|
DVDレンタルから派生した マイカーを持たないライフスタイル |
written in 2009/9/15
いまの20代若者がモノに拘らなくなっている背景には、彼らは産まれた時から各世帯には一通りの日用品や道具が揃っていて「我が家には○○が無いから貧しい」という感覚を抱かずに育ってきたことが影響している。もちろん彼らにも様々な“欲”はあるが、戦後の世代が長らく抱いてきた物欲とは何かが違っている。
それは他の先進国にも共通していて、自動車を所有するのではなくて、乗りたい時にだけ利用することができるカーシェアリングは世界で市場を拡大しているが、最初の火付け役となったのは大学生である。現在の若者は、音楽や映画を楽しむ場合にも、CDやDVDを購入するのではなく、レンタルするという習慣が身に付いており、カーシェアリングについてもそれと同じ発想で受け入れているのだ。
米国の20州で 6500台の車両を保有し、32万人の利用会員を獲得しているカーシェアリング大手の「Zipcars」では、大学生を中心に会員数を伸ばしている。普段の通学は自転車でも、週末のデートにクルマを使いたければ、最寄りのパーキングステーションにある車両の利用予約を、Zipcarのサイトからしておけばよい。当日の予約時間に指定したクルマの窓ガラスに会員カードをかざせばロックが自動解除されて、あとはエンジンをかけてドライブに出かけるだけなので、日本のレンタカーのようにいかにも「いまからクルマを借ります」といった負い目は感じない。
さらに車両の予約状況やパーキングステーションの所在地は、モバイル端末からでも確認することができるため、あたかも自分のガレージにマイカーがあるような感覚でレンタカーを利用することができる。料金についても、1回あたりの予約料が25ドル、1時間あたりの利用料が9ドル〜(ガソリン代込み)の設定になっているため、平均的な利用状況からすると月額 50ドル〜300ドルのコストで済む。マイカーを所有すると、車のローン、保険代、駐車料金、ガソリン代、修理代などで 毎月600ドル以上の費用はみておく必要があるため、「クルマは借りたほうが賢い」という価値観が大学内では広がっているのだ。
それを見習うかのように、企業でも“社用車”を売却して、Zipcarの法人会員になるケースが増えている。現在では 約8,500社が契約しており、その中には大手衣料チェーンの「Gap」や、スポーツ用品メーカーの「Nike」も含まれている。
企業にとってカーシェアリングの導入は、コストの削減と消費者に対する環境アピールの両面で効果があり、わざわざ社用車を所有することの意味は薄れている。
(環境ビジネス・エコビジネス事例集一覧へ)
●DVDレンタル文化とカーシェアリング社会の接点
●電気自動車時代のカーシェアリング・モデル
●ブランドバッグレンタルにみる新たな借り物文化
●ブランドバッグレンタルの仕組みとビジネスモデル
●家を買わずに不動産投資をする方法
●オーナーシップからメンバーシップによるステイタスの変化
●メンバーシップがレンタル業者に示す信用力とは
●理想のエコ社会を実現する個人間カーシェアリングの仲介事業
●交換することで目減りする「お金」の価値と両替ビジネス
●会社経営とは異なるモノとハコから離れたクラブビジネス
●クレジットカードのポイント特典は誰が払っているのか?
●サブプライム問題の裏側にいるクレジットスコアの仕掛け人
●レンタル家具ショップは儲かる商売か?その仕組みと採算
JNEWS LETTER 2009.9.15
※アクセスには正式登録後のID、PASSWORDが必要です。
■この記事に関連したバックナンバー
●"売る"から"貸す"への転換で収益を向上させるレンタル事業
●書店よりも儲かるレンタルコミックサービスの採算性と問題点
●副業として家賃収入を得る大家業の実態と物件管理の業界構造
●労働形態の変化で需要が拡大するSOHOレンタルオフィス市場
●通貨価値が目減りするインフレ時代に伸びる物々交換取引
●不況と環境から生まれた「スワッピング」の新たな価値観
●理想のエコ社会を実現する個人間カーシェアリングの仲介事業
|
|
|
|