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ネットによって近代化する質屋業界が展開する 中古ビジネス
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事例:サンヤ価格破壊ネット
written in 2003.6.1
ネットオークションの普及によって個人間の中古品取引は大幅に増えた。欲しい商品を購入する際には、新品だけでなく中古品も選択対象とすることに消費者はあまり抵抗がなくなりつつある。新品と違い、中古品は品質と価格がすべて異なるために、自分が求めている商品を探す楽しさは、新品を購入する時よりも上回る。オンライン上における中古品の取引は、今後も大きな成長が期待されている分野だ。
しかしネットオークションの中で盗品やブランド品の偽物が取引されるといった問題も浮上してきている。不正な方法で仕入れた商品をさばいて現金化する手段として、ネットーオークションは格好の市場となっている。警察庁の発表によれば、ネットオークションに出品されている品物が盗品であることが発覚、処分された事犯は過去3年間で11,246件になる。それ以外でも発覚しない盗品取引が水面下では多数あることを考慮すれば、ネットオークションにも規制をかける時期が差し掛かっている。
平成14年11月には古物営業法が一部改正された。その中では取引相手を確認する方法の徹底や、盗品の疑いのある商品がオークションに出品さている場合には、警察がオークションの中止を命ずることができる旨が盛り込まれている。
■古物営業法の一部改正について(警察庁)
現在のところは個人と業者とが入り乱れてネットオークション市場が形成されているが、高額の中古品を購入するとなれば、売り手が信頼できる相手であることを確かめることも重要になってくる。そんな理由から「質屋」のオンライン販売サイトに対する人気が高まっている。素性のわからない匿名の個人から高額な中古ブランド品などを購入するよりも、確かな鑑定能力を持つ質屋から購入したほうが安心というわけだ。
質屋業界とインターネットとの相性
質屋は庶民相手の金融業者として日本では700年以上の歴史がある。昭和30年代には全国で2万店以上の質屋が存在していたが、現在では約4700店舗へと減少している。減少の理由としては後継者不足もあるが、消費者金融業者の台頭が大きいと言われている。たしかに無人契約機に行けばコンビニ感覚で現金を借りられる現代に、質屋には“時代遅れ”の印象がある。
しかし高金利で融資をする消費者金融と、顧客が持ち込んだ品物を質草(担保)に低い金利でお金を貸す質屋では、本来の用途や客層は異なるものである。質屋であれば、借りたお金を返済しなくても質草があるために、取り立てにあうことはない。最近では質草を入れて「お金を借りる」のではなく、不要な品物を質屋に買い取ってもらう形で現金を調達する人が増えている。今でも質屋に対して根強い需要があるのも事実だ。
ならば質屋が全国的に減少している理由は何かといえば、この業界が近代化への努力を怠ってきたことによるものが大きい。高額ブランド品の主な購入層となる若い女性達が“利用しにくい”という印象を抱くような昔ながらの質屋は、時代の流れに乗ることができずに閉店へと追いやられてしまう。
一方、新しい経営センスで若者層の利用を促している近代的な質屋であれば、今は順調に業績を伸ばすことができる時代である。ネットオークションは質屋にとって競合的な存在ともいえるが、中古品の価値を見極めることができるプロの鑑定眼を武器にすれば、ネット上における中古品取引の増加は、むしろ追い風になる。その先行事例として、今回は東京立川に店舗を構えるサンヤ質店(有限会社ペグノ)のオンライン戦略に迫ってみたい。
■サンヤ価格破壊ネット(有限会社ペグノ)
新しい視点で業界を変えるサンヤ質屋
サンヤ質店の歴史は、昭和24年に東京都大田区大森に「質屋ペグノ」を開業したことから始まる。立川に出店したのは平成4年のことで、平成11年にはレディース商品販売専門の「レディース館」も開店させている。
同社の特徴は「他店よりも高い買い取り価格」にある。立地条件の良い店舗で「高く確実に買い取る」ことを営業方針とすることで、顧客からの買い取り依頼はとても多く、買取り額が販売額を毎月1千万円程度は上回るほどであった。普通の質屋は、買い取り・在庫不足に悩むものだがサンヤでは買取過多という特殊な状況にあったのだ。
