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人力自転車を改良・進化させた
エコサイクルビジネスの商機
written in 2009/3/10

 経済を浮揚させる原動力として、いつの時代にも起爆剤となるのが“新しい乗り物”の存在だ。太古の時代から人類の乗り物に対する憧れは強く、新しい乗り物が普及することによって、人の行動や生活スタイルに変化をもたらしてきた。1900年代の経済を支えてきたのはモータリゼーションの波であったが、21世紀は環境重視の社会に適したクリーンで燃料費が安い“次の乗り物”の登場が求められている。

その意味では、環境に優しい新たな乗り物を開発することが、ベンチャービジネスとしても有望。ただしそれには幾つかの障壁を乗り越えなくてはならない。数年前に「セグウェイ」という、立ち乗り型の電動二輪車が話題になったのは覚えているだろうか?ハンドルもブレーキもなく、体重移動だけで操作できて自立安定性に優れていることから、当初は“未来の乗り物”として注目されたが、現在では米国でも街中でほとんど見かけることはなく、警備や倉庫作業などの用途が中心になっている。

セグウエイ(Segway)

セグウェイが広く普及していない要因には、価格が約90万円と自動車並みに高いことや、操作に慣れが必要なことなどがあるが、それに加えて大きいのは、道交法による扱いが難しいことだ。最高時速は19キロと緩やかで、排ガスも出さないクリーンな乗り物だが、ハンドルやブレーキがなく、自動車でもないし自転車でもないことから、米国でも公道を走ることが認められていない州が多い。乗り物として公道を走れないというのはやはり致命的なマイナスである。

ただし、セグウェイが“環境志向の新しい乗り物”としての方向性を世の中に示した貢献度は大きく、それなら公道走行がもともと認められている“自転車”をもっと高性能なエコマシンに改造すれば良いのではないかと考える起業家が多数登場してきたのだ。それが電動自転車の開発へと向かっている。

そもそも「自転車」には2百年以上の歴史があるが、モータリゼーションによって存在の影が薄くなっていた乗り物だ。しかし環境社会の中で Co2排出量を減らす目的から、各国ともに自転車の利用を奨励しはじめている。その仕掛けとして、自転車の電動化が推進されている。ただしあまりにパワーアップした自転車は安全面で問題があることから、どこまでが“自転車”なのかという境界線は各国の法律によって異なっている。

人力で漕げるペダルを備えていていることは世界に共通した自転車の定義だが、人力をアシストするモーターの基準は、欧州(EU)では最大出力が250W、最高速は25Km/h以内であるのに対して、カナダでは最大出力が500W、最高速が32Km/h以下と欧州よりも条件が緩い。さらに米国では各州によって基準が異なっていて、最高速度の制限(時速30Km前後)さえ守れば、モーターは750〜1000Wまでの高出力を認めている州もある。

そして世界最大の電動自転車国となっているのが中国で、市街を走る自転車の4台に1台は電動式というところまで普及している。その背景には、中国でオートバイが急増して、事故や騒音などの社会問題を引き起こしているため、政府がナンバープレートの発行を制限してオートバイの数を減らそうとしていることがある。その引き替えとして、騒音が無くて低速の電気自転車が爆発的に普及してきているのだ。

中国の電気自転車は、モーターが250W、最高速が20Km/h以下に制限されているため人力自転車よりもスピードが出るわけではないが、ペダルを漕がなくてもモーターだけで自走できるのが特徴。普通の自転車が2千〜6千円であるのに対して、電動自転車の価格は2万円前後と、現地の物価としては高価だが、日本の電動自転車が7万円以上することと比べれば非常に安い。そこで日本へ輸出しても売れると考える業者が出てくるのも当然のことで、数年前からインターネットでも販売されるようになったが、これについて警察が「モーターだけで自走できる自転車はミニバイクと同じ」という判断をして、無免許、無許可で乗ることは道交法違反として摘発の動きに出ている。

このように電気自転車という乗り物は、各国の法律によって仕様や運転できる条件が異なっている。これはセグウェイが直面した壁と同じだが、自転車としての体裁が整っている分だけ、それを乗り越えることは容易かもしれない。
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この記事の核となる項目
 ●乗り物ベンチャー、セグウェイはなせ成功しなかったのか
 ●国によって異なる電気自転車の法的な条件
 ●欧米における高付加価値型の自転車ビジネス
 ●日本発、エコサイクルベンチャーの動向
 ●人力自転車を電動型に改造するビジネス
 ●健康・ダイエットマシンとしてのエコサイクル市場
 ●エコサイクルの普及を阻む時代遅れの法律問題
 ●自転車+自動車の共生=新たなエコライフスタイルへ
 ●環境問題が後押しする「あいのり」通勤ビジネスへの商機
 ●現代人が模索する新たなライフスタイル価値観から派生する新市場


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