国民医療費の総額は年間40兆円の規模があるが、その費用構造をみると、医師・看護師・薬剤師などの人件費が46%を占めている。これを、医療テクノロジーによって削減していくことが新たなビジネスチャンスになっている(JNEWSについて
診療報酬の利害関係からみた医療テクノロジー開発

JNEWS会員配信日 2018/3/31

 近年の優秀な大学受験生が目指す学部の人気ナンバーワンは、理系では「医学部」である。全国には、国公立と私立大学を合わせて約80の医学部があるが、大手予備校の調査によると、医学部の偏差値は1980年頃と比べると軒並み上昇している。昔の医学部は、学費が高くなるほど偏差値は低いのが特徴で、偏差値40台でも入れる大学を見つけられたが、いまでは偏差値60以下の医学部はほとんど見当たらない。

医師の国家資格を取得すれば、仕事に一生困ることがなく、高収入が約束されて社会的な地位も高い、というのが人気の理由だ。しかし、医師の好待遇がいつまでも続く保証はない。国の政策として、2008年頃から医学部の定員枠は広げられてきたが、厚生労働省では、2033年頃からは人口の減少により、医師の数が供給過剰になるという予測を出している。国家試験に合格した新人医師は毎年 7,500人近く生まれているが、医師には決まった定年がないことも、供給過剰に陥りやすい要因である。

《医師供給数の推計(日本)》
 ※出所:将来医師の需給推計(厚生労働省)

医療現場では医師の不足を指摘する声が大きいため、当面は増員が続くとしても、国の医療財源は不足していくため、医師が高年収を維持していくことは難しくなる。国民医療費の総額は年間およそ40兆円の規模があるが、その費用構造をみると、医師・看護師・薬剤師などの人件費が46%を占めている。これを、医療テクノロジーによって削減していくことが新たな課題になっている。

《国民医療品の費用構造》

これからの医療サービスは、ロボットやハイテク機器が、医師の仕事を一部代行する形で進化していくことになるが、医師への人気に比べると、医療と電子工学を融合させた分野への注目度はまだ低い。日本では「医用生体工学」と呼ばれているが、専門の学部を設けている大学も少ないのが実情である。しかし、海外では、医療とテクノロジーの融合には、莫大な潜在市場があると見込まれて、大手の製薬会社や医療機器メーカーなどが、有望な技術を開発するベンチャー企業に対して積極的な出資を行っている。



そのため、米国の医療機器産業は1,459億ドルで、日本(281億ドル)の5倍以上の規模があり、世界をリードしている。米国内には6千社を超す医療機器メーカーがあり、その中の8割は社員数が50名未満の中小業者である。

医療機器の開発をして製品化するまでには、米食品医薬品局(FDA)の承認が必要で、人体へのリスクに応じたランク分けがされている。すべての審査をクリアーするまでには、長い時間と多額の資金がかかるが、実用化された後には大きなリターンが期待できるため、投資家からの資金が集まりやすい。有望な医療技術は、大手の製薬会社に対して売却がしやすく、医療系スタートアップのビジネスモデルが確立している。

一方、日本の医療制度は米国とは異なっていることから、その制度に適合する医療テクノロジーを開発していくことが、医療系ベンチャー企業の役割になる。では、どんな視点で医療分野に参入していくことに商機が見込めるのかを、詳しく見ていきたい。

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