高齢社会で成長する遺品整理業のゴミ処理問題と法規制
故人の自宅や持ち物を片付ける遺品整理業は新しい業態であり、サービス内容が現行の法規制に抵触するか否かの判断が難しい面もあり、総務省でも2018~2020年にかけて実態調査を行っている。その報告書によると、遺品整理業の仕事は「遺品の整理と仕分け」「換金可能な家財道具の買い取り」「買い取りできない廃棄物の処理」の3項目で主に構成されている。
ただし、遺品の中で換金可能な物品は意外と少ない。これは、故人の所有物を購入することに抵抗感を抱く消費者が多いためで、大半の遺品はゴミとして廃棄されているのが実態で、ゴミの処分方法によって遺品整理の見積り金額はかなり違ってくる。
遺品整理業者の半数以上は、一般廃棄物収集運搬業の資格を持ってないため、有資格の廃棄業者にゴミの運搬を委託するのが正式な方法だが、裏技として、遺品整理の依頼者をトラックに同乗させて、自治体の処分場まで運ぶ方法も考案されている。多くの自治体では、住民自身が処分場に持ち込んだゴミは安価で受け入れているため、廃棄業者に依頼するよりも安いためである。
具体例として、遺品から出るゴミを有資格の廃棄業者を介して処分する方式の遺品整理料金が46万9,200円であるのに対して、依頼者が同乗して処分場に搬入すると28万3,716円となり、18.5万円を軽減できた実例が、報告書の中で掲載されている。
また、契約上は遺品整理業者が「すべての遺品を買い取る」という形にして、故人宅の片付けを請け負っている例もある。これが法規制に抵触するか否かは判断の分かれるところだが、遺品整理業者がゴミ処理の資格を取得しにくい状況の中では、「社会的に必要なサービス」として黙認されているケースも多い。
このように需要と規制が矛盾している状況から、遺品整理に限定した一般廃棄物収集運搬の許可を出す自治体も出てきている。福岡市はその一例で、遺品整理または引っ越しを請け負った業者が、作業中に出た家庭ゴミの収集運搬ができる限定的な許可を出している。
ゴミ処理ビジネスの中で、許認可の取得は最も重要な項目であり、自治体によって異なる条件を把握した上で、ゴミ回収の資格が得られるチャンスを狙うことが、この市場に参入する上での急所になっている。
■遺品整理、引越時に限定した一般廃棄物収集運搬許可(福岡市)
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