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こんにゃく業者が生み出した
人気ダイエット食品の開発秘話
事例:ダイエットの花道
written in 2003.8.6

 テレビ業界では健康やダイエットをテーマにした番組が視聴率を稼いでいる。
深夜の通販番組でもフィットネス機器やサプリメントが扱われているのをよく見かける。現代人が健康の維持、健康体質への改善のために惜しまない傾向が顕著に伸びているのがよくわかる。

そこで新規事業として健康食品分野へ参入する会社は多く、既に様々な商品が広く販売されている。いずれも価格は比較的高めに設定されていているが、テレビや雑誌などの健康特集で紹介されると注文が殺到するという。

一方、従来の食品業界といえば大型ストアーによる値引き販売や海外からの輸入品によって苦戦が強いられている。売上高、利益率共にジリ貧していく方向にあるために、食品本来の品質にプラスアルファする形で何らかの付加価値を与えていかないと生き残ることが難しい。そこで大手の食品メーカーでは“健康”や“ダイエット”をキーワードにした商品開発に力を入れはじめているが、中小の食品業者の中でもいち早くその路線に着目して、ダイエット志向の高い人達に対して魅力的な商材を販売することに成功している事例がある。

有限会社ウエダ食品(大阪府守口市)が販売する「痩身麺」は“こんにゃく”を主原料としたラーメンだが、麺のカロリーがたった15.4kcalというヘルシーさが受けて人気となっている。今年6月には読売テレビの番組で「とっても美味しいダイエット食品」として紹介されるなど、その評判は急上昇している。

この“痩身麺”を仕掛ける「ウエダ食品」は、こんにゃくの卸業務を本業とする従業員5名の家族経営による会社だが、ダイエットに着目したオリジナル商品を企画から販売まで手掛けてきた経緯には興味深い逸話がある。


こんにゃく卸業の道をゼロから開拓

 ウエダ食品を経営する上田武雄氏は昭和20年生まれの現在58歳。昭和52年(当時32歳)に創業をして以来、こんにゃく業界に関わって25年以上になる。それまでは紳士服販売の会社に勤めていたが、紳士服の業界は好不景気の波に影響されやすいという欠点があることから、手堅い安定需要が見込める食品分野を独立の道として選んだ。食品の中でも“こんにゃく”は粗利益率が高く、製造メーカーもほとんどが零細業者という特徴がある。

創業当時“こんにゃく”という商材は、家族経営による零細製造業者が豆腐屋などを販路に地元の商圏で販売しているのが一般的であった。そこで上田氏は当時はまだ先例のなかった「こんにゃくの卸業」をスタートさせた。こんにゃく製造業者の多くは零細であるために自らが販路を開拓する力がない。折しも昭和50年代というのは食品の販売形態が“八百屋”から“スーパーマーケット”へと切り替わり、食品の流通構造が大きく変化していった時代である。

上田氏は、四国、山陰、近畿、東海地方のこんにゃく製造業者を回り、大阪エリアの商圏で商品を販売することを提案した。それまで地方のこんにゃく業者は地元のみが主な販路であったために販売量は小さな規模に限られてしまうのが悩みだった。そこでウエダ食品が大阪商圏への販路開拓を支援することでビジネスが成立するようになる。上田氏のこんにゃく卸売業は、当時の成長産業であったスーパーマーケットが求める商品仕入れのニーズとマッチした形となった。

卸売り業というと小売店からの注文を単純に取り次いでメーカーから商品を調達するだけの仕事と捉えがちだが、製造業者の販路を支援、開拓するところに、上田氏が目指す卸売り業の形がある。現在では18社の地方こんにゃく製造業者と取引関係を築き、大阪府内の約 100件のスーパーマーケットなどに商品を卸している。


スーパーマーケットの衰退で着目したダイエット市場

 ウエダ食品の本業はいまでも「一般的なこんにゃく製品の卸販売」であることに変わりはないが、これまで主要な販売ルートとしてきた食品スーパーでは98年頃から業況の雲行きが怪しくなりはじめている。大型ストアーの乱立によって商品の安売りが増えて粗利益は減少してきている。このままの商売を続けているだけでは、自社も製造業者もジリ貧に陥ってしまうという考えから、新たな市場(販路)としてインターネット通販に着目した。

初めてオンラインショップを立ち上げたのは1999年9月のこと。当初は一般的なこんにゃく製品をネットで販売してみたが「全然売れなかった」という。そこで試行錯誤しているうちに、こんにゃく製品はカロリーがほとんどなく、カルシウムの吸収効果も高いことから「ダイエット」という視点にフォーカスすれば売れるという感触が掴めるようになってきた。

