コロナ後の経済を先読みする代替データの発掘市場
まだニュースになっていない景気の先行きを読む方法として、求人誌の厚さを調べることは昔から行われている。景気が上向き始める兆候があれば、企業はアルバイトや正社員の人員を増やしていくため、求人誌は厚くなっていくというわけだ。業界別の求人件数を比較していけば、数ヶ月先に株価が上昇する業界を予測することができる。
これは原始的なデータ分析の手法だが、現代では様々なデータをデジタルで入手できることから、AIを駆使したデータ分析が機関投資家を中心に行われている。
特にパンデミック以降は、様々なデータが新型コロナ感染の拡大動向を察知したり、景気の先行指標として活用されている。
たとえば、Googleの検索クエリをランキングした「Googleトレンド」は、各国政府の発表や、新聞社のニュースよりも早く、世界各地の動向を察知するツールとして活用されている。Googleは、ユーザーがどの場所からアクセスしているのかを分析した「COVID-19コミュニティ モビリティ レポート」も週単位で公開しており、その動向からも、パンデミック前(2020年1月3日~2月6日の中央値)と比較した、消費者の行動がどのように変化しているのかを、地域別に把握できる。
レストランや商業施設の来場者が減少しているのは世界に共通した傾向で、欧米ではアウトドア活動が活発になっているのに対して、日本では自宅に籠もる割合が高いことが、データからは読み取れる。
その他にも、消費者の行動やサプライチェーンの動きを把握するのに役立つ多様なデータは「オルタナティブデータ(代替データ)」として価値を高めている。
ヘッジファンドが投資判断で活用するデータは、eコマースサイトの価格情報、SNSの投稿内容、世論調査、クレジットカードの利用歴、携帯電話の位置情報、衛星写真などがある。しかし、代替データの活用目的は、他人よりも一歩先の事実を発見することにあるため、新たなデータソースの発掘にも積極的である。
最近では、大企業のCEOが所有するプライベートジェットが、どの空港に移動しているのかを監視して、そこから大型M&Aの交渉を察知することも行われている。
ウォーレン・バフェット氏が率いるバークシャー・ハサウェイ社が、大手石油会社の株式を大量取得した際には、バフェット氏のプライベートジェットがどこにいるのかをヘッジファンドが追尾して、先回り投資をしたと言われている。
航空機には現在地を送信する装置の設置が義務付けられており、「FlightAware」や「Flightradar24」のようなサイトを利用すると、機体番号から移動ルートを簡単に調べることができる。
このように、現代のビジネスや投資活動では、意志決定に役立つデータの発掘が重要視されており、新たなデータ取得競争が起きている。スパイ活動とは異なり、合法的なルールに基づいて収集、加工編集されたものが「代替データ」として商品化されている。これらのデータには、ネットから無料で入手できるものも豊富にあり、それを大量に収集してAIに分析させることで付加価値を高めるスタートアップ企業が急成長してきている。
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■JNEWS会員レポートの主な項目
・Googleデータから予測する消費者行動
・ヘッジファンドが代替データを求める理由
・変化するヘッジファンドの収益構造
・政府よりも早く感染拡大を察知するSNS分析
・Webサイトから金脈データを発掘する方法
・Webスクレイピングによる新車販売予測
・メール領収書からの売上予測方法
・領収書データを収集するビジネスモデル
・ローン業界が求める代替データの方向性
・格差社会で機能不全になるクレジットスコア
・高速売買が引き起こす株価暴落の特性
・コロナインフレで広がる貧富格差と富裕層の資産構成
■この記事の完全レポート
・JNEWS LETTER 2021.8.3
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