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起業家になるためのノウハウ集


資金繰りに失敗しないための決済サイトの考え方

Written in 1998.7.21



 東京商工リサーチの調査によると1998年上半期(1〜6月)の全国倒産件数は1万162件、負債総額は6兆3553億円、件数ベースでは昨年比28%の上昇と過去最悪の状況に陥っている。

 これほどまでに増加している倒産件数の背景にあるのが銀行の貸し渋りだと言われている。しかし「貸し渋りという言葉からは銀行側に一方的な非があるように感じるが、正確には融資審査が以前より適正におこなわれるようになり、将来的な展望が見えない案件に対してははっきりとNoと銀行側が言いようになっただけのこと」というのが銀行側の話。

 いずれにしてもこれからの起業家にとって「資金繰り」には十分な余裕を確保しておくことが重要、つまり「売上」と「経費」とのバランス感覚を常に健全に保っておかなければならない。しかし現実の商売の世界では売上が順調に上がっていても、資金繰りが日々悪化していくケースが珍しくない。

 各業界には昔から積み重ねられてきた商慣習によって決済方法が複雑化している。理想はすべて商品やサービスの流れと同時に現金決済されることだが、製造→仕入→流通→販売と経路が複雑化し決済数が多くなれば、そのたび毎の現金決済が難しくなるために「掛け」や「手形」といった信用決済が売上額に占める割合は高くなる。

 注文に応じて商品を販売したり製品を製造するには仕入代金、人件費、設備費等の経費が運転資金として必要になるために、実際の商取引日から決済日までの期間(サイト)が長くなればなるほど資金繰りは悪化する。




回収サイトの違いによるリスクとは


 例えば法人取引を主体とした会社の場合の売上には現金売上と掛け売上(手形を含む)の2種類がある。掛け売上が主体となる場合には、その回収サイトによって売掛金残高が大きく異なる。

<法人取引先とのサイト別売掛残高(月間売上48万円の場合)>
  回収サイト× 月間売上額=売掛金残高
   0ヶ月 × 48万円= 0円
   2ヶ月 × 48万円= 96万円
   3ヶ月 × 48万円= 144万円
   6ヶ月 × 48万円= 288万円

 継続取引で月額48万円の売上がある法人取引先との決済も回収サイトが6ヶ月間であるなら(1月売上分の代金は7月に支払われる)、その取引先との間には常時288万円の売掛金が存在する。これだけの商品やサービスを提供するためには、それなりの仕入代金、人件費等かかるが、6ヶ月の間はこちら側で負担しなければならない。万が一、その取引先が経営不振により倒産するようなことがあれば、未回収金となってしまう。

 決済方法や支払いサイトは業界毎にある程度の慣習が出来上がっている。そのため新規事業者がその業界に参入して継続的に仕事をするために、取引先の経理処理方法に従わなければならないのが現状。

 取引先からの代金回収サイトが長ければ、こちら側でも仕入先に対して支払いサイトを長くすれば資金繰りは回転することになるが、新規独立事業者の場合には信用や実績がないために、開業から数年間は買掛や手形取引はしてもらえない。よって「仕入は即日現金決済」「販売代金は6ヶ月の手形回収」というケースもあり、これではいくら順調に売上を伸ばしても運転資金が健全に回転していかない。




決済サイト事前確認の重要性


 そのため新しい業界へ参入するためには業界内の決済慣習を事前に把握しておくことが重要。その上で「仕入〜販売代金決済」までのサイト管理をしっかりシュミレーションすることで、繁盛しながらの資金ショートを未然に防ぐことができる。また決済サイトの面から好条件の業界を選んで新規参入を試みるという考え方もある。また、条件が悪い業界というのは資金繰りで悩んでいる業者が多いために、そこでカテゴリーキラー的に現金決済を導入することで、破格の好条件で商品が仕入れることもあるようだ。




小売業の支払いサイトの考え方


 最近の新規独立開業者は製造業や卸売業よりも小売業を始めるケースが圧倒的に多い。小売業の場合には個人客からの販売代金回収は現金決済が主流。ただし仕入れた商品を店頭に並べて消費者に購入されるまでに3ヶ月かかるとすれば、回収サイトは3ヶ月だと考えたほうが良い。

 仕入れが1ヶ月の買掛契約だとすれば2ヶ月間ずつ資金繰りが悪化していくことになる。つまり仕入サイトよりも回収サイトを短くすることが小売業を成功させるコツとなるのだ。

<●文房具小売業界>
 支払いは1ヶ月間の買掛後現金払い、または手形決済が一般的。通常は売上規模が大きくなるほど支払いサイトは長くなる傾向にある。

 文房具業界は法人先への外商が売上全体で大きなシェアを占める。そのため回収に関しては掛販売も多く、その場合は1ヶ月程度の売掛後に現金回収が一般的。大企業との取引で金額が大きくなれば売掛後の手形決済になる事もある。

<●スポーツ用品小売業界>
 小売店が商品を仕入れる際には現金支払いが約3割、手形支払いが約7割。手形支払いの場合でも支払総額の50%を現金で支払い、残りの50%を手形で支払うといったケースが多く、この業界の手形サイトは60〜90日となっている。

 スポーツ用品は季節性が重視されるため各シーズン前に資金需要が集中する傾向が強い。

<●酒類小売業界>
 ビールの仕入は30〜40日サイトの手形払い、または月末現金払いが一般的。個人客を対象にした店売りは現金売りが基本だが、飲み屋をターゲットにする業務売りは手形回収の比率が高く、売上額が大きい代わりに貸し倒れリスクも大きい。

 資金需要が高まるのはお中元とビールシーズン前の仕入が重なる6月と、お歳暮と年末年始前の11月頃。

<●お茶小売業界>
 この業界は年間販売量の8割近くを1番茶から2番茶が出回る4月下旬から7月に集中して仕入れるという特徴がある。仕入金額が少額の場合には現金決済、高額になる大口取引の場合には手形支払いが主流となり、その場合の支払いサイトは約90日。

<●家電小売業>
 メーカー系列店とスーパー、量販店ではメーカーからの仕入条件は異なるが最近では製品のモデルチェンジと値崩れが激しいために買掛期間が1ヶ月間の現金支払いでの仕入というパターンが多い。

 家電業界はメーカーからの報奨金、リベートなどのバックマージンが存在する業界として有名だが、仕入から支払いまでのサイトが短い小売業者ほどバックマージン率を高めてメーカー側の回収サイトを短縮化している。

 この様に同じ小売業でも決済に関わる慣習は少しずつ異なる。新しく商売を始める場合には開業から1、2年は売上が伸びずに苦しい資金繰りを強いられることが予測できるが、それでも耐えられるだけの仕入条件の業界でなければ商売を続けることが難しい。事業プラン作成の段階から、その業界の支払、回収サイトの仕組みを把握しておくことは成功への必要条件といえるだろう。

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