コロナモラトリアムからの出口戦略とデジタル投資市場
新型コロナの感染対策としてワクチン接種が進んだからといって、コロナ前の生活がすぐに戻るわけではなく、経済の動向については、株価の下落や中小事業者の廃業が増えるなど、ネガティブな予測もされている。それは「コロナモラトリアム」と呼ばれる各種の支援、猶予措置が次第に解除されていくためである。
日本でも、前年比で売上が50%以上減少した月がある事業者に100~200万円が支給される「持続化給付金」には、2020年5月~2021年2月までの期間で441万件の申請があり、5.5兆円の給付が行われた。
また、日本政策金融公庫では、事業者向けに「新型コロナウイルス感染症特別貸付」として、個人事業主は最大8,000万円、中小企業には最大6億円までの特別融資を行っている。貸し付けの条件は、担保不要、融資3年目までは実質無利子、最長5年間は元本の返済も不要という、借り手にとって破格の好条件であり「ゼロゼロ融資」と呼ばれている。
しかも融資審査は、通常の融資と比べて緩く、申込件数に対する融資実行率は50~80%と高いため、具体的な用途は決まっていなくても「とりあえず借りておこう」をする経営者は多く、余剰資金の一部は株式市場にも流れている。
この融資制度は、2021年6月までの時限的な措置として、4月末までに130万件、総額で約20兆円の融資が実行されたが、その後も申し込みが殺到しているため、商工中金と民間金融機関にまで窓口を広げた上で、申し込み期限を2021年末にまで延長している。
コロナ後の会社経営が厳しくなるようなら、今のうちにゼロゼロ融資を利用して、当面の資金繰りに備えるのも手ではある。しかし「借りた金」はいずれ返済しなくてはならず、返済猶予のモラトリアム期間が終了する3~5年後には、株価の下落や倒産企業も増えていくことが予測される。
調達した資金を有効に活用するには、ポストコロナ(コロナ後)の時代に移行する中で、ソフトランディングができる出口戦略に備えたビジネスへと変革していく必要がある。コロナ禍では、様々な取り組みが考案されたが、その中には、暫定的なサービスとして消滅していくものと、コロナ収束後も成長していく分野に分かれる。
その方向性を探るには、政府が今後の重点項目として投資を進める分野を把握するのがわかりやすく、既存のITシステムから新DXシステムへの再構築市場が最も有望分野となっている。
【ポストコロナ時代の成長産業】
日本政府は、2020~2021年にかけて新型コロナの感染対策と経済対策で113兆円もの資金を投じており、これはリーマンショックの経済対策と比較しても約2倍の規模になる。113兆円のうち、40兆円は全国民に10万円が給付された「特別定額給付金」や、事業者向けの「持続化給付金」などに使われ、残りの73兆円は、政府が公共投資を推進することで、民間企業の景気を活性化させるための事業費として使われる。
73兆円の主な内訳は、(1)コロナ感染防止策として6兆円、(2)ポストコロナに向けた経済構造の転換に51兆円、(3)防災・減災、国土強靭化の推進(土木、建設工事など)に6兆円となっており、(2)のポストコロナ社会を見据えた経済構造の変革に7割の資金が投じられる計画だ。具体的には、デジタル化と環境社会への適応(グリーン化)を促すテクノロジー改革が、コロナ後の経済を復興させる重点項目に掲げられている。そのため民間企業や起業家にとっても、このトレンドに沿った事業転換や新規事業を立ち上げることが、コロナ後の業績を伸ばすための急所になる。
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■JNEWS会員レポートの主な項目
・国策として推進されるポストコロナの成長産業
・「2025年の崖」と老朽化ITシステムの再構築市場
・既存ITシステムとDX変革の違いについて
・産業用ソフトエアの新たなビジネスモデル
・職場のペーパーレスを支援する文書管理ビジネス
・クラウドファンディングによる医療支援の潮流
・保険業界を脅かす医療クラウドファンディング
・スーパーマーケットが業態転換するダークストアの正体
・ワクチン接種後に成長する自費PCR検査市場の参入動向
・脱ハンコ政策で変革されるアナログ業界の取引形態
・パンデミック後の国際ビジネスを変革するWHF経済の特徴
■この記事の完全レポート
・JNEWS LETTER 2021.6.22
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