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オンライン上の有望商品
「オーダーメイド靴」の売り方
事例研究:太平洋製靴
written in 2000.9.26

 オンラインで最も売りにくい商材の一つに「靴」がある。実際に試着がができないオンライン販売の世界では、デザインの選択に加えて自分の足にピッタリと合うサイズの靴をパソコン画面上から見つけ出すのは難しい。実店舗で購入する場合にも、ジャストフィットする靴を見つけるのには時間がかかることを考えれば仕方のないことではあるが。

 一方、消費者側では「靴」に対する個々の要望と期待が高まっている。外見上のデザイン性を追及する自己表現ニーズに加えて、「第二の心臓」と呼ばれる足の健康面に配慮し『自分の足にピッタリの靴をはきたい』という足のケアにおける需要が拡大している。

 ところが、この「オーダーメイド靴」に関する市場は、実店舗販売においてはほとんど吸収されていない。正確に足のサイズを測定して靴を製作する、という工程は、従来からの(メーカー→卸業者→小売店)という業界構造に適していないのがその原因である。一部、職人型の靴工房の中には、オーダーメイド靴が人気化している店もあるが、価格がかなり高かったり、製作できる数に限りがあったりで、潜在的な市場規模に対して、ほんのわずかの需要しか取り込めていないのが現状。


既存靴業界の構造と動向

 靴における市場は「紳士靴」「婦人靴」「子供靴」「スポーツ靴」に大別され、その中の革靴分野だけでも国内の年間生産量は8000万足、これに加えて海外から輸入される靴が年間約1500万足程度ある。しかし、靴製造業は人手のかかる労働集約型の仕事であるために、国内では中小零細企業を主体とした業界となっていて、人件費の安い海外メーカーとの競争により追い込まれている。

 そのため、大手メーカを除いた中小零細メーカーでは、販売力のある問屋や全国展開する小売チェーンから商品企画や生産量の設定までを管理された上で、生産をおこなう「下請化」されているケースが多い。

  ┌─────────────────────┐
  │     靴製造業者(メーカー)     │
  └─────────────────────┘
     │   │       ↑
     ↓   │       │
  ┌─────┐│       │
  │1次卸業者││       │小売側の商品企画
  └─────┘│       │による靴の製造
     │   │       │ (PB商品化)
     ↓   ↓       │
  ┌───────┐      │
  │ 2次卸業者 │      │
  └───────┘      │
     │   │    ┌──┴───┐
     ↓   ↓    ↓      ↓
  ┌───────┐ ┌───┐ ┌─────┐
  │  靴小売店 │ │量販店│ │チェーン店│
  └───────┘ └───┘ └─────┘

 総務庁の家計調査年報によれば、1世帯あたりの靴の年間消費金額は約2万5000円。その中で売れ筋となっているのは、販売単価4000円程度の低価格帯と、販売単価1万〜1万5000円程度の高価格帯の靴に2極分化されているのが同業界の特徴。


オーダーメイド靴の可能性

 靴の通信販売は雑誌等でも早くから実行されている。しかし『現物が届き、履いてみたところ、どうもピッタリこない』『長時間歩くと痛い』などの不満が後を絶たない。

 しかし通販で靴を購入しようとする顧客ほど『自分の足にあう靴がなかなか見つからない』という悩みを抱えている。実店舗では、一見品揃えが豊富に見えるが、実際に自分の足のサイズに合う(例えば26.5cm)在庫商品はその中の一部に限られ、さらにその中から好みのデザインを選ぶとなれば、購入商品の選択肢はかなり絞られることになる。

 そこで、在庫を抱えることなく、顧客のサイズやニーズに合致したオーダメイド靴をオンライン販売する手法は、靴業界にとってかなり魅力的なビジネスである。しかし大きな壁となっているのが「どのように顧客の足のサイズを測るのか」という問題。現時点では、遠隔にいる顧客の足型を短時間でスマートに測定する完全な手法は確立されていないものの、独自の方法により挑戦しているオンラインショップは各地に存在している。


足型をトレースする

 通常の来店によるオーダーでは、計測器にて足の測定、診断がなされる。一方、ネット上で靴のオーダーメイドショップを運営しているサイトでは、顧客に自分の足の輪郭を紙にトレースしてもらっているところが多い。紙の上に足を置き鉛筆等で周囲をなぞってゆく。さらに指の付け根部分と甲の部分の周囲を測る。採寸後、足型情報を記載した紙を郵送にてショップ側に送る。原始的ではあるが現在のところ、このセルフ計測方法が世界的にもネット上では主流だ。

<●各サイトの足形トレース法>

オーダーワールドのオーダーシューズ
※好みのデザインがあれば、写真、カタログ等を送ることで多種多様なスタイルに対応が可能。
Fernand Footwear(米国)
COCO SHOP


スポンジで足型を採る

 足の裏にかかる重力が一部に集中すると足が疲れやすいといわれる。土踏まずのカーブ等が靴のインナーソールとフィットしていないことが原因だ。この問題を解決するために、太平洋製靴(神戸市長田区)のオンラインショップ“フット・フィッター”では、顧客の足形状にあった中敷きまでをカスタマイズしたオーダーメイド靴を製造販売している。