ちょうどその頃は、消費者の健康に対する意識が高まりはじめた時期と重なる。
高い健康食品を購入し、無理なダイエットで体調を崩す人も増えていたことから、自然で安全性の高い“こんにゃく”をたくさんの人に食べてもらいたいという思いもあって「ダイエットの花道」というサイトをオープンさせた。

ダイエットの花道


製造業者との連携で生み出された痩身麺

 そうは言っても「こんにゃく」と「ダイエット」との直接的な関連は薄い。いまでこそダイエット食品として“こんにゃく”は認知されつつあるが、ほんの数年前までは、こんにゃくが低カロリー食品であることすら広くは知られていなかった。

そこでウエダ食品では、製造業者と協力して3年がかりで同社オリジナルのこんにゃくラーメン「痩身麺」の開発をおこなってきた。この商品は、ラーメンの麺と同じ食感をこんにゃくで再現したもので、初めて食べた人はこの麺が“こんにゃく”とは気付かないほど本物のラーメンと似ている。購入者からは「うまい」という口コミが広がっている。しかも痩身麺のカロリーは麺のみ(220グラム)で 15.4kcal、スープ(みそ味)まですべて飲んでも 85.7kcalと極めて低カロリーに抑えられているのが特徴。(※普通のインスタントラーメンは約450kcal)

しかし痩身麺を開発するにあたっては様々な苦労があった。こんにゃくには独特の臭いがあるため、それを消すための研究をしたり、こんにゃくに含まれる雑菌によって日持ちがしない問題を解決して常温保存を可能にするなど、試行錯誤をしながらの開発、改善は長期にわたって繰り返されている。

痩身麺は開発当初からインターネットで販売されたが、最初の1年半は売れない期間が続いた。しかし商品の改良や消費者の市場ニーズを掴むことによって2年が過ぎたあたりから好調に売れはじめるようになった。一度勢いが付き始めると、口コミが連鎖して注文が増えていくのがダイエット市場の特徴である。

いまでは“こんにゃくラーメン”の類似品もいくつか登場しているが、「痩身麺」に関するレシピや商標の権利はウエダ食品がすべて所有するオリジナル商品である。それを以前から取引のあるこんにゃく業者に製造委託する形で痩身麺は生産されている。

痩身麺(1食220g:300円)
 ・みそ味………… 85.7kcal(麺 15.4kcal、たれ 70.3kcal)
 ・とんこつ味……107.8kcal(麺 15.4kcal、たれ 92.4kcal)


小規模だから実現できるオリジナル商品の開発

 すべてのオンラインショップにとって優れたオリジナル商品を持つことは今後の重要な課題だ。誰もが仕入れることが可能な既製品の販売だけでは、どうしても競合店が増えて商品の値崩れが起こってしまうためだ。そうなる前に「自店のみでしか買えない独自の商品」を持つことが必要になる。

しかしオリジナル商品を持つ(開発する)ことは資金力のある大手ストアーでもない限り難しいと考えがちだ。ところがウエダ食品のように小さな業者ほどオリジナル商品は開発しやすいと上田氏は説明する。

大手のストアーでは、もともとの販売量が大きいためにオリジナル商品(PB商品)を企画〜販売するには、大量ロットの商品を発注(製造委託)しなくてはならない。ただし本当にその商品が売れるかは、実際に商品が完成して売り場に並べてみるまではわからない。読みが外れて売れなければ損失は億単位になる。

一方、売上の規模が小さなオンラインショップであれば、製造委託型によってオリジナル商品を開発したとしても、最初の生産ロットは数十万から多くても数百万円規模に抑えながら、実際の売れ行きに応じて徐々にロットを増やしていくことができる。この方法なら常にそれほど大きなリスクを抱えることはない。

ウエダ食品の場合では、オリジナル商品の開発以前から、製造業者達と二十年来の付き合いがあるために、わがままを言いながらこだわりの強い商品開発を進めていく信頼関係が出来上がっていた。製造業者側としても、従来の製品だけを普通に作っていただけでは生き残りが難しいと自覚しているため、上田氏のように商品企画力のあるパートナーとの共同開発には前向きだ。

《製造拠点の分散化により生産能力を広げる》

 ウエダ食品では痩身麺の製造委託先を一つの製造業者に絞り込むのではなく、これまでの付き合いが深い複数の製造業者に分散させる体制を敷いている。これは各製造業者の生産能力を考慮した対策である。

