AIロボットを味方に付けるフリーランスのリスキリング
米国の職場では作業のハイテク化に伴い、従業員の再教育が課題になっている。
これは「リスキリング(reskilling)」と呼ばれるトレンドで、新たな社員教育サービスの市場が盛り上がっている。
米アマゾンでは、7億ドル以上を投じた「Upskilling 2025」というプログラムを2019年から開始している。倉庫管理などの非テクノロジー部門で働いてきた約10万人の従業員を対象として、機械学習やクラウドコンピューティングなど、今後の人材需要が急増するIT技術者へのリスキリングができる教育カリキュラムを提供している。
アマゾンは、自社運用のネットワーク内でエンジニア職に就くための教育プログラムをクラウドと対面指導で行っており、意欲のある従業員は学歴に関係無く、90日間の日程で参加して、就業時間中に有給で学習することができる。カリキュラム終了後には、ITエンジニアの国際資格として普及している「CompTIA A+」を受験して、資格を取得するところまでをアマゾンが無償で支援する。
Upskillingの開始から1年半後の報告では、この教育プログラムによって、アマゾンはエントリーレベルのエンジニア採用で、38%の人材を、同社のフルフィルメントセンターで働いていた従業員の中から発掘することに成功している。カリキュラム修了者の80%以上は、社内のエンジニア部署に配置転換されて賃金も上昇しているが、彼らがリスキル後に転職することも禁止されていない。
このように、企業が従業員のリスキル(学び直し)に注力する理由には、近年の人材採用コストが上昇していることがある。米国では、新たなスキルに適応できる人材を新規採用するのにかかるコストは、年収の半分~2倍と算定されている。
一方で、旧スキルの社員を再教育するのにかかる費用は、1人あたり平均で約24,000ドルと見積もられている。職場の士気を下げないためにも、旧人材のリストラは避けた方が良いため、社員の再教育にコストを投じる企業が増えている。
リスキルの内容は、これまでの仕事とは全く異なるスキルにチャレンジさせるケースもあるし、従来の仕事に関連した分野で、更に専門性を高めていくケースもある。
たとえば、経理業務の仕事は次第に自動化されて、やがて消滅する可能性が高いが、会計士の有資格者に対する需要は、逆に増えていく。これは、自動化された会計処理のチェックや監視を行える人材の役割が重要になるためで、米国労働統計局によると、 2019年から2029年にかけて、会計士と監査人の仕事は4%増加すると予測されている。ただし、会計士の仕事も、貸借対照表と損益計算書の作成だけではなく、ビッグデータが扱えたり、ブロックチェーン台帳にアクセスして経理のチェックができるような、新たなスキルが求められるようになる。
《今後のリスキルが求められる職種例》
- デスクワークの事務職
- 外部委託の清掃員や警備員
- 製造業のライン作業者
- 小売業の店員
- 飲食業の料理人、接客スタッフ
- ホテルの従業員
- 倉庫の商品管理、ピッキングスタッフ
- 銀行の融資担当者
- 弁護士、会計士、建築士などの士業
ただし、これら旧スキルの人材に再教育をしたからといって、すべてがIT技術者に転身して、プログラムを書けるようになるわけではない。リスキルの本質は、業務の自動化システム、ロボット、AIなどのテクノロジーを使いこなせる人材を増やすことで、スイスのダボスで開催される世界経済フォーラム会議では、これから世界の労働人口の3割にあたる、10億人のリスキリングが必要になると予測している。リスキリングの学びは、フリーランスにとっても必要であり、それが今後の収入を伸ばしていくための急所になっていく。
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■JNEWS会員レポートの主な項目
・AIを味方に付けるフリーランスの働き方
・AIと共存しながら成長する翻訳業界の動向
・RPA導入によるロボットワークの普及動向
・自治体向けロボットワーク導入の支援ビジネス
・RPAスペシャリストとしてのリスキリング方法
・AI執筆ツールによるライター業界の革命
・AIをアシスタントにした原稿執筆の方法
・AI画像による広告出版業界の変革動向
・中小事業で深刻化する人手不足の要因と労働市場の急変
・リモートの次に訪れる会社の未来とサラリーマンの将来像
・単純作業をロボット化するデジタルレイバー導入モデル
・高卒者を高年収ハイテク人材に再教育する職業訓練ビジネス
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・JNEWS LETTER 2022.10.25
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