購入前試着型eコマースの普及と消費者の返品特性
ネットで購入できないモノは無い、と言ってもよいほど、ネット通販は身近な買い物手段となった。市場調査会社のeMarketerによると、世界のeコマース市場(物販)は年率20%のペースで伸びており、2018年は2兆9,280億ドルだった市場規模は、2023年には6兆5,420億ドルにまで成長することが予測されている。日本は、中国、米国、英国に次いで、世界で第4位の売上規模(1,100億ドル)がある。
しかし、eコマースで物販を手掛ける業者は、必ずしも業績が好調というわけではない。価格競争による粗利益の下落、顧客獲得コストの上昇、商品の梱包から発送までにかかる物流コストの負担増など、eコマース事業の採算を悪化させる要因は複数あるが、さらに大きな負担となりはじめているのが、返品率の上昇である。
ネット通販の欠点は、商品を手元で確かめてから購入できないことにあるため、大半のオンライン小売業者は「返品OK」のポリシーを定めているが、実際の返品率は10~20%を超すこともある。小売業者にとっては、返品ポリシーを緩くするほど、売上を伸ばせる効果があるのは事実で、返品時の送料も無料化することで、新規顧客の獲得に繋げている。その一方で、消費者は、気になる商品は複数注文して、届いた商品の中から本当に気に入ったものだけを選び、残りの商品を返品するスタイルも、アパレルや靴のeコマースでは一般化しつつある。
たとえば「自宅で試着、自由に返品」をコンセプトに、サイズ交換無料、返品送料無料による、靴を中心としたファッションアイテムのネット通販で急成長している「LOCOND(ロコンド)」の返品率は、2017年の時点で30%、2018年も27%と非常に高い。
ロコンドでは、取扱商品の85%が、ブランドメーカーからの委託商品となっているため、返品による直接的な在庫リスクを抱えるわけではないが、荷造梱包費と広告宣伝費の負担が重く、売上高は過去5年間で3.6倍に伸びているものの、利益ベースでは赤字体質が続いている。
このように、「オンラインで注文→自宅で試着→不要なら返品」を推奨するeコマースの販売手法は、海外では「Try-Before-You-Buy Programs(購入前試着プログラム)」と呼ばれ、メガネをオンラインで販売する「Warby Parker」、アパレル販売の「Stitch Fix」、アマゾンの「Prime Wardrobe」などが導入してきている。
eコマース業者が返品ポリシーを緩和して、消費者が自由に返品できる権利を認めることは、固定客を流失させない生き残り策として重要になってきている。しかし、30%近い返品率を放置したのでは経営は成り立たないため、できるだけ返品率を下げる工夫や、返品された商品を再収益化できるビジネスモデルを構築することが急務の課題になっている。今回のレポートでは、オンライン消費者の返品特性や、返品率の改善をテーマとしたビジネスの動向を解説していきたい。
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■JNEWS会員レポートの主な項目
・オンライン消費者の返品特性について
・新たな返品拠点とするクリック&コレクトの仕組み
・クリック&コレクトの全国チェーン展開モデル
・アパレル専用クリック&コレクトの開発モデル
・返品商品を再収益化するリバースロジスティクス
・返品された商品はどこへ行くのか?
・返品商品を再商品化する古着専門サイトの躍進
・中古アパレルに着目する消費者の新たな価値観
・返品商品をパレット売りするオークションの仕組み
・返品商品の清算品を活用した個人の副業モデル
・廃棄食品の仲介をするフードバンク事業のビジネスモデル
・Z世代から支持される新興ブランドと小売店の新たな役割
・D2C型で展開される新アパレルブランドの透明性と採算構造
■この記事の完全レポート
・JNEWS LETTER 2019.8.19
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