フット・フィッター(太平洋製靴)

 顧客が注文をすると、2〜3日後にインプレッションフォームと呼ばれる足型採取器とバンド付きの計測ツールが送られてくる。両足用の二つの箱には、押すとへこむスポンジが詰まっており、足をその上に載せ踏み込む。両足の型採取が終わったら計測バンドにて足囲(親指と小指の付け根の出っ張り部分の周囲と甲の高い部分の周囲)を計測し、それらを返送する。スポンジの凹凸具合や計測バンドの記録から注文者の立体的な足のサイズを確認して、カスタマイズされた靴が製造される。

足型の採取方法について

 完成した靴が顧客に届けられた後、足にフィットしない場合には何回でも無料にて作り直してもらえる。アフターフォローも万全だ。婦人用には完成前の仮縫い後、実際に履いて試すことが可能。違和感があれば修正してもらえる。価格は紳士用で19,000円、婦人用で25,000円と平均的な市販靴の価格の2倍程度となっている。

 靴のデザインは紳士用が「ひも靴タイプ」「モンクタイプ」の2種類、女性用が「ローファータイプ」「リボンタイプ」「プレーンタイプ」の3種類の中から選択できるようになっている。ただし、通常の店舗と比較すると品揃えは少なく、万人受けするデザインとカラーのみの扱いとなっているのが惜しい。

 サイト内には「お客様の声」というコーナーが設置されており、実際に購入したユーザーの感想が、「感謝のお言葉」と「苦情のお言葉」とのふたつに分けて掲載されている。苦情では「サイズが合わない」との不満が多く見受けられるが、何度でも合うまで修正するシューズフィッターの努力の姿勢もコメントから読み取れる。顧客からのきびしい批判をも公開することで、逆に店の信頼を高めているようだ。

感謝の声
苦情の声


高級志向層をつかむ職人技の靴

 デザインや品質を重視した高級志向のオーダメイド靴を製造販売しているサイトとしては「ユニバーサルシューズ栗山」がある。商品は男性用のエクゼクティブや富裕層に焦点を当てた設定で、「できるビジネスマンは必ず靴を選ぶ」と靴による自己イメージアップを訴え、14種の風格ただようデザインを揃える。

 価格は、使用する革によって「牛革」40,000円〜、「トカゲ」80,000円〜、「オーストリッチ」170,000円〜、「クロコ」220,000円〜と、かなり高額ではあるが、靴作り職人の作業工程についてのていねいな説明と写真を掲載することで、高い技術と品質に裏付けされた商品作りのポリシーをうまく伝えている。

 また、市販の靴が履けない人々や外反母趾で特製の靴が必要なユーザーに向けて、リハビリ用の靴も製作する。履きやすい形でマジックテープを使用し、履く際の手間がかからないよう設計されていて、価格は30,000円から。

ユニバーサルシューズ栗山
靴製作工程の説明ページ


オーダーメイド靴の課題と着目点

 数多くのオーダーメイド靴販売サイトをチェックしてみても、現状ではそれぞれに一長一短がある。優劣を決めるポイントとなるのは「手軽かつ正確な足サイズの測定方法」「価格の安さ」「デザインの豊富さ」という3点だ。

 オーダーメイド靴はもともと手間のかかる商品だけに、これを高級既製靴の売れ筋価格である1万数千円台にまで価格を抑えるには、靴のデザインを絞り込んだ上で、各製作工程の効率化、機械化することが不可欠となる。しかし、これでは品質は優れていてもデザインに満足できないという顧客も現れるのが悩めるところ。

 当面は、商品設定のコンセプトを「価格が高くてもデザインにこだわる高級派ユーザー」と「健康志向が強く、安いオーダーメイド靴を求めるユーザー」の2種類向けに分けて、それぞれの深い顧客ネットワークを形成することが大切。一度、顧客のサイズにジャストフィットした商品を作ることができれば、その後の固定客化率が極めて高いことは、他のオーダーメイド商品を手掛けるオンラインショップの傾向からも明らかである。早い段階でネット上の顧客網を形成して、ショップの知名度を高める努力(ブランディング)をすれば、一気に市場を制覇できる可能性もある。

 ただし、「オーダメイド靴」が最終的にネット上で勝つための要素は、販売機能(コマース機能)よりも商品力であることは言うまでもない。オーダメイド靴は既存の靴流通業者が対応できる範疇を超えた商品であるために、細かな仕事を最も得意とする中小メーカーの直販サイトが活躍できる新たなステージとなるだろう。


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これは正式会員向けJNEWS LETTER 2000年9月26日号に掲載された記事のサンプルです。 JNEWSでは、電子メールを媒体としたニューズレター(JNEWS LETTER)での有料(個人:月額500円、法人:月額1名300円)による情報提供をメインの活動としています。JNEWSが発信する情報を深く知りたい人のために2週間の無料お試し登録を用意していますので下のフォームからお申し込みください。
 
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