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NPOと企業の協業がもたらす 社会貢献型ビジネスの視点
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事例:e-kids
written in 2002.8.21
NPO(特定非営利法人)と行政とのパートナーシップは軌道に乗りつつあるが、企業との連携はほとんど未開拓といってもいいほどだ。NPOは非営利、企業は営利追求ということで、非営利の行政とのパートナーシップでは双方にメリットが期待できるが、企業とは対立するだけでメリットはないという先入観が根強い。
しかし既に欧米ではNPOと企業との連携が進んでいる。企業にとってもNPOとパートナーシップを組むことによって実現できる事業は幅広い。これからの企業は、NPOとのパートナーシップを結ぶことで、そこから生じるメリットを生かすことが重要と考えらるようになった。
ビジネスの視点からみれば、NPOはより消費者側の立場にいて、企業が直接入り込みにくい地域や領域が持つニーズを把握し活動に結びつけている。そこで企業が社会性が強調される分野の事業に参入する際には、NPOとの連携を通じて新市場、販路の開拓を期待することもできそうだ。
新メディアをテーマにしたNPO
日本でのNPOに対するイメージは福祉サービスや市民運動的なものが強く、その活動内容に企業との接点が少ない場合、企業とNPOとの連携は容易とはいえないが、企業が展開する事業と共通するテーマを扱っているNPOならば、企業側へと積極的に働きかけることもできる。
大阪を活動の拠点としているNPO法人「子どものメディアを考える会“e-kids”」では、子供とメディアとの関わりをテーマにして、IT活用を積極的に取り入れた活動を展開している。特に、IT企業との連携によって、子供や幼稚園向けにデジタルメディアを活用した様々な活動を展開している点に注目しておきたい。
■子どものメディアを考える会「e-kids」(大阪・1999年8月17日設立)
代表の松田総平氏は、1990年よりコンピュータの遊具としての可能性を、モンテッソーリ教具等の古典的遊具との比較や保育環境、インタフェースの視点から研究、子ども向けデジタルメディアクラブ「e-kids club」や園舎を持たない幼稚
園「もりのようちえん」を実施していた。この松田氏の活動と、1998年より母親へのメディア利用を提案する活動を行ってきた「マウスハウス」(有限会社メディアデザインがサポート)とが接点を見いだし、NPO法人として発足したという経緯を持つ。
e-kidsでは、「メディア」を従来の放送メディアやデジタルメディアとして捉えるのではなく、コミュニケーションのための“道具”(絵本・テレビ・コンピュータ等)及び、“場”(キャンプ・ミュージアムなど)として広義に捉え、子どもの可能性や創造力を引き出すのに役立つ道具と考えている。
したがってe-kidsの活動の目的は、子ども達が日常生活の中で道具・場としての「メディア」を利用することで、自ら課題を探索し(explorle)、収集した情報を表現し(express)、 交流する(exchange)力を養えるようにすることだ。
子どもとメディアの関わり方としては、テレビや雑誌、インターネット上の“有害”情報からの保護や規制といった“お仕着せ”でネガティブな教育が一般的である。しかし、e-kidsは、上記の3つの“e”をベースにした活動を通して、IT社会においてさまざまなメディアを、子ども達自身の判断でニーズや状況に応じて使い分ける力を身につけることを狙っている。現在、e-kidsが幼稚園や保育所向けに行っている主な活動には下記のものがある。
●「e-kids club/e-class」
デジタルメディアを活用して子ども達の表現力やコミュニケーション力を高めるための課外教室。
●「e-kidsアプリケーションサービス」
幼稚園・保育所のインターネットを利用した情報発信、交流を支援。
●保育者向けホームページ作成講座
幼稚園・保育所に出向き、保育者向けの講習会を開催。
●メディアを利用した保育
コンピュータなどのメディアを使った保育を提案。
この中の「e-kidsアプリケーションサービス」は、欧米でも民間企業が提供しているサービスとして一般的だ。さらに、幼稚園児以上を対象に、デジタルカメラやPDA(携帯端末)などを使って、 野外活動で見つけた自然物を観察、記録、情報交換し、そのデータをもとにインターネット上にデータベース自然図鑑を作成する活動「e-forest」も開始している。
■データベース図鑑作成支援システム「e-forest」
この活動のねらいは、子ども達自身が情報の発信者になることで、メディアリテラシー(メディアの活用能力)を向上することにあるが、注目したいことは、NPO面の目的のみならず、企業面としてモバイル機器向けソフトやコンテンツ、利用方法(サービス)の開拓につながるものを持った活動であるという点だ。
この他に、子ども達によるメディア活用の具体例として以下の活動成果がある。
■「子どもたちにより食文化情報発信プロジェクト」
子ども達がデジタルカメラで黒門市場や錦市場を取材、子どものアングルからさまざまな食文化を紹介している。
いずれも扱っているテーマは、特にIT関連企業の関心を引きやすく、ビジネス的な接点を持ったものである。