そこで同社では商圏を広げることを目的として、EC事業部を設立、平成13年12月に「サンヤ価格破壊ネット」を立ち上げた。サイト上での売上高は2002年4月〜2003年3月までの1年間で1億2000万円の規模にまで達している。会社全体の年商が8億4000万円であることから判断しても、サイト開設からわずか1年あまりでEC事業部は、会社の新しい柱として成長したことがわかる。同サイトがユーザーから支持される理由は、買取価格と販売価格の両方を魅力的な設定にしている点にある。当然ながら利益率は落ちるが、利用者が増えることで商品を高回転させることができるため、商売として成り立つのだ。
同業他社と人気ブランド商品の買取価格を比較した場合には、サンヤのほうが2割程度高い。そのため店頭には、一般の顧客に混じって他の質屋の店員が商品を売りに来ることもあるという。
《従来質屋の価格設定》

《サンヤ質店の価格設定》

※サンヤ質店が高い商品回転率を維持できる理由は立地条件の良い実店舗と、優れたオンライン販売のノウハウにある。
在庫商品をデータベース化したオンライン販売
サンヤ質店がEC事業を展開する上でまず取り組んだのが、それまでは台帳で管理されていた買取在庫をデータベース管理へと移行することだった。これによって実店舗内にある在庫はすべてリアルタイムでwebサイト上にも掲載されて、オンラインユーザーが購入できる仕組みになっている。掲載商品は常時2千点以上に保たれていて、ユーザーが目的の商品を簡単に見付けられるように、商品分類別、ブランド別、メンズ・レディス別、価格別などに絞り込んで探せる商品検索機能も設置されている。
このようにwebサイトと連動した商品管理のデータベースを構築する際には、システム会社に開発を依頼するのが一般的だが、同社ではエンジニアを雇い入れて自社内で開発を進めている。そのため質屋のリアルな業務をオンライン化する上で、専門的で高機能かつ、使い勝手のよいシステムを作り上げている。一方、webのハード環境についてはレンタルサーバーを利用するなど、EC事業にかける資金の使い方が上手い。
他の質屋でもオンラインショップを立ち上げるケースは増えているが、大半は店舗販売が中心で、サイトは店舗業務の片手間に運営しているという形態である。対して、サンヤ質店ではネットを重要な販売チャネルと位置付けて、EC事業部を独立した組織として「サンヤ価格破壊ネット」の運営にあたっている。
EC事業部のスタッフは現在、正社員3名とアルバイトスタッフ18名という体制。スタッフの中にはネットベンチャー企業で腕を磨いた人材も起用して、プロモーション、リサーチ、ページ制作、カスタマーサポート、システム開発などのチームを組んでいる。
オンライン質屋の売れ筋商品と客層
サンヤ価格破壊ネットにおける人気・売れ筋商品は高級時計とルイ・ヴィトン製品で、全体売上の大きなウエイトを占めている。昨年度の実績では、高級時計が売上高全体の40.6%、ルイ・ヴィトン製品が34.8%という構成。最近発売されたルイ・ヴィトンのマルチカラーシリーズなどは、サイトに掲載して数時間で注文が入るなど、世間ではプレミア価格で取引されているような限定品の人気が高い。
同サイトの顧客層は20〜30歳代が多く、男女比率は(2:3)となっている。実店舗の顧客層と比較するとブランド初心者が多いのが特徴で、平均購入単価はおよそ6万円。実店舗では30〜40歳代の利用が中心で男女比率は(1:5)と、ブランドを熟知した女性の常連客が多い。この傾向から、ブランド初心者が質屋を利用するにあたっては、実店舗よりもオンラインショップのほうが敷居が低いことがわかる。
なお同サイトでは中古品だけでなく新品の販売もディスカウント価格でおこなっている。ブランドによっては、メーカーの社販価格よりも安く販売されているが、これらの商品は海外から独自ルートで仕入れてきたものだ。サイト上における中古品と新品との販売比率は(7:3)となっている。
オンラインによる買取方法
サンヤ価格破壊ネットでは「オンライン販売」だけでなく「オンライン買取り」もおこなっている。買取希望者は見積依頼のページで必要事項(氏名、住所、商品の型番や程度等)を入力・送信する。すると24時間以内に、おおよその買取査定額がメールで返信されてくる。その見積金額に納得すれば、サイト上にある「買取申込書」をプリントアウトして手書きで記入、住民票の原本と身分証明書(運転免許証、パスポート、健康保険証など)のコピーと共に、商品をサンヤ宛に発送する。
サンヤ側では、届いた商品を実際に鑑定した後に、具体的な買取価格をメールで通知、その価格に顧客が納得すれば取引は成立する。買取価格に満足できない場合には、商品は顧客宛に返送される仕組みだ。

