プロ投資家が物色するポストコロナの有望テクノロジー
新型コロナは、投資家からの出資を受けるスタートアップ企業にも大きな影響を与えている。将来有望なスタートアップに向けた世界の投資マネーは、直近10年でおよそ3倍に拡大して、2022年までには1兆ドルを超すことが予測されていた。しかし、コロナ後はベンチャーキャピタル(VC)が追加の資金提供を保留として、出資先の経営状況がどのように変化していくのかを静観する動きがみられる。
今のところ株式市場は堅調ではあるが、コロナ前とコロナ後では、有望事業のテーマが変化しているため、VCの中では、コロナで業績が落ち込むスタートアップには見切りを付けて、新たな投資先へ乗り換えをする動きは出てくることが予測されている。
市場調査会社の「Wizer Feedback」が、100社以上のベンチャーキャピタルを対象に行った調査(2020年3月)によると、回答社の半数以上が新規の投資を全面的に控えるか、半減すると回答している。この状況は少なくとも1年間は続くとみられている。その一方で、感染対策に役立つイノベーションや、新たな生活様式を支援するサービスには、投資資金が集まりやすくなっている。
これは各国の政策ともリンクしており、カナダ、フランス、ドイツ、英国などでは、国のベンチャーキャピタル部門が数千億円規模の資金を、コロナ対策の関連企業に出資する準備を進めている。しかし、コロナ対策で使われる基幹技術についてはコロナ前からあるもので、従来から開発を進めてきた技術を、ポストコロナ時代にどう転用するのかで、事業への注目度が変わってきている。
《コロナ禍で活用される基幹テクノロジー》
○ビデオストリーミング
○リモートカメラ(遠隔監視)
○オンライン決済
○人工知能(AI)
○クラウドコンピューティング
○VR / AR
○5G通信
○IoTネットワーク
○ブロックチェーン
【コロナ感染者の遠隔追跡サービス】
世界でコロナ感染の拡大は止まらない状態だが、その対策として、感染経路や濃厚接触者を特定できる技術が求められている。具体策として、スマートフォンアプリとBluetooth通信により、利用者の行動を記録して、2週間以内の行動圏内で感染者が出た時に通知してくれる濃厚接触確認アプリは、韓国、台湾、シンガポール、日本などの政府が導入している。日本のアプリ「COCOA」は、6月19日のリリース開始から1ヶ月間でダウンロード数は740万件を超している。
しかし、濃厚接触確認アプリは、使用がユーザーの自主性に任されており、プライバーシーやバッテリー消耗の問題から、Bluetoothを無効にすれば、行動履歴も記録されないのが欠点である。
そこで別のアプローチとして、防犯カメラの画像認識技術を感染対策に応用している「Traces AI」というスタートアップ企業が注目されている。
同社は、起業アクセラレーター「Y Combinator」の支援を受けて、ウクライナの起業家2名が立ち上げた会社だが、もともとは、防犯カメラの映像に映る人の所持品、ヘアースタイル、靴や服の特徴から人物の特定をして、複数の地点に設置されたカメラから行動履歴をモニタリングできる技術を開発していた。
米国では、カリフォルニア州のサンフランシスコやオークランドなど、一部の地域で、プライバシーの観点から防犯カメラで顔認識技術の使用を禁止する動きが2019年頃から出ている。さらにコロナ禍では、大多数の通行人や来店客がマスクをしていることから、顔認識では人物の特定が難しくなり、Traces AIの技術が脚光を浴びているのだ。
顔認識の技術は、性別や人種差別への配慮から、顔の詳細をぼかした後に、顔の特徴を認識させるように規制が強化されていく方向にあり、どうしても認識精度は落ちてしまう。一方、Traces AIは顔の詳細データは使わずに、髪型、服装、身長、身につけているバッグやアクセサーなど、身体に付随した2000ヶ所以上の特徴をAIが分析するため、通行中や建物内の人物を高い精度で特定、追尾することが可能だ。
このシステムは、既に防犯カメラを設置している施設に対してクラウドで提供されるため、導入コストは安く抑えられる。最小8台から最大1000台までのカメラ映像を分析することに対応して、体温感知センサーとも連携できるため、空港や商業施設などで高体温の人を感知すると、その行動を匿名のまま追尾することができる。
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■JNEWS会員レポートの主な項目
・防犯カメラによるコロナ感染者の遠隔追跡サービス
・海外に輸出される中国の感染対策ソリューション
・8割を占めるコロナ軽症者の遠隔モニタリング
・COVID-19スタートアップの起業支援と投資動向
・コロナ禍で進化する事業融資の形態
・クラウド会計と連動したオンライン融資の仕組み
・クラウド会計の導入権を握る銀行業界の動向
・家賃滞納を防ぐフレキシブル家賃の考え方
・フレキシブル家賃と連携した家賃貸し付けサービス
・アフターコロナに訪れるニューノーマルのビジネスモデル
・感染対策として開発される非接触型サービスへの業態転換
■この記事の完全レポート
・JNEWS LETTER 2020.7.23
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