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起業家になるためのノウハウ集
Written in 1998.8.16
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商売(特に物販)の成功事例には「仕入」の部分にノウハウが隠されていることが多い。他店と同じように安売り販売していても自分の店だけはしっかりと利益が確保されていたり、一見して大赤字の安値販売をする場合でも年間を通して考えれば、それが黒字の布石を作る重要な戦略であったりと商売の道は奥が深い。
素人がネット上でWebショップを立ち上げる際には「どのように売るか」という部分だけを気にしていて、「どのように仕入れるか」は同じ業界で経験のある知人に頼るだけで何の工夫、努力をしていないケースをよく見かける。しかし「成功の秘訣は仕入にあり」という言葉をプロの商売人になるほどよく口にする。
最近ではMD(マーチャンダイザー)として一つの商品について、仕入れ、陳列、販売促進、苦情処理までのすべてを売り場担当者に任せてしまう体系も珍しくないが、これはマニュアル化された仕入になりがちで、消費者にとっても面白みが欠けるという指摘もある。そこで今回はリアルな店舗、Webショップを問わず参考になる職人技的仕入の法則の一部を紹介してみよう。
プロパー商品の買い取り
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商品仕入には「買い取り制」と売れ残り品の返品が効く「委託販売制」の2種類がある。一般的に特売用の商品は「買い取り」で仕入れ、通常の商品(プロパー商品)は「委託」で仕入れるのが一般的な仕入れマニュアルとなっている。
しかしプロパー商品を買い取り制で仕入れることにより以下のようなメリットが得られ、消費者にとっても魅力的な品揃えの店と評価さえる傾向は強い。
<買い取り制によって得られるメリット>
●売れ筋の「商品」「色」「サイズ」を揃えることができる。
●納期を指定して仕入れることができる。
●仕入数量により柔軟な価格交渉をすることができる。
一般的に「買い取り」のほうが好条件で仕入れられるようになる。委託により65%の掛け率で仕入れられる商品は、買い取りなら55%程度で仕入れることが可能。また委託仕入の欠点は「欲しい時期に欲しい数量が仕入れられない」という点。人気商品ほど供給状況はは切迫して大量発注しても数個程度しか仕入れることができず小売店にとっては販売機会ロスとなる。よって消費者が求める商品が常に揃っている店にするためには「買い取り仕入れ」の比率を高めることが重要。
特売商品とプロパー商品のバランス感覚
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桁外れな安さの特売商品で大勢の消費者を誘い込んで割高な価格設定のプロバー商品(通常商品)で利を稼ぐ商売のやり方は既に過去のノウハウにしかならない。
店によっては特売商品ばかりを買い集めて安さを前面に押し出した商売をしているケースもあるが、特売用として問屋から仕入れられる商品は不人気商品だったり型落ち商品がほとんどであるため、高い商品知識を持つ現代の消費者には支持されにくい商品である。
また特売商品の掛け率は75〜85%とプロバー商品よりも利幅がとれないために、特売として売り出したにもかかわらず売れ残った場合には、そのまま赤字になってしまう。在庫処分したくても売れ残った(不人気な)特売用商品を欲しがる取引先を見つけることは不可能に近い。
そんなリスクの高い特売商品の仕入れに労力を費やすよりは正規のプロパー商品で確実に顧客を集めて利益を出せるための仕組み作りに努力するほうが賢い。仕入先をなるべく絞ってプロパー商品を定期的に安定して仕入れていれば、その割合に応じて処分品や特売用商品を卸してくれるために、それ以上の特売品仕入れに力を注ぐ必要はないのだ。
余剰在庫の処分方法
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買い取り仕入れを実行していると必ず余剰在庫問題が生じる。これを解消するために期末にはどの店でも在庫処分一掃セールをおこなっているが、その際の値引率にノウハウがある。セールの目的は在庫を翌年に持ち越さないことにあるので、ここで色気を出して割引率を控えめにすれば売れ残り商品が多くなり「常時在庫過多状態」から抜け出すことができない。これでは店内が死に筋商品で埋もれてしまい、売れ筋商品が目立たなくなってしまう。
在庫処分一掃セールでは最低でも5割引以上の値引きをおこなうことが在庫を残さないコツだという。それでも売れ残った商品は、本当の上得意客だけに対してクローズな環境で通常価格の1〜3割の感謝価格で提供してしまう。それでも売れない商品に関しては焼却処分してでも在庫を翌年に持ち越さない勇気が必要だという。特に流行性の高いアパレル業界では重要なノウハウだ。
不要な在庫を常時抱えている環境を許してしまうと不良在庫が倉庫を常時占領してしまうことになる。表面に見えない在庫(倉庫在庫)が増えることで必ず商品回転率は低下して資金繰りを悪化させる。これを解決するためには無駄な倉庫を必要としない「入荷即店頭主義」を徹底させることが望ましい。
仕入れに関する奥行きの広さ
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小さな小売店が量販店と品揃え面で対抗したところで勝てるはずもなく、仕入れ量の増加は大きなリスクにつながる。そこで品揃えに関しては「間口を広くする」よりも「奥行きを広くする」することで量販店との差別化をはかることができる。
10個の商品陳列ケースがあれば10ブランドを扱おうとするのが百貨店の考え方だが小規模小売店なら10ブランドの中のトップシェア・ブランドまたは最もお奨めブランドを一つに絞って、その品揃えを充実させるようにする。そうすることで消費者は百貨店にない商品を購入するために自店へ来店する意味が生じるし、仕入先を絞ることにも繋がるために好条件での仕入れが可能となる。
商売に必要な決断力とカン
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「ケチな人ほど商売には向かない」という言葉を商売人の間でよく耳にする。多少の歪曲はあるものの、「必要な時期に大量発注しないことで販売機会ロスを生じさせる」「若干の利幅を気にする余りに魅力的な価格設定ができずに、顧客を逃がして、それが余剰在庫、資金繰り悪化へとつながる」という意味合いの言葉だ。昔の商売人はこれらの問題点をすべてアナログ的ノウハウで解決してきている。
1歩先よりも3歩先を考えて赤字か黒字かを判断して勝負できる決断力が商売人には必要なようだ。これは目先の部署別営業成績に追われているサラリーマン社会では会得することができないノウハウでもある。もちろんPOSシステム等の発達により仕入のスタイルは時代と共に変化しているが、基本的な仕入ノウハウは昔と何ら変わってはいない。物販業の仕入に関わらず「商売のカン」を磨くことがすべての起業家にとって大切な能力になることは間違いない。
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