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  欧州農家は、農業を軸としながらも、副業として多角的な事業を上手に展開している。「ワインツーリズム」はワイン農園にリゾート施設を併設することで、観光客を呼び込もうとするプロジェクトとして各地で展開されている。
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農業を起点としたエコツーリズムと
再生エネルギー事業の展開
written in 2012/1/16

 これからの農業モデルは「第6次産業化」が注目されているが、欧州の農家は何十年も前からそれを実現しており、収穫した作物の付加価値を高めることに長けている。代表例といえば、フランスのボルドーやブルゴーニュ地域にみられるようなワインの生産だろう。

フランスワインは「世界で最も価値が高い」と言われるが、それは知名度の問題だけでなく、法律で定められた「原産地呼称制度」により、原料とするブドウの品質管理が徹底されているためである。そのため、新興国から安価に仕入れたブドウを使うようなことも無く、ワインの信頼性が高い水準で保たれている。

現地の畑で厳選されたブドウだけを使う、高級なワイナリーほど生産量は絞り込まれるが、良いワインを作れば、世界の愛好者から人気となって高い単価で購入してもらえるし、買い手が多くて品薄になるほどプレミアが付いて、ワイナリー(生産者)の知名度は高くなる。

《原産地呼称制度によるワインの規定(フランス)》

●その地域で収穫されるブドウだけで100%生産されていること。
●定められているブドウ品種よって生産されていること。
●ブドウ畑の最大収穫量が守られていること。
●ブドウの栽培〜剪定方法が守られていること。
●ワイン醸造〜熟成の方法が守られていること。
●検査機関による試飲審査に合格していること。
───────────────────────
     ↓
●これらの規定をクリアーしたワインだけが「原産地」を明記して販売できる。

こうした農業のやり方は、フランスに限らず、イタリアやスペインなど他の欧州国にもみられる傾向で、ワインの他に、オリーブオイル、チーズなどの品質も高い。それができるのは、もともと農家は地元の名士で、100〜200年も前から、同じ土地で農業をしているケースが多いためだ。今でも農家の信頼は厚くて、自治体や商工会議所からも、地域経済の柱として当てにされている。

しかし、古い時代からの農業を踏襲しているだけでは、いくら地域の有力者とはいえ、現代まで生き延びることはできない。そこで、季節に収穫された作物を、生鮮品として売るだけではなく、ワインやオリーブオイルのような加工品として売るための知恵やノウハウを次第に備えていったのだ。

そして今、欧州の農家が“次の事業”として着手しているのが、「エコツーリズム」「ホテル・レストラン経営」「再生エネルギー事業」「化粧品の製造」などである。

フランスワインの本場、ボルドーやブルゴーニュ地域では、ワイナリーの見学を兼ねた観光ツアーが活発に行われているが、それほど有名ではない地域の農園でも、農園リゾート事業を立ち上げるケースが増えている。

その例として、スペインにも多数のワイン農家(ワイナリー)が存在しており、気候や土壌がブドウ栽培に適していることから、ワインの生産量は、フランス、イタリアに続いて世界第3位という規模だ。しかもフランス産に比べると、リーズナブルな価格であることから、欧州のワイン愛好者からは親しまれている。このワイナリーを、観光地としても集客しようとするのが「ワインツーリズム」の発想だ。

広大な敷地を持つ農園が、屋敷の一部を宿泊施設に改装して観光客を呼び込めば、その地域全体を観光して巡るため、地元の経済が潤うし、農園自体の売上を伸ばすこともできる。



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この記事の核となる項目
 ●欧州の農家に学ぶ第6次産業の理想型
 ●ワインツーリズムに学ぶ農園観光事業
 ●ワインツーリズムによる観光客の集客
 ●農家が手掛ける新商品とエネルギー事業
 ●スペイン農家の事業拡大モデルに学ぶ
 ●日本農家とスペイン農家の共同ビジネス
 ●合弁ビジネスを実現させた不思議な縁
 ●黒ニンニクでEC〜世界市場を狙う
 ●円高ユーロ安を好機と捉えた欧州ビジネスの狙い方
 ●スローライフ志向のエリート客を取り込む持続型レストラン
 ●趣味と実益を兼ねたワイン先物取引に学ぶ食農ビジネス
 ●ヤワな日本人には太刀打ちできない一触即発の食糧危機
 ●世界で拡大するベジタリアン市場と崩壊する日本の食文化
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