中小事業で深刻化する人手不足の要因と労働市場の急変
時代の流れによって消滅していく業界や業態というのは多数ある。たとえば、中小の書店は、アマゾンを中心としたeコマースの台頭によって衰退の一途を辿っている。書店業界の調査会社、アルメディアのデータによると、20年前には全国に21,654件あった書店の数は、2020年には9,762件にまで減少した。近年では、100坪未満の小規模書店だけではなく、300坪前後の中規模書店の中でも廃業が相次いでいる。さらに、DVDレンタル店は衰退のペースが速く、1990年代には全国に12,000店舗以上あった業界が、現在は2,500店舗に縮小した。
この例に限らず、小売業、飲食業、サービス業、ソフトウエア開発など、多くの業界で廃業へと追いやられていく事業者は増えていくことが予測されている。そこには、コロナによる顧客減少、インフレによる仕入原価の高騰、テクノロジーの進化、人手不足など複数の要因が関係しており、その影響は中小の事業者ほど大きくなる。こうした時代の変化は、転職や起業をしようとする人にとっても意識していく必要がある。
たとえば、飲食業界は、コロナ禍から徐々に景気が回復している中でも、アルバイト人材を確保できずに営業時間を短縮したり、休業を続けるケースが相次いでいる。リクルートが飲食店を対象に行った調査(2021年4月)でも、1年前と比べて人材不足が悪化したと回答する経営者は45.1%で、前年の調査よりも25%増えている。
■雇用マーケットは再び「人手不足」へ(リクルート調査)
人手不足の実態は、求人倍率のデータよりも現場のほうが深刻で、店舗存続の危機に直面している。求人媒体によるアルバイトの採用コストは、1人あたり5万円→6~7万円に上昇してきており、それでも時給が安かったり、勤務条件が悪かったりすれば、応募者がゼロということが珍しくない。個人経営の店では、店主の他に、家族がスタッフとして手伝ってくれないと、店を回していくことができないのが実情だ。
さらに、食材原価の高騰も経営の悪化に拍車をかけている。大手チェーン店のように大量発注で仕入原価を下げられず、メニューの値上げもできない店では、売上に対して、人件費+食材費の割合(FLコスト)が65%を超して利益を確保できない状況に陥ってしまう。そのため、既存店の中では、コロナ禍の休業協力支援金が打ち切られたタイミングで廃業を決意する経営者も少なくない。
このような事業環境の変化は、飲食業界に限った話ではなく、中小ビジネス全体に広がっている。これまでにも好景気、不景気の波はあったものの、働く人材が集まらずに廃業、倒産する事業者も増えていくのが今後の見通しだ。
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■JNEWS会員レポートの主な項目
・人材不足が起きている国内要因の解説
・パート職からフリーランスへの人材流出
・米国で消える労働者の行方
・米国で人材不足が深刻な業界の特徴
・女性スタッフが職場を去る理由について
・IT業界で起きるエンジニア流出の解決策
・ミリオネア社員を作るAmazonの給与構造
・株式報酬で有能人材を集める仕組み
・リモートの次に訪れるサラリーマンの将来像
・ハイブリッドワーカーが変える賃金体系と実質年収の価値観
・FIRE理論とスモールビジネスを併用した早期リタイアの方法
・リモート経済圏で形成される高度人材の新たな労働市場
・役員報酬ゼロスキームを活用した一人会社の立ち上げ方
■この記事の完全レポート
・JNEWS LETTER2022.4.15
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