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ラストマイル配送を支えるオンコールワーカーの働き方

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JNEWS会員配信日 2021/4/24

 コロナ禍ではタクシー業界が深刻な影響を受けている。企業のテレワーク導入や飲食店の時短営業により、タクシー利用者は5~7割近く減少した。それに伴い、タクシードライバーの中でも、失業や収入ダウンにより、別の仕事を探す人が増えている。

全国にタクシー車両は23万台、ドライバーは27万人いるが、彼らの平均年収は、コロナ前の時点で343万円、月収およそ27万円となっている。ただし、タクシードライバーの給与は歩合給の割合が高いため、景気の悪化がドライバーの収入にも直結してくる。今後は、日本でもライドシェアサービスが解禁される可能性があることや、自動運転タクシーが実用化されると、プロのタクシードライバーという仕事自体が衰退していくことも考えられる。

その一方で、需要が急速に伸びているのが、軽貨物車、自転車、125cc以下のバイクによる配送サービスの分野だ。前号(2021.4.15号)で特集したように、オンラインで注文された荷物を即日、翌日までに宅配するサービスへのニーズは全国的に高まっている。そうした地域物流を担う配送サービスは「ラストマイル配送」と呼ばれ、世界では年率10%以上で市場が急成長している。

ラストマイル配送サービスの特徴は、「ギグワーカーまたはオンコールワーカー」と呼ばれるオンデマンドの人材と、スマホアプリを活用しながら近距離(約20km圏内)の効率的な配送ネットワークを構築している点である。ヤマト運輸「宅急便」の取り扱い件数をみても、コロナ禍の2020年度は、過去最高の20億個(前年比16.5%)となっており、従来の宅配便業界だけでは対応できない配送ニーズに対応することが、新たなラストマイル配送業者の役割になっている。

《国内宅配便取り扱い個数の推移》《宅配便業界のシェア率(2019年)》

米国労働局が2017年に調査した雇用統計によると、米国就労人口(約1億5000万人)の中で、会社と雇用契約を結ばずに、個人請負人として働くフリーランスは1060万人いるが、その中でスマホアプリで必要な時に呼び出される「オンコールワーカー」は260万人(全体の1.7%)と算定しており、この大半がライドシェアリングやラストマイル配送で働いている。現在は、その数が更に増えていることから、オンコールワーカーは、従来の派遣社員やパート勤務よりも自由な働き方として定着している。

Contingent and Alternative Employment Arrangements Summary

日本でも、Uber Eatsや軽貨物など、ラストマイル配送のオンコールワーカーとして働く人は増えており、学生や主婦のアルバイト、タクシードライバーからの転身組もいる。自分の都合の良い時間にログインして働けることと、努力次第でアルバイトよりも稼げることが人気の理由である。

Uber Eatsの場合には、基本料金+ブースト+各種インセンティブ+チップによって報酬額が算定されており、繁忙期や配達員が集まりにくい時間帯には単価が上昇していく仕組みだ。そのため、好調な時には1日2万円以上を稼ぐことも可能である反面、最低賃金が保証されていない厳しさもある。

《Uber Eats配達員の報酬算定》

  • 基本料金
    料理の受取料金+受渡料金+配達料金によって算定される。
    ※配達する地域によって料金単価は異なっている。
  • ブースト
    注文件数の多い地域や時間帯に加算される報酬倍率(例:基本料金×1.2倍)
  • インセンティブ
    出勤日数、配達回数などの条件をクリアーすることで支払われる報酬。クリスマスや正月にも各種のインセンティブが設定されて、配達員の就労意欲が駆り立てられている。
  • チップ
    顧客が任意の気持ちで支払うチップ制度が日本でも導入されている。
    ※チップの決済もアプリ上で行われる

通常のアルバイトは、東京都の場合で法定最低時給は1,013円に設定されているため、1日8時間の労働で8,104円、月20日間の出勤で16.2万円の収入が保証される。
Uber Eatsの配達員として同じ収入を稼ぐには、相応の努力が必要になるが、就業時間の縛りが無く、上司から管理されないオンコールワーカーとしての就労者はこれから増えていくことが予測され、彼らを上手に活用することがラストマイル配送の急所になっている。

 個人を請負人としたラストマイル配送では、「貨物自動車運送事業法」の規制から外れた、自転車と125cc以下の原付バイク、または営業許可が取得しやすい4ナンバーの軽貨物車が使われている。東京を中心として、飲食店の料理を配達するフードデリバリーサービスだけでも、Uber Eats、出前館の他にも、数十業者が参入してきている。さらに、オンラインスーパーで注文された食品を配達するニーズも高まっていることから、ラストマイルの配送業務は、いま最も職を見つけやすい仕事といえる。

反面、オンコールワーカーは実力主義の働き方となるため、独自の工夫で売上を伸ばしていくことが、自立していくための鍵になっており、海外ではオンコールワーカーの仕事をサポートするビジネスが登場してきている。

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JNEWS会員レポートの主な項目
・日本のフードデリバリー配送業界
・欧州におけるデリバリー電動自転車の開発
・配達用途で需要が拡大するレンタサイクル市場
・デリバリー専用レンタサイクルの収益モデル
・軽貨物車リースビジネスの仕組みと開発動向
・EV化するラストマイル貨物車のビジネスモデル
・自動運転へ向かうラストマイル配送と貨物ドローン
・オートパイロット機能を核としたドローン業界の再編
・プラットフォームを使い分けるフリーランス配送の稼ぎ方
・アマゾンが仕掛ける宅配便の再構築と軽貨物ドライバーの育成

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