■オンライン買取の流れ
買取りが成立するまでの過程で、住民票と身分証明書の両方を提出してもらうのは、先に説明した古物営業法改正により、本人確認を以前より徹底しているためである。
現在のところオンラインによる買取りの比率は、買取り全体額の5%程度で、主力の仕入れルートは実店舗における買い取りとなっている。オンラインでの売上が伸びるペースにあわせて仕入れる商品(買取り商品)も増やしていかなくてはならないため、独自の買取ルートを開拓していくことが、中古ビジネスではとても重要だ。
同業者の中には、業者間で開催されている売買市場で大半の商品を仕入れているケースも多いが、これでは人気商品がなかなか手に入らないために、やはり一般の顧客から良い商品を買い取ることが、他店との差別化の意味でも大切である。
そのためサンヤ質店では、実店舗での買取り量を増やすために、商圏全域におけるチラシ配布や広告バスを走らせるなど、買取りのための宣伝広告を積極的におこなっている。中古品を扱う商売では、仕入れた商品の品質がばらつきがちになるのが欠点だが、同社では修理専門の職人を雇い、メインテナンスをした後に、半年間の無料保証を付けて販売している点も人気の理由といえるだろう。
メルマガを核としたオンライン販売戦略
同サイトが短期間で年商1億円超の規模にまで成長させてきた主力の販促手法となっているのは、やはりメールマガジンである。週1回のペースで配信される「サンヤ価格破壊通信」の読者登録数は約5万人。読者獲得のために、人気商品を集めたプレゼント企画を毎月実施している。
プレゼント企画による読者獲得は、継続的にメルマガ精読率を高く維持する点で問題が生じることも多い。そこで同社ではメルマガ戦略を「新規読者獲得」と「継続的な読者の維持」の二系統に分けて考える。後者における具体策としてメルマガ制作のみを担当する専任スタッフを置いて、毎号のコンテンツ内容には工夫を凝らす。特にメルマガ限定のプレゼント企画や、メルマガ限定の割引企画などは、読者から好評を得ている。
そして配信後にはメルマガ内で紹介した商品 URLのクリック率とメルマガ解除率を算出し、読者の反響を具体的な数値として確かめることも忘れない。同メルマガのクリック率は5〜7%、解除率は 1.3%(2003年4月時点)という水準で、この数値変動を時系列で追いかけていけば、メルマガ各号における読者の支持率を把握することができるわけだ。
■サンヤ価格破壊通信(バックナンバー)
《アフィリエイトとアドワード広告による販促戦略》
同サイトにおけるその他の販促戦略として、成功報酬型で販売提携サイトを作るアフィリエイトとGoogleのアドワーズ広告も、売上全体の中で大きなウエイトを占めている。アフィリエイトプログラムの機能と加盟店募集は「トラフィックゲート」のシステムを利用しているが、提携サイト経由での売上は全体の25%。またGoogleのアドワーズ広告には月14万円の広告費をかけているが、アドワーズ経由の売上は全体の15%となっている。
中古ビジネスの老舗的存在といえる質屋業界には「プロの鑑定眼」という一朝一夕には身につけられないリアルなノウハウがある。その鑑定能力に信頼を寄せて、オークションではなく質屋のオンラインショプで高級中古品を購入するユーザー層も少なくないことをサンヤ質店の事例は示している。同社の買取りを担当する店長は、毎日長時間の査定を続けるあまり、左目の視力が 0.8に対して、ルーペを使う右目の視力は 0.1に落ちてしまったというエピソードを持つ。確かな鑑定能力に裏付けされた質屋の商売を、インターネットによって近代化させることで、オークションとは一線を画した品質重視の中古ビジネスを展開していくことができる。
■JNEWS LETTER関連情報
JNEWS LETTER 2003.4.17
<鑑定能力を武器にしたリサイクルブティックの中古委託販売>
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これは正式会員向けJNEWS LETTER 2003年6月1日号に掲載された記事のサンプルです。 JNEWSでは、電子メールを媒体としたニューズレター(JNEWS LETTER)での有料(個人:月額500円、法人:月額1名300円)による情報提供をメインの活動としています。JNEWSが発信する情報を深く知りたい人のために2週間の無料お試し登録を用意していますので下のフォームからお申し込みください。
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