オリジナル商品を扱うにあたっては「売れすぎる」こともリスクにつながる。特に製造委託された業者側では、生産量を増やすための設備投資には大きなリスクが伴う。商品の人気化に伴い大型の設備を導入したものの、ブームが去って受注量が急減して経営を悪化させてしまうというのはよくある話だ。

そのリスク対策として製造委託先の業者を複数に分散化させれば、1社あたりの生産量(取引額)は少ないものの、各製造先では現在の生産能力の範囲内で常に無理のない受注量をこなすことができる。痩身麺全体の販売量が増えた場合には、そのペースに合わせて製造委託先の業者数を増やすことで、何万食分もの生産にも対応できるという。

またオンラインショップを主な販路とすれば、消費者からの反応、売れ行き状況の変化をダイレクトに確認することができるために、販売量の予測と生産量とを大幅に読み違えるリスクも小さい。

《痩身麺の企画から販売までの流れ》


商品の販路開拓と商品寿命の関係

「ダイエットの花道」における現在の売上状況は月商350〜400万円の水準で、月間800〜900件の注文がある。平均客単価は約 5,000円でリピート率は40%、アクセス数に対する注文率は総じて高い。実店舗(スーパー等)と比較してオンライン顧客は、商品を箱買い(まとめ買い)する傾向が強いという。

これら一般向け販売(B2C)の他に、痩身麺のヒットを受けて「自分の店でも販売させてほしい」という業者取引(B2B)の依頼がウエダ食品には殺到している。依頼してくるのは新しい人気商品を探している食品業者の他に、大手百貨店、カタログ通販会社、テレビ通販会社など多方面にわたっている。

しかし上田氏はこれらのオファーをすべて受け入れるわけではない。依頼してくる会社の担当者にまず伝えるのは意外にも「そんなに簡単には売れませんよ」という厳しい言葉だ。これは上田氏自らがオンライン上で“売れない苦労”を経験し、それを乗り越えてきたからこそ言える言葉で、その本意を理解できない会社に対して商品を卸すことはない。

ダイエット食品を成功させるためには、「良い商品を作る」だけでは駄目で、そこに質の高いダイエッター向けの情報提供や顧客対応をするノウハウがなければ顧客は購入までに至らない。ダイエットに関してそこまで深い知識を持たない業者を販売代理店として販路を広げてしまうと、仕入れた商品をダンピングをして売りさばこうとする方向へと行くため“商品が壊れてしまう”のだと上田氏は指摘する。

これまでにも数多くのダイエット食品がテレビ等のメディアで取り上げられ、一時的にブームとして祭り上げられてきたが、人気はアッという間に冷めて消えていった商品の事例には枚挙にいとまがない。

《新たな販路開拓〜次の新商品開発へ》

痩身麺についてもテレビで紹介された後には注文が殺到して、約1週間で2ヶ月分以上の売上を稼げるが、ブームだけで飛びついてきた顧客は離れていくのも早く、リピーターとして残る確率は少ない。一方、メールマガジン「ダイハナマガジン(読者数1万2千人)では、爆発的に読者数が伸びることはなくても、定期的な情報提供を続けることで、リピーターからの底堅い注文が継続的に入ってくるという。

手塩にかけて開発したオリジナル商品を成功へと導くためには、マスメディアへの露出も大切だが、意識的に「早すぎる大ブレイク」を避けることも大切になる。商品の人気化によって一気呵成に大儲けを狙おうとすれば、販路を広げすぎてそれがダンピングへとつながっていく。また短期で大量販売しようとする戦略は、商品の生産面でも大きなリスクを抱えることになる。

上田氏は地道で着実な痩身麺の販売戦略を描く。今後はオンラインショップ上での直売に加えて、数多くオファーのある業者の中から信頼できるパートナーを何社か厳選して、テレビ通販や百貨店へと販路も広げていく話が進行している。もちろん“商品を壊さない”“商品寿命を縮めない”売り方のできることが新しい販路の条件だ。しかし痩身麺が世の中に広く認知されるに従って、他社から類似品が投入されるのも当然の流れとして予測している。痩身麺の売上がピークに達する頃には、新たなオリジナル商品の販売が同社のサイト上ではスタートしていることだろう。

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これは正式会員向けJNEWS LETTER 2003年8月6日号に掲載された記事のサンプルです。 JNEWSでは、電子メールを媒体としたニューズレター(JNEWS LETTER)での有料(個人:月額500円、法人:月額1名300円)による情報提供をメインの活動としています。JNEWSが発信する情報を深く知りたい人のために2週間の無料お試し登録を用意していますので下のフォームからお申し込みください。
 
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