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環境問題が後押しする 「あいのり」通勤ビジネスへの商機 |
written in 2007/6/5
テレビで「あいのり」という人気番組がある。若い男女が一台のワゴン車に同乗(相乗り)して旅を続けながら友情や恋愛を深めていくという企画の、あの番組だ。番組の人気に便乗して、旅行会社が“あいのりツアー”なるものを企画しているケースもみられるが、じつは「あいのり」というコンセプトは旅行以外でも最近になって注目されはじめている新規事業のテーマである。
あいのり(相乗りサービス)の目的として、一つには環境に配慮した移動の手段として、一人ずつが一台のクルマを利用するのではなくて、同じ方向や目的地へ共同で移動すれば効率的ではないかというエコビジネスとしての視点だ。ただし相乗りの相手は誰でも構わないということではなく、できれば相性の合う人のほうが好ましいし、一度ではなくて、毎日の相乗り仲間とするならば、そこから友達としての付き合いができるのが理想だろう。
わかりやすい例でいうと、タクシーの相乗りサービスに対する潜在的なニーズは高い。終電のタクシー待ち行列に並ぶたびに、同じ方向の人と相乗りすれば早く帰れるのにと誰でも思っていることだろう。といって自ら「○○方面の人いませんか?」などと声をかけることはなかなかできないものだ。終電時に限らず、相乗りは効率的だし、タクシー会社はバスなど他の交通機関を利用する客を掴むことができる。運送法上ではタクシー会社が相乗りをサービスで提供することはできない代わりに、乗客自らが相乗りしてタクシーを利用することは問題ない。タクシー会社とは関係のない仕切り役がいることで相乗りサービスも成立つということになる。
終電のタクシーばかりでなく、毎朝の通勤に相乗りを利用することも思いつく。渋滞の解消や事故の危険を減らせるし、なによりも車にかかる経費を節約できる。このサービスは全国に広がるに違いない、通勤時以外にももっといろいろな分野に応用できるのではないか──そう思ってビジネスプランを考えた人は一人や二人ではないだろう。身近なサービスだから、もっと早くに実現していてもおかしくないはずだ。だがそれがなかなかできていない理由は、人は“相乗りをすること”に抵抗感を持っているからだ。
通勤でタクシーを相乗りすることは、満員電車でぎゅうぎゅう詰めにされるより遙かに楽なはずなのだが、プライベートな空間に近い中で他人と同席することの心理的な圧迫感は、肉体的な圧迫より強く感じるものだ。人はバスや電車、あるいは飲食店のカウンターで、隣に座る人間(他人)がどうしても気になってしまう。一回わずかな時間だけならまだガマンできるとしても、それが毎日続くとしたら…相乗りすることには経費の節約や環境対策になるなどメリットも大きいとわかっていても、どうしても他人に対して本能的に感じてしまう不安感を拭うことができないでいる。「相乗り」をテーマにして新しい市場を開拓できる可能性はあるのだが、実現するためにはその心理的な問題をどうクリアするかが要となる。
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JNEWS LETTER 2007.6.5
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