界関係者も出始めている。

 ABCの理論からすると売れ筋商品のみを扱えば大変効率的で賢い経営ができるように感じるが現実の商売ではそうとも限らない。「売れ筋」のトレンドは常に変化していて「死に筋→見せ筋」「見せ筋→売れ筋」へと移動してくる商品を早い段階で発見することがとても重要だ。また消費者心理にある「たくさんの商品の中から気に入った商品を見つけ出す楽しみ」を提供するのも店側の大切な役割。消費者が楽しめる店舗は顧客の滞留時間が長くなる特徴があり、それが客単価上昇へとつながりやすい。

 確かにコンビニへ行く際には買いたいものが定まっている「目的買い」のケースが多く、店内での滞留時間が短いことを多くの消費者が体験しているはず。そのためコンビニ側では少しでも顧客の滞留時間を引き延ばそうと、主力商品であるラーメンや清涼飲料水を店の一番奥に陳列して、そこから顧客を店内全域に回遊させようとする策が組まれている。

 Webショップの場合にも顧客の滞留時間が短いために商品アイテム数の問題は重要だ。大幅にアイテム数を絞って「お奨め商品」とすることで開店初期は売上を伸ばすことが可能だが、長い目で見れば「将来のAグループ商品」を育てるためのB、Cグループを配置することも大切になる。またB、Cの存在によってAグループ商品が引き立つケースも珍しくないから商売は奥が深い。




商品仕入へのABC分析の応用


 2−8理論やABC分析は商品管理に特化したノウハウではなく、商売の様々な側面に数値分析を導入するための基本ノウハウだと理解してもらいたい。

 これを商品仕入に応用することを考えてみよう。
一つの卸業者との取引で100品目の商品を仕入れる場合には、すべての商品を値引き交渉して安く仕入れたくなるものだが、卸業者側の利益も考えてあげなければ長期に渡り良好な関係の仕入ルートを構築することはできない。そこで「押す商品」と「引く商品」とをABC分析により選別しておくのだ。

<仕入100品目の分類例(仮定)>
[Aグループ商品]--->(売上シェア70%)------->20品目
[Bグループ商品]--->(売上シェア25%)------->35品目
[Cグループ商品]--->(売上シェア5%)--------->45品目
------------------------------------------------------------
                  総仕入金額15,000,000円

 卸業者に対して100品目すべての値引きを迫っても無理なために、1グループだけの値引き交渉をおこなうようにする。しかし各グループ毎の売り上げシェアには大差があるので同じ5%の値引きでも、どのグループを値引き交渉するのかにより最終的な仕入コスト削減額は大きく異なる。

●Aグループ商品を5%値引き交渉して仕入れる場合
  実質的値引き額=15,000,000円×70%×5%=525,000円

●Bグループ商品を5%値引き交渉して仕入れる場合
  実質的値引き額=15,000,000円×25%×5%=187,500円

●Cグループ商品を5%値引き交渉して仕入れる場合
  実質的値引き額=15,000,000円×5%×5%=37,500円

 仕入品目数から考えればCグループ45品目を値引きしてもらえば、とても得した気持ちになるが実際には37,500円のコストダウンにしかならない。一方、Aグループは品目数は少ないがすべて売れ筋商品であるために、5%の値引きに成功すれば525,000円のコストダウン(つまり粗利上昇)になる。

 よって仕入時の値引き交渉はAグループ20品目に限定して、残りの80品目に関しては卸業者の設定した掛け率におとなしく従うのが得策。「卸業者 対 小売業者」の交渉はプロ同士の対決であるために小売側が素人の知識しか持たなければ、卸業者の言いなりで最終的に割高な仕入をしてしまい、それは小売価格に転嫁せざるを得ないため、他店との競争力が落ちてしまう。




顧客管理へのABC分析の応用


 顧客リストは「企業の資産」といわれて久しいが、業務を継続していると顧客リストが肥大化してしまい、その中にある「優良顧客」が「死に筋顧客」に埋もれてしまって効果的なリスト活用ができなくなってしまう。特に郵便DMを主力戦略としている企業にとっては「優良顧客」を選別するためのノウハウがマーケティングコスト削減に直結する。これをABC分析にかけてみよう。

 Aグループの上位顧客を顧客数全体の約2割になるように設定して、残りの顧客8割をB、Cグループに振り分ける。

[Aグループ顧客]------>(購入回数から算出した優良顧客の上位2割)
[Bグループ顧客]------>(A顧客を除いた年間購入回数2回以上の顧客)
[Cグループ顧客]------>(年間購入回数1回の顧客)

 本来、お客様を区別することは良くないことではあるが、ターゲット別に戦略を設定するという意味において、無駄な宣伝コストをかけないためにもABC分析が必要な場面が存在することは事実。

 すべての顧客に対してDMを発送する際でも「Aグループには客単価を上げるための戦略」「Bグループには顧客を固定化させるための戦略」「Cグループには2度目の来店を促すための戦略」と分けることが望ましい。それによって顧客のニーズや意識レベルにマッチしたサービスを提供できるようになり、最終的には顧客満足度が高まる。

 顧客管理でABC分析を活用する場合には、Aグループのみを主力ターゲットとしてB、Cグループを切り捨てるという考え方は危険だ。むしろ顧客をグループ化することで特徴を鮮明化させ、下位グループの顧客を如何にしてAグループまで引き上げるかの施策が重要となる。Aグループにまで成長すれば常連客として、多額のコストをかけなくても安定した売上を維持してくれるものだ。

 また時間の経過と共にAグループから下位グループへと脱落していく顧客も現れるが、これは顧客寿命だと考えることもでき、従来と同じサービスの継続だけでは再度呼び戻すのは難しい。該当者が増えてくるようになれば、それが新規事業立ち上げのタイミングだ。

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