環境問題でインフレが進行する理由とCO2排出権取引
昭和から平成にかけての経済は、消費者の利便性と企業利益の追求によって成長してきたが、令和の時代には、地球滅亡の危機を回避するための環境保全コストを、企業と消費者が分担していく必要がある。そのための仕掛けとして、世界で炭素税の導入が推進されている。
CO2排出量が高い製品に、新たな税金をかけることで、省エネ製品への買い換えを誘導しながら、そこで得た税収を、脱炭素のテクノロジー開発などに投資していくのが、炭素税の目的である。フランス、デンマーク、フィンランドなどの欧州各国では、10年以上前から炭素税を導入しており、ガソリンや軽油の価格に加えられている。たとえばフィンランドでは、現在のガソリン価格が1Lあたり1.79ユーロ(約230円)だが、この中には、付加価値税(消費税)や炭素税を含めて72.6%もの高い税金が含まれている。
炭素税は化石燃料に限らず、あらゆる製品に対してCO2排出量ベースで課税することができる。そのため、コロナ禍による物流の混乱が収まったとしても、化石燃料に依存する製品の価格は上昇傾向が続き、消費者は高い税金を払うか、省エネ製品の新技術に対して高い料金を払うか、という二者択一を迫られることになる。
【高騰する排出量取引相場】
各国の政府がカーボンフリー社会を実現させる仕掛けとしては、排出量取引のマーケットも整備されはじめている。様々な事業活動をCO2排出量ベースで数値化して、環境負荷の大きな会社、小さな会社を識別していくことが、これから義務化されていくカーボン会計の狙いだが、そこで算定された排出量を株式のようにクレジットとして売買できる市場を作ることで、カーボンフリー企業の価値を高めていこうとしている。
逆に、環境負荷の大きな会社は、CO2削減義務を果たせない分のカーボンクレジットをマーケットから購入しなくてはならず、そのコスト分を製品価格に転嫁しなくてはいけなくなる。
CO2排出量取引は欧州の金融先物市場で扱われ始めており、CO2換算1トンあたりの取引単価は、2016年11月には8ユーロ前後だったのが、2021年12月には80ユーロ近くにまで高騰している。カーボンフリー社会を実現させるには、CO2排出量の取引相場を160~180ユーロ辺りにまで引き上げる必要がある、という政府関係者の発言もあり、2022年以降は、排出量取引に関連した投資も活発になることが予測される。
■欧州排出量先物のチャート(investing.com)
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・JNEWS LETTER 2021.12.24
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