18~29歳の若い世代は、それより上の世代よりも労働組合に対する支持率が高い。ただし、現在の雇用格差は世代別に起きていることから、従来のように会社単位ではなく、雇用されている立場や、ワークスタイル別に組合が組成されて、社会的な影響力を高めていく可能性があるJNEWSについてトップページ
エリート労働者から起きる労働組合の変革トレンド

JNEWS
JNEWS会員配信日 2019/12/3

 昭和の高度成長期には、あちこちの企業で賃上げ交渉や労働環境の改善を求めるストライキが行われていた。組合を作り、会社側と団体交渉するのは、法律によって守られた労働者の権利であり、1970年代のピーク時で1,400万人を超す勤労者が労働争議に参加して、年間で5,000件超のストライキが起こされた。しかし、バブル経済の崩壊以降は、雇用情勢が悪化したことで労使の力関係は崩れ、労働争議の件数も激減していった。

※労働争議とは、労使間の主張が一致せずに争議の行動が起きることを指す。

《労働争議とストライキの推移(国内)》

しかし、現代の労働者も現状に満足しているわけではなく、職場への不満は、新たな行動となって現れている。職場の悪しき慣習や、セクハラやモラハラの被害はSNSに書き込まれることにより、リツイートの連鎖が広がり、一つの企業を超えた業界全体、さらに市民を巻き込んだ社会運動にまで広がっていくのが特徴である。

特徴的な出来事として、2018年10月にグーグル社内から起きた2万人のストライキがある。事の発端は、職場でセクハラ行為をしていた元幹部社員に対して、会社側が、9000万ドル(約10億円)もの退職金を払っていた事実が発覚したことにある。

そこから、人事制度への不満や、職場での人種差別、グーグルが計画している米軍向けや中国向けの事業展開にまで、社員から不満の声が高まり、世界各地のグーグルオフィスで、「Google Walkout For Real Change」というスローガンのストライキが起こされた。

■グーグルストライキのニュース映像

グーグルでは労働組合は組成されていないが、抗議への行動はSNSに「#MeToo」のハッシュドタグが付くことで世界のオフィスに拡散していった。現代では、会社側が労働組合の組成を抑えたとしても、社員の不満が蓄積すれば、瞬く間に団体行動を起こせるのが特徴である。これは企業側でも、労働者の新たなムーブメントとして重要視していく必要がある。

米シンクタンク、ピュー・リサーチ・センターの調査によると、18~29歳の若い世代は、それより上の世代よりも労働組合に対する支持率が高い。ただし、現在の雇用格差は世代別に起きていることから、従来のように会社単位ではなく、雇用されている立場や、ワークスタイル別に組合が組成されて、社会的な影響力を高めていく可能性がある。また、大学の講師や研究助手、デジタルメディア、非営利団体、フリーランスなど、新しい職域においても労働者の中で団結の動きが高まってくることが予測されている。

世代別・学歴別・年収別にみた労働組合の支持率(米国)

日本でも、サービス残業が常態化している会社が、ブラック企業として糾弾されたり、セクハラやパワハラの告発が増えているが、その背景には、新たな組合組織が次々と設立されて、労働弱者を救済する仕組みが確立してきたことがある。
しかし、見方を変えると、近年の労働問題は「金になる」という事実もあり、報酬を目的とした事業として、組合活動に参入してくる者もいる。今回のレポートでは、働き方改革の中で変わる雇用関係の中で、労働組合にも起きている変革の動向を特集してみたい。

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・懲罰賠償金をベースに形成されるセクハラ対策市場

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