飲食店休業で暴落する高級食材に着目した産直ビジネス
外出自粛により自動車の移動距離が減少したことで、原油相場の暴落が起きているが、こうした状況は高級食材にも当てはまる。日本の農業生産者は、輸入食材よりも高品質を目指すことで付加価値を高めてきたが、そうした高級食材は、ホテルや高級レストランなどの外食産業へ主に出荷されている。しかし、休業する店舗が増えたことで、高級食材の取引相場は大幅に下落している。
国産和牛の卸取引価格をみると、最上級A5ランクの和牛は2019年12月には3100円台で取引されていたのが、2020年4月は1900円台にまで暴落している。価格下落の要因は、外食需要が停滞していること、外国人観光客の激減、さらにゴールデンウィークの需要も見込めないことも挙げられる。牛肉の消費シェアは、家庭消費が3割、外食業界が6割、加工用が1割となっていることから、他の生鮮食品よりもコロナ不況の影響を受けやすい。
また、春の食材である筍(タケノコ)も、例年4月は1キロあたり1200円の卸値で取引されていたが、今年はおよそ半額の500~600円が卸相場になっている。これも、料理店での仕入需要が減少しているためだ。タケノコは旬のシーズンが毎年3月後半~5月GW頃までと短く、収穫しないと竹林を傷めてしまうため売れ残った分は、廃棄するしかない。
さらに、水産物についても、本マグロ、ウニ、ノドグロ、クルマエビ、アオリイカなど、寿司ネタとして使われる高級食材を中心に卸市場での取引量と取引価格は下落している。東京都卸売市場の取引状況をみても、高級水産物の需要は取引量で1~2割、取引金額ベースでは2~4割近く減少している。
ただし、高級食材の低迷は、コロナだけが原因とは言い切れない面もある。ここ数年のスパンでみても、客単価が高い高級レストランや日本料理店は、接待需要や家族連れの来店数が減少しており、外国人観光客のインバウンド需要に依存してきた面がある。そこにコロナが追い打ちをかけている状況で、高級食材の販売手法や流通ルートを変革していくには、ちょうど良いタイミングになるかもしれない。
農産物は、栽培や収穫の手間をかけるほど生産コストは高くなり、販売単価も高額(=高級食材)になる。そのためコロナ渦で外食産業の需要が停滞している時でも、ディスカウント販売するのでは採算が合わず、高い付加価値を維持したまま販売できるルートや手法を構築することが重要になる。
そこで考えられるのは、米国で普及している「Community Supported Agriculture(CSA)」のような、農業生産者と消費者がサブスクリプション型で直接取引できる仕組みを構築することだ。
CSAは、消費者が地域の農家と1年単位の契約で定額料金を払うと、各シーズンに収穫された新鮮な野菜や果物が、定期的に宅配される仕組みだ。米国では、パンデミック以降、CSの申し込みが殺到しており、農家によっては300人以上のウエイティングリストが連なっている状況だ。これは、スーパーでの買い物に不安を感じている消費者から、生鮮品を安定確保できるルートとしての需要が急拡大しているためである。
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