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男女の区別を無くすユニセックス商品の開発視点と採算

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JNEWS会員配信日 2021/6/14

 トイレといえば男子用と女子用に分かれているのが常識だが、近頃では男女共用トイレを導入する施設が世界的に増えている。背景にあるのは多様性への対応である。心と身体の性が一致していないトランスジェンダーの人にとって外出時に最も困るのはトイレの利用であり、「TOTO」が2019年に行った調査でも、公共トイレの利用時にストレスや不便さを感じている人は4割を超している。そのため、買い物や外食をする時でも、性別を気にせずに使えるトイレがある商業施設を利用する傾向が高くなる。

「LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)」を自覚する人は、欧米の調査では成人人口の5~10%となっている。日本でも複数の団体がLGBTの実態を把握する調査をしているが、性についての悩みや葛藤を心の中で抱えている人は想像以上に多いのが実態である。

日本労働組合総連合会(連合)が2016年に行った「LGBTに関する職場の意識調査」では、民間企業で働く20歳~59歳の有職者1000人を対象にアンケート調査を行ったところ、「LGBT等(性的マイノリティ)当事者」と回答したのは8%という結果だ。

また、2020年に電通が全国20~59歳の計60,000人を対象に行った調査でも、L、G、B、T、さらに自身の性的志向が定まっていない多様なセクシュアリティー(Q)を加えた、「LGBTQ+」に該当すると回答したのは8.9%となっている。

LGBTに関する職場の意識調査(連合)
LGBTQ+調査2020(電通ダイバーシティ・ラボ)

性の多様性については、LGBTQ+の自覚者に加えて一般層(ストレート層)の中でも「性別に囚われない生き方」を容認したり支持する人達が増えている。日本の学校教育でも、男子と女子を無意味に区別した習慣が多数あり、それが企業に就職してからの男女の待遇差や賃金格差へと繋がっている、という意見もある。
LGBTQへの理解は、そうした悪しき習慣を取り払い、性別に関係なく活躍できるチャンスが平等に与えられる社会への変化を促す契機にもなっている。

上記の電通調査では、一般層がLGBTQ+の人達に対してどのような考えを持つかの回答を4つの階層で分析しているが、積極的にサポートする「アクティブサポーター層」と、ナチュラルに支持をする「天然フレンドリー層」が全体の40%を占めており、生理的嫌悪感を抱いたり、差別的な考えを持つ「批判アンチ層」は5.7%に過ぎない。

《ストレート層のLGBTQに対する考え》

  • アクティブサポーター層(29.4%)
    LGBTQへの理解が深く、積極的にサポートする姿勢がある。
  • 天然フレンドリー層( 9.2%)
    LGBTQの知識は浅いが、ナチュラルにオープンマインドで支持をする。
  • 知識ある他人事層(34.1%)
    知識はあるが、身近に当事者がいないため課題意識は弱い現状維持派。
  • 誤解流され層(16.2%)
    LGBTQへの誤解も多く一見批判的だが、もともと人権意識はある層。
  • 敬遠回避層(5.4%)
    積極的に批判はしないが、配慮意識が乏しく関わりを避ける層。
  • 批判アンチ層(5.7%)
    生理的嫌悪があり、社会影響的にもマイナスと考える層。

このトレンドは企業も見逃すべきではなく、長い歴史の中で無意識のうちに行われてきたジェンダー差別を見直した商品やサービスを開発していくことは、ブランドイメージと売上を向上させることに役立つ。身近なところを見渡しても、これまで日常的に行われてきた「男女の区別」が不要な商品やサービスは数多くみつけることができ、そこに多様なビジネスチャンスが潜んでいる。

男女の区別がある商材といえばアパレルやファッション用品が筆頭に挙げられるが、この業界にも古い常識を変革させる波が起きている。発端となっているのは、SNS上で、女性向け、男性向け商品への疑問や不満を問いかける投稿が増えていることがある。

たとえば、レディースの服には機能的なポケットが使える服が少ないという問題がある。従来のアパレルブランドは「女性らしさ」を重視したデザインの新作服をシーズン毎にリリースすることで流行を生み出してきた。しかし、女性の社会進出が進む中では、男性と同等に働いたり、アクティブな活動がしやすい機能重視の服が求められるようになっている。

女性用のブレザーやスラックスには、ポケットが無いか飾り程度のポケットであることが多く、iPhoneを入れられる程の実用性が高い服は少ない。スマートフォンを持ち歩くことが必須となった時代に、女性の服にポケットが無いことは、男女のテクノロジー格差を広げやすいという指摘もある。そのため、服の機能性を重視する女性の中ではレディースのスーツは選ばずに、ジェンダーレスのスーツをオーダーメイドする消費行動も起きている。

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JNEWS会員レポートの主な項目
・LGBTQ+に対する一般社会の認識、理解の変化
・アパレル業界に起きるジェンダーレスの波
・メンズ・レディース売り場の変革動向
・在庫管理からみたユニセックス商品の採算性
・新興ジェンダーレスブランドの台頭
・ジェンダーレスブランドの顧客特性と事業モデル
・性別を隠した人材採用プラットフォームの開発商機
・性別マスキングのテクノロジー開発動向
・性別マスキングと男女採用比率の関係について
・正社員と非正規社員の間で変わる給与の分配システム
・多様性社会に対応した動画マーケティングと飲食店の集客

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