高級品の価値を毀損する偽造マーケットと鑑定ビジネス
JNEWS会員配信日 2018/3/15
富裕層向けのマーケットには「ヴェブレン効果」と呼ばれる特性がある。1900年代前半の米国経済学者、ソースティン・ヴェブレンが著書の中で述べたもので、一般の商品は、価格が高くなるにつれて需要が縮小していくが、富裕層向けの高級品は、価格が高くなるほど需要も伸びる、という矛盾が生じることを指している。現代の贅沢品にも当てはまる物は多く、ジュエリー、時計、ブランドバッグ、スーパーカーなどは、高値になるほど購入希望者が増える傾向がある。
周囲から羨望の眼差しで見られたいという、自己顕示欲を満たすための消費(顕示的消費)が起きることが元々の理由だが、近年では、高級品が投資対象として注目されるようになったことも関係している。ネットを介して高級品の売買が円滑に行えるようになったことで、資産価値の上昇が期待できる高級商材は、いずれも取引相場が高騰している。
《投資対象となっている高級品》
○宝飾品、貴金属
○腕時計
○ブランドバッグ
○クラシックカー
○ワイン
○絵画、美術品
○ヴィンテージ楽器
たとえば、高級ワインの「ロマネ・コンティ」は1本あたりの正規価格は約30万円だが、当たり年と言われた 2003年産や1990年産は、200万円以上の相場で取引されている。フランス・ブルゴーニュ地域の限られた畑で収穫されるブドウを原料に生産されるロマネ・コンティは年間に 6000本程度しか出荷されないため、年数を経たヴィンテージ品の売買相場は釣り上がっていく。
しかし、有名ワインが偽造される被害も深刻になっている。高級ワインのセカンダリーマーケットでは、流通する商品の中でおよそ2割が偽造ワインとみられている。業界に激震が走ったのは、著名なワイン収集家のルディ・クルニアワンが、2002年頃から10年以上にわたり、空ボトルに偽ラベルを貼る手口で大量の偽造ワインを製造していたことが発覚、2012年に逮捕された事件だ。
彼は2016年だけでも、12,000本以上の偽ワインを製造しており、コレクター向けのオークション、ブローカーや小売業者に対して1本あたり1万ドル以上で販売していた。クルニアワンの偽造ワインは、少なくとも1億3000万ドル相当が流通したとみられている。
ワインに限らず、希少性のある高級品の人気が上昇していくと、投資家もそこに飛びつくようになり、さらに売買価格は上昇していく。しかし、偽物が出回るようになることは、美術品や純金などで歴史が実証している。
それを防ぐには、偽物を見破る技術を進化させていく必要がある。現代では高級品を売却、換金できるルートも多様になっていることから、それぞれの分野で真贋の判定をする人材や、鑑定システムの開発には需要があるが、現場への供給は追いついていない状況だ。
これからの高級品ビジネスでは、金融資産に代わる有形資産としての価値を購入者に提供していくことが重要で、その仕組みを築くためには、偽造品の流入を防ぐ対策が不可欠になる。(この内容はJNEWS会員レポートの一部です。正式会員の登録をすることで詳細レポートにアクセスすることができます → 記事一覧 / JNEWSについて)
■JNEWS会員レポートの主な項目
・急成長するワイン鑑定ビジネスの動向
・偽造ワイン鑑定データベースの仕組み
・偽造防止のテクノロジー開発市場
・人工知能が判定するブランド品鑑定システム
・ブランド品オンライン鑑定のビジネスモデル
・高騰するジャパニーズウイスキーの価値
・趣味と実益を兼ねたウイスキー投資の方法
・ウイスキー投資のリスクと問題点について
・人工知能で成長させる地ビール製造
・貴金属セカンダリーマーケットの特徴
・偽物オンライン取引を排除する鑑定ビジネス
・欧州ワイン農家が守る「信用」の築き方と
・利益をコントロールするウイスキーの製造工程
■この記事の完全レポート
・JNEWS LETTER 2018.3.15
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