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昭和の時代から変わらない 廃資源回収ビジネスの業界構造 |
written in 2007/12/9
久方ぶりに人材派遣の事業をする知人のところに電話をすると、いまは副業で自動車の廃バッテリーを回収する事業をしているとのこと。近頃では鉛の相場が高騰していることから、以前は捨てるしかなかった廃バッテリー(鉛蓄電池)にも値が付くにようになり、それを回収することが商売になっているのだ。二人のアルバイトを使って、近隣の自動車整備工場などを巡回すると月に十数トン分のバッテリーを回収することができる。廃バッテリーの買取相場はキロあたり80円前後のため、百数十万円の収入になる。アルバイトの人件費とトラックの経費を差し引いても80万円程度は手元に残る。
これなら会社に勤めているよりも割が良いということで、脱サラをして回収屋になろうか?と考える人もいるのだが、現実はそう甘くはない。廃バッテリーに限らず、資源ゴミの回収業は換金相場によって収入が変動しやすいために、それだけを本業としていたのでは生計を立てにくい。ただし資源化できるゴミには換金価値があることは事実のため、やり方次第では新しいビジネスとして成り立つはずである。
もともとゴミ回収業というと3K(汚い・キツイ・危険)の典型職種で人気が薄いものだったが、いまでは注目の環境ビジネスとして新規大卒の就職希望者も増えているという。その業界構造は昔とそれほど変わっていないのだが、回収の対象となる資源(換金価値のあるゴミ)は広範囲に及んでいる。その背景には新興国からの資源需要が急拡大していることに加えて、各種のリサイクル技術が進化したことにより、以前なら廃棄するしかなかったゴミから、価値のある資源を抽出することが可能になったことがある。
たとえば“レアメタル”と呼ばれる金、白金、パラジウム、ニッケルなどの希少金属は、廃電子機器の中に多く含まれているため、それをどのように抽出してリサイクルするのかが技術者にとって旬の研究テーマになっている。オフィスや一般家庭から廃棄されるパソコンのハードディスクにしても、その中には白金が含まれている。白金=プラチナのことで地金にすると1グラムあたり約5千円の価値になる。これは金の価値よりも高い。
難しいリサイクル技術の話はさておき、廃棄される物の中に換金価値のある素材が含まれていることがわかれば、それを回収することがビジネスとして成り立つ。この業界のおもしろいところは、古紙、廃パソコン、携帯電話など、回収する分野は違っていても同じ業者が関わっているという点である。資源ゴミの回収ビジネスは換金レートによって収入が変わってくるために、同じ業者が相場に応じて回収対象とする分野を乗り換えていくという特徴があるのだ。
そこが純粋な環境貢献型の社会事業とは違うところだが、一つの回収ノウハウを開拓すると、同じ方法で異なる分野の資源回収ビジネスに参入することもできる。ただし気を付けなくてはいけないのは、回収の仕組みに長期的なコストをかけてしまうと、換金相場が崩れた時に撤退のタイミングが遅れて赤字を被ってしまうという点。これを回避するには、できるだけ身軽な体制で資源回収ができる仕組みを構築することだ。それがどのように行われているのか、その業界構造を見ていくことにしよう。
(環境ビジネス・エコビジネス事例集一覧へ)
●昭和に遡る資源回収ビジネスの業界構造
●ゴミの中から資源を掘り起こす集団回収制度の仕組み
●行政がゴミ回収にかけているコストの実態
●新たなリサイクル技術が生み出す資源の再商品化ビジネス
●再生技術でよみがえる廃トナーの商品価値
●電気自動車の時代に向けたバッテリー再生ビジネス
●ベンチャー事業として取り組む資源回収のビジネスモデル
●ポイント報酬制による資源回収ビジネス
●寄付を名目にした携帯電話の回収〜再生ビジネス
●使用済み携帯電話の再販売ルートについて
●町内会と企業とが協業した地域サービスのビジネスモデル
●ブランドエコバッグに群がるグリーンコンシューマーの実態
●独自の回収ルート開拓が鍵となるリサイクルビジネス攻略法
●ゴミを捨てると報酬がもらえるハイテクゴミ箱の開発市場
JNEWS LETTER 2007.12.9
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