単純作業をロボット化するデジタルレイバー導入モデル
AIの普及は予想よりも早く、既に自動車、金融、医療、交通、エネルギーなどの業界で導入されている。AIの頭脳に様々なデータを与えることで、人間の能力を遙かに超える能力を発揮するが、これを思い通りに使いこなせるには、一部のデータサイエンティストや機械学習エンジニアに限られる。つまり、AIは労働市場の中で、乗り手を選ぶF1マシンのような存在に近い。
AIが中小企業で働く労働者の仕事を完全に奪うのは、もっと先のことになるが、それよりも身近に業務の自動化を実現させるテクノロジーとして注目されているのが「ロボット・プロセス・オートメーション(RPA)」と言われている。
RPAとは、一般的なオフィスのPCで使われているアプリケーションの操作を自動化(ロボット化)させるためのシステムだ。イメージとしては、Excelをマクロで自動操作することに近いが、RPAは複数のアプリ動作を組み合わせて、これまでは人間が行ってきたPCの定型作業を自動化することが可能だ。
RPAツールの中では、プログラミング不要でロボットアプリを作成できるものもあるため、特別なIT人材が居ない職場でも、業務のオートメーション化を実現させやすい。これまでデスクワークを中心としてきたホワイトカラー人材の代わりとなることから、RPA=デジタルレイバー(仮想知的労働者)とも呼ばれている。
デジタルレイバーは、24時間稼働させることも可能なため、働き方改革として社員の残業時間を軽減させるツールとしても期待されている。
《AIとは異なるRPAの特徴》
○PCソフトやクラウドアプリとして提供されるため導入コストが安い
○人がPC上で操作することは、基本的にRPAによる自動化が可能
○短期のトレーニング、学習でRPAを使いこなすことが可能
○書類作成、定型文による電話・メール対応の自動化に適している
○定型作業の人的ミスを軽減するのに役立つ
○業務別にロボットを作成できるため、作業内容の小変更にも対応しやすい
地域の自治体でも、RPAによる業務のロボット化で、職員の労働時間と人件費を軽減できる効果が示されている。茨城県つくば市では、市民窓口課で行われる住民票の転入・転出変更手続きの中で、本人確認書類を持参しなかった届出者に対して、本人の意思による届出かを確認する目的で「住民異動届受理通知」を郵送する作業が年間で1,700件ほど発生している。
従来は、この作業を行うのに職員が85時間を費やしていたが、RPAの導入により自動化することで、職員の作業時間が85%(71時間分)軽減された事例が報告されている。このように、自動化できる業務を小口で増やしていくことにより、トータルでは大きな人件費削減効果が見込める。
■地方自治体におけるRPAの活用事例(総務省)PDF
日本でRPAが注目されはじめたのは2017年頃からのことで、2018年時点の市場規模は45億円程度と、まだ小さいものの、世界のRPA市場は年率30%以上のペースで成長しており、2025年までに39億ドル(約4,300億円)にまで拡大していくことが予測されている。これは、主にRPAソフトウエアの出荷額を示した数字だが、RPAツールの導入支援やトレーニング教材の開発など、隣接分野も含めると、市場はさらに大きくなる。さらに将来的には、RPAとAIを組み合わせることで、ホワイトカラー職の半分は、ロボットにより自動化されるという予測もある。
《RPAによる業務自動化の進化レベル》
○クラス1…データ入力、書類作成などの定型作業(現段階)
○クラス2…AIとの連携により非定型作業にも対応できる
○クラス3…高度なAIによりロボットが業務の意思決定までを行う
現段階のRPAで自動化する業務には、小口の案件も多いため、この市場にはスモールビジネスとして参入することも可能で、英語圏ではフリーランスがクラウドワークでRPAシステムの開発案件に関わるケースも増えている。(この内容はJNEWS会員レポートの一部です。正式会員の登録をすることで詳細レポートにアクセスすることができます → 記事一覧 / JNEWSについて)
■JNEWS会員レポートの主な項目
・RPAの導入モデルと費用対効果の考え方
・RPAのライセンス料金体系について
・文字認識+RPAによるアナログ業務の変革
・ロボットで自動化できる不動産業務の特徴
・保険業界で導入されるチャットボットの労働生産性
・ロボットオートメーションで生まれる新職種
・RPA業界スペシャリストの平均年収について
・ロボットアウトソーシング事業の販路と業界構造
・新テクノロジー社会に対応した高度職能訓練ビジネス
・顧客との絆を構築して従業員を助けるAIアシスタント
■この記事の完全レポート
・JNEWS LETTER 2019.6.23
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