使用権と収益権を両立させるマイカー新オーナーシップ
シェアリングや断捨離のように、余分なモノを持たない価値観が、若い消費者を中心に広がる一方で、将来の不安を解消するための収益源として、不動産投資に適した物件を探す人も増えている。この2つの行動属性は対局にあるものだが、オーナーと使用者の立ち位置として、需給のバランスが保たれている。
マイホームの価値観として「持ち家と賃貸はどちら得か」という議論も、決着が付かないまま続くのも、そのためだ。賃貸住宅にも必ず所有者(大家)は存在しており、住宅を借りたいユーザー層との需給バランスにより、賃貸市場は成り立っている。つまり、これからのシェアリング経済では、所有者(オーナー層)と使用者(ユーザー層)どちらの立場になるのかで、生涯収入の構造も変わってくる。
所有よりも借りることを希望するユーザー層の増加は、逆に言えば、オーナー層にとっては、賃貸収入を稼げるチャンスが広がることを意味している。民法で定義される「所有権」とは、物を全面的に使用・収益・処分できる権利のことを指している。その中でも「収益化する権利」を上手に活用することが、新たなオーナーシップとして注目されている。
たとえば、マイカーを持つことについても、自分の使用だけで捉えるのではなく、シェアリングによる収益化も前提に考えることが、新たなオーナシップになる。
DeNAが2015年から開始している個人間カーシェアリングの「Anyca (エニカ)」は、それを具体化したもので約6,000人のマイカーオーナーが愛車の収益化を行っている。オーナーは自分の好きな料金設定で愛車を貸し出すことができ、車種や年式によっても異なるが、レンタカーよりも安い1回(24時間)あたり5,000~10,000円が料金相場となっている。
ファミリーカーを1回6,000円で貸し出したとして、月に2回の利用があれば年間で約14万円の収入になる。大きな収益というわけではないが、マイカー所有のネックとなっている車両維持費(自動車税、整備点検代、保険代など)をレンタル利用料で賄うことは、マイカーオーナーにとって愛車の賢い運用方法になりつつある。
ただし、現状のエニカは、レンタル利用者の条件として設定されている専用自動車保険の加入料金が1日あたり1,800円と高く、車両保険の免責金額も10万円に設定されているため、小さな傷を付けた場合の修理は利用者が自己負担しなくてはいけない。また、車両の受け渡しと返却は、オーナーと利用者が対面して行う必要があり、オーナーは時間を取られてしまうのが欠点で、レンタルの仕組みには改良の余地がある。
しかし、自動車業界にとっても、新たなオーナーシップの仕組みを作ることは、自動車離れを防ぐ上でも課題となっており、そこにスタートアップ企業が参入できる商機はある。今回のレポートでは、海外で考案されている新オーナーシップの仕組みを解説しながら、これからの所有権がどのように変化していくのかを考えていきたい。
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・賃借しながら所有権を獲得するマイホーム計画
・賃貸から持ち家に移行できる住宅購入システム
・外国人投資家が着目する日本の土地所有権
・新車販売ビジネスの終焉と新サブスクリプション事業
・スマートロックを活用したオーナービジネスの立ち上げ
■この記事の完全レポート
・JNEWS LETTER 2019.9.12
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