EV普及に伴うeチャージビジネスの参入視点と採算性
世界の自動車業界は、本格的に内燃エンジンから電動化へのシフトが起きている。欧州では自動車メーカーに対して、2021年までに新車の平均CO2排出量を走行1kmあたり95g以下に抑えることを義務づけている。これは、各メーカーの平均燃費で24,4km/Lを達成することを意味しており、基準をクリアーできないメーカーに対しては、未達のCO2量が1gあたり95ユーロ×販売台数の厳しい罰金が課せられる。
欧州の燃費規制は最も厳しいが、このハードルを前倒しでクリアーしていかないと、各国の自動車メーカーは生き残ることが難しい。そのため、2020年以降は次々と電気自動車(EV)の発売が計画されている。各国の政府も、EV購入への補助金制度を充実させていることから、消費者も次のマイカー買い換えでは、エンジン車から電動車への乗り換えが急速に進んでいくことになるだろう。
それに伴い、社会インフラとして不可欠なのが充電スタンドの整備である。現在、日本には約22,000ヶ所の充電スタンドがあり、充電器の数では約32,000基が設置されている。数字の上では、ガソリンスタンドの数(約30,000ヶ所)を超してきたものの、EVは急速充電でも30分以上かかることから、ユーザーがバッテリー切れ(電欠)を気にせずに乗るには、EV5台につき1基の割合で、充電設備が必要になるといわれている。
世界で最も充電ステーションの普及が進んでいるのは中国で、2018年の時点で30万基が整備されているものの、中国内では既に260万台のEVが走っているため、充電インフラの供給数としては、全然足りていない。
各国で充電スタンドの整備が遅れている要因には、充電サービスが収益事業として成り立つビジネスモデルとして確立していないことが大きい。充電設備の設置については、政府や自治体の補助金によって、初期費用の大きな割合を賄えても、月々の電気代やメンテナンス費用については赤字になっているのが実情である。
しかし、地域のスーパーやコンビニ、商業施設、新築の分譲マンション、賃貸アパートなどでも、これからは駐車場に充電設備を設置していくことが、集客の要(かなめ)になっていく。この市場規模は非常に大きく、多くのビジネスチャンスが潜んでいる。
【EV充電スタンドの設置費用と補助金制度】
EVの充電方法には「普通充電」と「急速充電」の2種類がある。普通充電は、家庭用コンセントとしても使われる単相100~200Vの電圧で充電する方法で、EVが約10Km走行できる電気を、100Vは約1時間、200Vは約30分かけてゆっくりと充電する。それに対して急速充電は、主に業務用電源として使われる三相200Vを使うため、実走行距離が200~300kmのバッテリーを、20~30分間で約80%まで回復させることができる。急速充電には世界で複数の規格があるが、日本国内の充電市場では、日本独自規格の「ChAdeMO(チャデモ)」が主流である。
急速充電スタンドの設置費用は、1基あたりの価格帯が200~250万円で、設置工事も加えると500~1000万円。普通充電は、1基あたりの本体価格と工事費で50~100万円が相場だ。しかし、現在は充電スタンド整備の助成制度が充実しており、設置費用の1/2からほぼ全額を、補助金で調達することも可能になっている。
具体的には、経済産業省の外郭団体として運営される次世代自動車振興センターが、全国の高速道路SA、道の駅、商業施設、宿泊施設、マンション、事業所、工場などを対象として、EV充電設備の購入費と工事費についての補助金申請受付と審査を行っている。その他に、地域自治体の助成制度も併用すれば、設置費用の9割以上を補助金で賄えるケースもある。
■充電インフラ補助金(次世代自動車振興センター)
しかし、充電スタンドを維持していくための採算について、今のところ赤字収支になっているのが実情だ。そこで今回のレポートでは、充電スタンドの採算構造を解説しながら、充電サービスを儲かる事業にしていくには、どんな方法が考えられるのかを掘り下げていきたい。
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■JNEWS会員レポートの主な項目
・EV充電スタンドの設置費用と補助金制度
・EV充電スタンドの採算構造につての解説
・EV充電による電力契約見直しの商機
・EV充電事業者向け新電力切り替え代理店ビジネス
・事業者向け新電力代理店の収益構造について
・商業施設のEVチャージマーケティング
・無料充電設備を利用するEVドライバーの購買特性
・充電カード会員ビジネスの手掛け方
・運転免許証を会員カードにしたカーシェアリング
・使用権と収益権を両立させるマイカー新オーナーシップ
・エンジン車からEVで変化する消費者の価値観
■この記事の完全レポート
・JNEWS LETTER 2019.12.11
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