規制緩和される学生アスリート肖像権の収益化ビジネス
高校スポーツの花形といえば野球と答える人は多く、甲子園は球児にとって憧れであることは、昔も今も変わらない。甲子園の大会開催中は、テレビの平均視聴率がプロ野球を含めて、すべてのスポーツ番組の中でトップとなるのが通例である。特に、地元のチームが出場する試合では、その地域の視聴率が跳ね上がるのが特徴だ。
しかし、近年では野球部の入部希望者の減少が深刻化している。日本高等学校野球連盟(高野連)の集計によると、全国にある高校野球部(硬式)の部員数は、平成21年には16.9万人だったのが、令和4年には13.1万人にまで減少している。
学校単位の平均部員数も減少しており、9名未満でチームが編成できない学校も出てきているため、高野連では特例として、複数の学校で部員を集めた連合チームが公式大会に出場することも認めるようになっている。
部員数が減少しているのは少子化の影響もあるが、それ以外にも練習が厳しいことや、お金がかかり、保護者の負担も大きいことが理由として挙げられている。
部活動の指導については、学校側が教員のみで行うことが限界に達しており、民間からコーチを有償で雇うことなどの改革が求められていることは 2022.6.21号で特集したが、そのためには学生スポーツを収益化していくことも必要になる。
日本では長らく「学生スポーツは非営利」で行われるのが原則であり、高校の野球部でも、年間にかかる運営費は、学校から支給される予算が30~50万円、それで足りない分は、部員の保護者から部費(月額3千~1.5万円)を集金することで賄っている。さらに、ユニフォームや用具の購入、練習試合の遠征や合宿にかかる費用も保護者の負担となり、入部から引退までの2年半で100~200万円はみておく必要がある。
他の種目でも、活動に熱心な運動部ほど必要経費は高くなるため、民間コーチに対する報酬(人件費)も含めて、独自の収益源で賄える仕組みが求められている。
たとえば、学生スポーツは地域社会との親和性が高いため、企業スポンサーを付ける方法も注目されている。高校サッカーでは、既に協賛スポンサーの募集が行われており、選手が着用するユニフォームや練習着に企業ロゴを入れることで、年間数十万から数百万円のスポンサー料を払う契約例が出てきている。
就職情報サービスの株式会社マイナビは、船橋市立船橋高校のサッカー部との間でユニフォームにロゴを入れるスポンサー契約を2018年8月に交わしている。公立高校にスポンサーが付くのは異例だが、船橋高校には全国高校総体9回、全国高校サッカー選手権5回の優勝実績があり、「高円宮杯 JFA U-18 サッカープレミアリーグ」にも参加している。それだけ保護者の経済的な負担も大きいが、協賛スポンサーとして支えることは地域貢献活動になり、従来の広告よりも、企業の好感度を高めることができる。
■船橋市立船橋高等学校サッカー部ユニフォームスポンサー(マイナビ)
このように、学生スポーツは、企業マーケティングとの相性が良く、視聴率やアクセスを集めるコンテンツとしても魅力的であることから、新たなビジネスを生み出せるチャンスが豊富に眠っている。これまで、学生スポーツに「お金の話」を持ち込むことはタブーとされてきたが、現実問題として、子供を運動部に入部させたいが、経済的に厳しいという家庭も増えていることから、アマチュアのスポーツ活動を収益化することに対して「容認」の動きが広まっている。
米国では、全米大学体育協会(NCAA)が大学生アスリートの収益化に関する規約を2021年に緩和したことで、人気の学生アスリートがSNSなどで収益活動をして活動資金を稼ぐ動き加速しており、彼らのインフルエンサーとしての資質に企業も着目しはじめている。
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■JNEWS会員レポートの主な項目
・優良コンテンツとして学生スポーツ
・動画配信による学生スポーツコミュニティ
・高年収を稼ぐ高校生アスリートの台頭
・規制緩和される学生アスリートの報酬ルール
・学生アスリートが肖像権を収益化する仕組み
・学生アスリートのSNSエンゲージメント特性
・奨学金に代わるNIL契約マネーと売り込み戦略
・企業とアスリートのアフィリエイト提携モデル
・部活動改革で変わる少年スポーツの組織構造と参加形態
・アルゴリズムで淘汰される職業ユーチューバーの転換期
・ファンとの新たな関係を築くスポーツエンゲージメント
■この記事の完全レポート
・JNEWS LETTER 2022.8.29
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