e-kidsの活動は、代表の松田氏、ホームページ制作や企画等を担当する専従者一名の他、各プロジェクト毎にボランティアスタッフ等で実施。運営費用は、助成金の他、ホームページ講習料、会員会費、イベント収入等で賄われている。
今後は、ASP的なシステム展開、関西から全国域への会員、活動の拡大を目指している。
NPOとの協働関係が企業にもたらすメリット
現在、e-kidsを支援する企業としてインターネットソリューションカンパニー等数社が積極的なパートナシップを組んでいる点が特徴的だ。しかし、e-kidsが最初から企業との連携を視野に入れていたわけではない。1998年から毎年実施されている、自然体験とデジタルメディア体験を融合したキャンプ「メディアキャンプ」参加者の中に、企業の経営者がいたことがきっかけだったという。企業ではなく、まず親としてe-kidsの活動への共感が提携への第一歩だった。
■株式会社パイナップルカンパニー
■有限会社メディアデザイン
■ヤノ電器株式会社
これら協賛企業のアプローチの仕方で共通している点に、利益よりもe-kids の活動の趣旨(考え方)に共感して関わっていることがまず挙げられている。これらの企業は、e-kidsの活動に役立ち、かつ、自社で提供できるメディア環境やノウハウなどを提供している。
従来の企業にありがちな、単発的にNPOに寄付をして、NPOはそれを資金として活動する、という関係を超えて、具体的な企画に助言したり参画することによって直接的、間接的に得られるメリットは少なくない。e-kidsでは企業が連携することによって生まれるメリットとして、下記の点を挙げている。
《e-kidsとの提携による直接的なメリット》
●助成金の共同申請、受注による利益獲得、PR効果
政府のe-Japan 戦略等により、コンソーシアムを形成して企業とNPOが名を連ねて申請できる助成金も増えてきている。e-kidsでは助成金を申請する際、協賛企業に共同開発者やコンソーシアムのメンバーという位置づけで企画段階から関わり、企業が見るITの流れや、システム・運用面でのアドバイスをe-kidsに提供している。助成金支給が決定すれば、協賛企業に仕事を発注、企業側は利益を得ることができる。また、成果物に共同開発者として企業名が入ることでPRになる。さらに、NPOと共に事業に取り組んでいるというイメージアップにもつながる。
《e-kidsとの提携による間接的なメリット》
●実験的な取り組みが可能
e-kidsと共に先駆的な開発に取り込み、利用方法を提案することが、企業の商品開発などの実験(実証)にもなっている。モデルケース的なものをつくって経過を見計らうことで、商品化あるいは別のビジネスにつなげようとする試みが可能だ。
●現場からのアドバイスが得られる
e-kidsに、自社の商品開発やサービスについてアドバイスを求める企業もある。例えば、新しい子ども向けソフトを開発する、または、幼稚園向けのサービス等。
●現人脈形成
e-kidsの協賛企業どうしが知り合うことで、e-kidsへの協力とは別に、情報交換や別のビジネスの話に発展する可能性がある。
企業とNPOでは活動目的が、利益を個人(社員や株主)に還元するか、社会に還元するかという点が異なるが、それぞれの分野で「持っているもの」を共有し、「持っていないもの」を補いながら共に活動することはできる。
一般的には、「NPOと仕事をしても儲からない」という企業側の考えがほとんどだが、企業では入りにくい領域(例えば、e-kidsのような正規教育外の子どもの教育分野)や、市民が求めるニーズに対して、NPOと協業することで新しい市場や販路を開拓できる可能性は大きい。
これからは、企業単独で事業を開拓して利益を追求するだけでなく、自社の方針やフィランソロピー(社会貢献)に合致したNPOとのパートナーシップを結ぶことが、企業の社会的な評価やビジネス展開においても“使える手法”となりそうだ。
ただし、NPOパートナーに対してすぐに直接的な利益を求めるのではなく、間接的なメリットを重視し、長期的なスパンでNPOとの連携を保つことで後々に利益につながることを据えておくことも必要だろう。
e-kidsが示唆するNPOと企業とのパートナーシップにおいては、ITが重要な役割を占めていることが特徴的だ。ITとNPOの持つネットワーク形成力が結びつくことで質の高い人材や資源、情報が集まる。そして、そのNPOとITを介して結びつくことで、NPOは活動をより高いレベルに押し上げ、企業は新たなビジネス展開のチャンスを掴むことになるだろう。
■JNEWS LETTER関連情報
JNEWS LETTER 2001.08.14
<社会貢献をテーマとする国内民間非営利団体のモデルと視点>
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これは正式会員向けJNEWS LETTER 2002年8月21日号に掲載された記事のサンプルです。 JNEWSでは、電子メールを媒体としたニューズレター(JNEWS LETTER)での有料(個人:月額500円、法人:月額1名300円)による情報提供をメインの活動としています。JNEWSが発信する情報を深く知りたい人のために2週間の無料お試し登録を用意していますので下のフォームからお申し込みください。
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