コロナ失業に対応した再就職支援サービスの業界構造
企業業績に対する新型コロナの影響は、2021年の春以降から鮮明になってきている。東京商工リサーチの調査によると、2021年3月期の企業決算では、大企業、中小企業ともに、前年比で売上高の減収となった会社は全体の7割である一方、利益の増益は大企業が53.9%(前期44.8%)、中小企業も49.5%(前期44.5%)と、「減収増益」の傾向が顕著に表れている。
これは、各種の補助金や助成制度が利用できたことや、不動産の売却、人員削減などのリストラを行ったことによるもので、景気が回復しているわけではない。
業界によっては、コロナ特需により業績が好調な企業もあるが、労働者の立場からみると、コロナは悪影響でしかない。日本は米国のように簡単に解雇ができないため、人員整理のペースは緩やかだが、ほとんどの業界で雇用状況は悪化している。
■国際比較統計:産業別就業者数(労働政策研究・研修機構)
リストラを免れた社員の中でも、給与水準はコロナ前よりも下落の傾向が顕著に表れている。2020年の毎月勤労統計調査をみると、大半の業界で給与支給額が前年比ダウンとなっており、残業代やボーナスなど、基本給以外の割合が高い仕事ほど、月収の下落率は高くなっている。
その中で需要が高まっているのが、ニューノーマル時代に適応した人材サービスや、新たなスキルを習得する職業訓練の分野である。この市場は、政府や行政による公的支援、企業がリストラを実行するための再就職支援、個人の自発的な学習、という3つのカテゴリーから成り立っている。
【コロナ不況と再就職支援市場の関係】
コロナ不況で人員削減をしたいと考えている企業は多いが、日本の法律では、会社側からの一方的な解雇は禁止されている。経営不振によりやむを得ず人員整理をしなくてはいけない場合には、整理解雇の4要件として、以下の内容にすべて該当しなくてはいけないことが、過去の判例で示されている。
《整理解雇の4要件》
- 人員整理の必要性
どうしても人員削減をしなくてはいけない経営上の必要性があること。「経営が厳しい」という抽象的な理由ではなく、経営危機に陥っていることの具体的な財務資料を示す必要がある。 - 解雇回避の努力義務
人員整理を実行する前に、役員報酬のカット、新規採用の抑制、新しい部署への配置転換、出向、希望退職者の募集などを行い、強制的な解雇は極力避ける義務が会社側にある。 - 解雇人員選定の合理性
やむを得ず整理解雇する人材を選定する場合には、経営者や上司の主観によって対象者を決めることは認められず、勤務成績、病欠・休職日数、年齢などから、客観的で公平な判断基準により人選する必要がある。 - 解雇手続きの妥当性
整理解雇を行う前には、実施方法や条件などの説明をして、誠意のある協議・交渉を行わなくてはいけない。
これらの要件により、日本企業がリストラを行う事前段階では、転職に役立つ職業訓練や、再就職までのサポートを行う人材支援サービスが求められるようになる。これは「Outplacement(アウトプレースメント)」と呼ばれる市場で、バブル景気が崩壊した1990~2000年代に活況となった経緯があるが、コロナ禍でも同様の需要が出てきている。
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■JNEWS会員レポートの主な項目
・コロナ不況と再就職支援市場の関係
・日本のアウトプレースメント業界
・成功報酬型アウトプレースメントの仕組み
・コロナで変化する海外の転職トレンド
・コロナ後に変わる働き方と収入の関係
・業界リモート率と人気職種の関係について
・コロナ社会に適応した新職種カテゴリー
・EC業界で求められる新職種
・金融業界で人気化するリモート職種
・薬局業界で採用される新スペシャリスト
・パンデミック後の国際ビジネスを変革するWHF経済
・コロナ失業から立ち直る新時代のスキルと新職業
・コロナ失業者を救済する従業員一時雇用仲介ビジネス
■この記事の完全レポート
・JNEWS LETTER 2021.8.29
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